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落内円は落ちている  作者: 七風


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マドカVS幻影

「私と幻影でね」


マドカが自分の幻影の前に立つ。


『来た!』

『本人VS幻影!』

『これならデータ改ざんとか関係ないな』

『同じ能力同士ならどうなるんだ?』


「マドカ」


リゼットが声をかける。


「ん?」


「マドカVSマドカで、幻影が同じスピード、同じ動き、同じ技術を見せればいいのよね?」


「まぁ、そうなんじゃない?」


「それじゃあ――」


マドカが刀を抜く。


幻影のマドカも、まったく同じように刀を抜いた。


「始め!」


ビアンチの合図。


二人の姿が同時に消える。


「――速っ!」


観客から声が上がる。


次の瞬間、中央で刀と刀がぶつかった。


キィン!


一度離れる。


再び踏み込む。


同じ速度。


同じ踏み込み。


同じ角度。


そして、同じ技。


キィン、キィン、キィン!


刀が何度もぶつかる。


『何これw』

『完全に同じじゃん』

『どっちが本人だよ』

『幻影側もマドカと同じ動きしてるぞ』

『自分の動きを自分が読んでるのか?』


マドカが一歩引く。


幻影も同時に一歩引いた。


マドカが右へ動く。


幻影も右へ。


今度は左。


やはり同じ。


「……」


マドカが少し笑う。


「これ、やりにくいなぁ」


幻影は答えない。


ただ、マドカと同じ構えを取る。


「なら――」


マドカが踏み込む。


幻影も同時に踏み込む。


二人の刀が交差した瞬間、互いの刃が相手の服を掠める。


しかし、塗料は付着しない。


どちらも、ギリギリで避けている。


「おおおおお!」


『当たらねぇw』

『完全に読み合いになってる』

『本人の技術を本人が潰してるw』

『これ決着つかないんじゃね?』


さらに何度も攻防が続く。


マドカが速度を上げれば、幻影も同じ速度になる。


技を変えれば、幻影も同じ技で返す。


フェイントを入れれば、それすら読まれる。


「……なるほど」


マドカが刀を下ろす。


幻影も同時に刀を下ろした。


「これ、ずっと終わらないね」


「そのようね」


リゼットが答える。


『本人VS本人だからそりゃそうかw』

『幻影ちゃんと現在のデータ再現してるじゃん』

『むしろこれ見たらインチキ疑惑消えるだろ』


「じゃあ、他のエキドナメンバーはどうする?」


リゼットが周囲を見る。


「私は最近は銃なので、少し危険ですね」


アリシアが苦笑する。


「そうねー」


リゼットも頷く。


「私もここが火の海になって廃墟と化してもいいのなら、やってもいいわよ?」


『やっぱりリゼットは禁止でw』

『訓練場を廃墟にする気満々で草』

『火の海って何をする気だよw』


「じゃあ、エレノアは?」


マドカが聞く。


「私は自信はありますけど……」


エレノアは自分の幻影を見る。


「マドカの後だと、あまりやりたくないですね」


『正直w』

『そりゃそうだろw』

『マドカの後はハードル高すぎる』


「ブリジットは?」


「私ですか?」


ブリジットが首を傾げる。


「幻影と私で模擬戦、毎日テストしてるんですけど」


「うん」


「勝負がつかないんですよねー」


『毎日やってんの!?』

『テストプレイの裏側が初めて見えたw』

『ブリジットVSブリジットは相性最悪そう』


「じゃあ、ブリジットの幻影としてみようか」


マドカが言う。


「おお」


ブリジットが嬉しそうに笑った。


「それは面白そうですね」


『おおおおお!』

『ブリジットを崩せるのか?!』

『マドカならいける?』

『いや、あのブリジットだぞ』

『いい勝負になりそう!』


マドカがブリジットの幻影の前へ移動する。


「じゃあ、いくよ」


「どうぞ!」


開始。


マドカが一気に距離を詰める。


刀が振り下ろされる。


ガキン!


ブリジットの幻影が受け流した。


「やっぱりか」


マドカが笑う。


二撃目。


三撃目。


角度を変える。


速度を変える。


しかし、全て弾かれる。


『マドカでも崩せない!?』

『ブリジット硬すぎるw』

『パリィ性能どうなってんだよw』


マドカが一度距離を取る。


「……じゃあ、これは?」


一瞬だけ姿勢を低くする。


そこから一気に踏み込んだ。


幻影のブリジットも反応する。


ガキン!


刀が弾かれる。


「おお!」


マドカが楽しそうに笑う。


「やっぱり簡単にはいかないね」


『いい勝負!』

『マドカの攻撃全部読んでるじゃん』

『これ毎日やって勝負つかないの納得だわ』

『ブリジット強いw』


何度か攻防を繰り返したところで、マドカが刀を収めた。


「うん。今日はここまででいいや」


「ありがとうございました」


ブリジットの幻影も構えを解く。


ビアンチが興奮した声を上げる。


「いやぁ、すごい戦いでした!」


その横で、リゼットが静かに口を開いた。


「さて」


カメラの方を見る。


「そろそろ今回の経緯も説明しておきましょうか」


『そういや何でこんなこと始まったんだ?』

『ヒロバトの宣伝じゃなかったの?』

『最初からSランク査定とか言ってたよな』


「まず今回の経緯だけれど」


リゼットは淡々と話し始める。


「ギルドが、私とマドカがランクを上げないのに困っているらしいのよね」


「え?」


ビアンチが聞き返す。


「冒険者ギルド、もうあまり利用してないのよ」


『え?』

『そうなの?』


「クエスト依頼も受けないし」


「ふふ」


エレノアが笑う。


「確かに私達は、そのままダンジョンに向かって素材を持ち帰っていますね」


「そういうこと」


リゼットが頷く。


「だから冒険者としての実績が、ほとんど増えないのよ」


ブリジットが納得したように頷く。


「マドカ達は、ギルドにも行かないので実績がないわけですか」


「そういうことね」


『そういう経緯での査定かよ!』

『Sランク挑戦の理由が地味すぎるw』

『世界最強クラスが「ギルド利用してません」でランク上がらないの草』

『冒険者ギルド側からしたら頭抱えるわw』


マドカが手を上げる。


「Sランクになってもいいんだけど」


「お?」


「依頼は受けないから、名誉職のような扱いでもいいなら!」


『やっぱりマドカだわーw』

『やる気がない!』

『Sランクを名誉職扱いw』

『そこじゃないだろw』

『ランク上げるメリット聞いてこれなの草』

『ギルド「依頼を受けてください」』

『マドカ「嫌」』

『ずっとこれじゃんw』


リゼットが小さく笑う。


「まぁ、そういう事情なのよ」


ビアンチは苦笑しながらカメラを見る。


「……えーと」


そしてコメント欄を確認する。


「つまり今回の企画は―ギルドのランク問題を解決するためのヒロバト実演だそうです!さすがエキドナ 怪しいのが一つ解決しましたね!」


『宣伝ついでにSランク査定してるだけじゃんw』


『何だこのエキドナw』


訓練場に笑い声が広がった。


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