俺達 外から見てるわ
最初の一組が終わっても、Sランク冒険者達の挑戦は終わらなかった。
「次、俺達が行く!」
別のSランクパーティが訓練場へ入る。
『まだ行くのかよw』
『一組目を見た後で挑むのすげぇな』
『Sランクの意地だな』
『でも相手は幻影だからな。実戦とは違うし』
そんなコメントが流れる中、次の模擬戦が始まった。
結果は――
数分後には、五人とも塗料まみれになっていた。
「終了!」
「……」
「……次、俺達が」
さらに別のパーティが名乗りを上げる。
そしてまた敗れる。
その次も。
さらにその次も。
戦い方を変えても結果は変わらない。
正面から攻めればブリジットに止められ、隙を突こうとすればエレノアが斬り込み、距離を取ればアリシアの銃撃が飛んでくる。
そこへリゼットの広範囲魔法。
そして、その隙間を縫うようにマドカが走る。
『これもう攻略法ないの?』
『人数増やしても無理じゃん』
『エキドナ側、五人の噛み合わせが良すぎる』
『一人一人もヤバいのに連携まで完成してるの何なんだよ』
『幻影なのに普通に戦術組んでくるの怖い』
その様子を、訓練場の端から眺めている冒険者達がいた。
銀翼だった。
「……行かないのか?」
近くにいたSランク冒険者が声をかける。
銀翼の一人が、即答した。
「行かない」
「即答だな」
「だって俺達、ヒロバトのテストプレイで何回こいつらにボコボコにされたと思ってるんだよ」
「……それは」
「今日は外から見てる方が面白い」
銀翼のメンバー達は、揃って訓練場の中央を見る。
また一組、Sランクパーティが幻影へ挑んでいる。
そして――
「うわ、またマドカに抜かれた」
「リゼットの魔法、そこに撃つかぁ……」
「ブリジット相手に正面から行ったら駄目だって」
「エレノアまでいるんだから、あれじゃ無理だろ」
妙に詳しい。
「……お前ら、なんでそんなに解説できるんだ?」
「何回も戦ってるからな」
「実際に?」
「いや、俺達が戦うのは幻影だけど」
銀翼の一人が苦笑する。
「それでも毎回ボコボコにされてる」
『銀翼いたのかよw』
『なんで参加しないんだw』
『お前らSランクだろw』
『銀翼「俺達は観客です」』
『経験者のコメント助かる』
『何回もボコボコにされてるって言い方w』
「でも、あれだな」
銀翼の一人が腕を組む。
「こうやって他のSランクが挑んでるのを見ると……」
「見ると?」
「やっぱり俺達だけじゃなかったんだなって安心する」
「おい」
「いや、分かるだろ?」
「分かるけど……」
全員が訓練場を見る。
また一組、塗料まみれになった。
「……あれは無理だって」
「だな」
銀翼は誰一人として立ち上がらなかった。
『銀翼、完全に観戦勢で草』
『経験者は語る』
『テストプレイで何度もボコられてるから説得力が違うw』
そして挑戦は、まだ続いていた。




