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落内円は落ちている  作者: 七風


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幻影ムサシ2

 さっきまで避けるだけだったマドカが、今度は幻影のムサシへ踏み込んでいく。


 刀がぶつかり、幻影の刀が弾かれた。


「今の……」


 エレノアが目を見開く。


「さっき見た動きですよね?」


「ええ」


 リゼットもマドカから目を離さない。


「見ただけで、もう自分の動きとして使い始めているわ」


 マドカはそのまま幻影の動きを追っていく。


 足運び。


 身体の重心。


 刀を振る角度。


 ムサシの刀技を一つ見るたびに、少しずつ自分のものにしていった。


「……なるほど」


 ムサシの顔が、見る見るうちに楽しそうになっていく。


「これは面白い!」


 幻影が再び動く。


 今度はマドカも同じように動いた。


「おお!」


 ムサシが声を上げる。


「そうだ! もっと見せてみろ!」


 マドカは答えない。


 ただ、幻影の動きを見ている。


 そして次に同じ技が来た時には、もう先ほどより自然に使いこなしていた。


「……速い」


 ブリジットが呟く。


「覚えているというより、理解しているみたいですね」


 エレノアも頷く。


 グレタは黙ったまま、マドカの刀を見つめていた。


 最初は幻影を真似しているように見えた。


 だが、少し経つと違ってくる。


 ムサシの技を使いながら、マドカ自身の動きまで混ざり始めていた。


「ふはははは!」


 ムサシが笑う。


「いいぞ、マドカ! もっとだ!」


 ガイルも、すっかり言葉を失っていた。


「……師よ。あれ、本当に初めて見た技ですよね?」


「そうだ」


 ムサシは嬉しそうに答える。


「だから面白いのだ!」


 その頃には、ガブリエルも完全に見入っていた。


 先ほどまでお茶を飲みながら「マドカ長いですわぁ」と言っていたのが嘘のようだ。


 周囲の誰も、もう会話をしない。


 ただ、マドカがどこまでムサシの技を吸収するのかを見ていた。


 そして数分後。


「……もう、ほとんど同じですね」


 エレノアが呟く。


 幻影のムサシとマドカ。


 二人の動きには、ほとんど違いがなくなっていた。


 ムサシは笑ったまま、その光景を眺めている。


「これは……本当に面白い!」


 その瞬間だった。


 幻影の身体が淡く光る。


「あ」


 リゼットが気づいた。


「時間切れね」


 次の瞬間、幻影のムサシが消えた。


 マドカは刀を収める。


「もう終わり?」


「三十分の契約だから」


 リゼットが答える。


 ムサシは消えた幻影の立っていた場所を見つめていた。


 そして――。


「……ふふ」


 楽しそうに笑った。


「マドカ。ますます面白くなってきたではないか」


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