モンブラン
「普通の人間なら、そんなことをしていたら死ぬでしょうね」
リゼットがそう話していた時だった。
「ただいまー!」
屋敷の奥から声が聞こえてくる。
「あら」
リゼットが振り返る。
「帰ってきたわね」
マドカが部屋へ入ってくる。
「お姉ちゃん、試作のお菓子作ったから持ってきた!」
手にした箱をテーブルへ置く。
「まっ!今日は何ですの?」
ガブリエルが覗き込む。
「ん。モンブラン」
「ほう」
ムサシが興味深そうに箱を見る。
マドカはそこで、見慣れない老人と、その隣にいるガイルへ視線を向けた。
「……誰?」
「剣聖のムサシよ」
リゼットが答える。
「ほう」
ムサシはマドカをじっと見る。
ヒロバトの幻影で何度も見た姿。
そして、先ほどまでリゼットから聞いていた少女。
「そうか」
ムサシが笑う。
「お主がマドカか」
「うん。私がマドカ ワシは剣聖ムサシ リゼット様の過去の同僚だ。よろしく頼む。」
マドカも特に気にした様子はない。
「へぇ~ お姉ちゃんボッチじゃなかったんだね!で剣聖様?ムサシ様?」
「あなたって子は失礼ね。少しはいたわよ。あんまり興味ある人間はいなかったけど、ムサシはまともな人間よ。」
「リゼット様にそういわれるとむずがゆいですな。マドカよ。ムサシでよいよ」
「じゃあムサシ」
「うむ」
あっさり呼び捨てにされ、ムサシはむしろ嬉しそうに笑った。
「さて……」
そしてテーブルの上のモンブランを見る。
「これは?」
「モンブランっていうお菓子。試作だから、食べてみてよ」
「よろしいのか?」
「うん。感想ほしいし」
ムサシは一つ手に取ると、口へ運ぶ。
「……!」
目が見開かれる。
「うまい!」
「ほんと?」
「これはうまい!ガイルもいただけ!」
ムサシは嬉しそうにもう一口食べる。
「これは何とも美味しいですね!」
「ん?あなたはー?」
「師 ムサシの弟子のガイルです。マドカちゃんよくEVで見ているよ。」
「へへっ!よろしくー!」
「モンブラン……モンブラン……これは栗か?」
ムサシはその名を覚えるように呟いた。
「うんうん!今秋だしねー、よかったー気に入ってもらえて!」
マドカは満足そうに笑う。
そんな二人を見ながら、リゼットが小さく笑った。
「ずいぶん自然に馴染んだわね」
「美味いものを出されて、警戒する理由もありますまい」
「ふふ ゴールに来てからずっと観光でした。もちろん甘い物メインで」
ガイルが呆れたように呟いた。




