不老
「私が知る限り、過去の何百年単位で今も生きているのは、私とあなただけね」
リゼットはムサシを見ながら、少し考えるように続けた。
「普通の人間が、そこまで生きていられると思う?」
「……確かに、そうですな」
ムサシも納得したように頷く。
「リゼット様」
ガブリエルがふと口を挟んだ。
「ゲンナイさんは?」
「ああ、彼は違うわ」
リゼットはすぐに答えた。
「二千五百年前から生きているそうだけど、彼は異世界転移者よ。その時に不老の特典のようなものを得て、老いなくなったそうね」
「なるほど!そして今は、ダンジョンマスターですのね!」
ガブリエルも興味深そうに続けた。
「そのような存在もいるのですな」
ムサシも感心したように頷く。
「では、師は寿命では死なないと?」
「ええ。私も死んだことがないから、実際のところは分からないけどもね」
「ははっ! そうですか!」
ムサシは嬉しそうに笑った。
「不老……いやー、なんだか死なぬとモンスターにでもなったのかと、不安でしたぞ」
「ふふ。そうね」
リゼットも少し笑う。
「私も散々、バケモノ呼ばわりされたもの。お互い様ね」
「そうですな」
ムサシはどこか安心したように頷いた。
「さて――」
リゼットは話を切り替える。
「マドカだったわね」
「はい」
「あの子は少し難しいわよ?」
リゼットはムサシを見る。
「弟子にしてもよろしいので?」
「私はあの子の保護者だから、あの子が望むなら剣聖の弟子にするのは構わないのだけど……」
そこで、リゼットは少し困ったように笑った。
「あの子、飽きっぽいのよ」
「分かりますわ!」
ガブリエルがすぐに反応する。
「あっちこっちに興味が行く人ですもの!」
「ですが、弟子の私から見ても、マドカちゃんはとんでもない才能です!」
ガイルも真剣な顔で続けた。
「そうね」
リゼットも頷く。
「ヒロバト模擬戦を見たなら分かるでしょうけど、あの子は多分、異常なまでに体内にある魔力を放出できない特異体質なのよ」
「魔力を……放出できない?」
「ええ。だから、溜まり続ける魔力を逃がすために、身体強化を常に使っているのだと思うわ。無意識に。」
リゼットは淡々と説明する。
「普通の人間なら、そんなことをしていたら死ぬでしょうね」
「……」
ムサシは黙ってリゼットの話を聞いていた。
「それでも、あの子は平然としている」
リゼットはそう言って、少しだけ笑う。
「だからこそ、あれだけの身体能力を持っているのでしょうね」




