サリー 頭を抱える
「じゃぁ、メリット出してよ」
マドカがそう言うと、サリーは一瞬だけ言葉に詰まった。
「メリット、ですか?」
「うん。私達がランクを上げることで、何が便利になるの?」
「ええと……まず、依頼の受注範囲が広がりますし、報酬も――」
「でも私達、依頼受けないよ?」
「……」
サリーが黙る。
「それに素材も売らないわね」
リゼットまで淡々と続けた。
「高ランクになったところで、私達にはあまり必要ないのでは?」
「そうなんですよね……」
アリシアまで頷いてしまう。
「じゃあ……いっそ、飛び級でS認定にした方がいいですか?」
「嫌よ」
リゼットは即答した。
「どうしてですか? 名誉なことじゃないですか?」
「そもそも、Sランクに認定されるには試験が必要なのでしょう?」
「はい。基本的には実力の確認を――」
「誰が私達の実力を正確に判断できるの?」
「……」
「例えば、銀翼」
リゼットが名前を出す。
「彼らの実力なら、私達もよく知っているわ。今のSランクとして見れば、十分に優秀なのでしょうね」
「そうですね」
アリシアも頷く。
「ただ……」
リゼットは少し考えてから続けた。
「Sランクの基準そのものが、私達には低すぎるのではないかしら」
「……基準が?」
「ええ。銀翼を馬鹿にしているわけではないわ。あくまで、ギルドが設定しているSランクという基準の話よ」
「そこは私も分かってます」
サリーは慌てて頷いた。
リゼットはさらに淡々と続ける。
「なら、簡単な話でしょう。Sランクの冒険者に、三十層のボスへ挑戦させてみなさいな」
「三十層……?」
「ええ。そこまでは私達が連れていってあげるわ」
サリーの顔が引きつる。
「そして、そこでボスを倒せたのなら――」
リゼットは微笑んだ。
「最低限、私達に傷程度はつけられるんじゃないかしら」
「煽りすぎですよ」
サリーが即座に突っ込んだ。
「事実でしょう?」
「いや、そういう問題じゃなくてですね!」
マドカも楽しそうに口を挟む。
「でも、リゼットの言いたいことは分かるよ。今のSランクの人達を連れてきて、三十層のボスを倒してみて、それでやっと私達と戦うためのスタートラインってことでしょ?」
「そんな試験制度はありません!」
「じゃあ作ればいいじゃん」
「作りません!」
サリーが頭を抱える。
その横で、アリシアが少し考えてから口を開いた。
「まぁ……リゼットさんの言う通りなんですよね」
「アリシアさんまで!?」
「いえ、他のSランクパーティーの実力を知っているわけではないので、何とも言えませんけど」
アリシアは苦笑する。
「私達も三十層を初めて攻略した時は、かなり苦労しましたから」
「そうね」
「最初から簡単だったわけじゃありません」
マドカも頷く。
「うん。最初はちゃんと大変だったよ」
「ですよね!?」
サリーが少し安心したように声を上げる。
しかし――。
「まぁ、今は作業ですけど」
「……」
「……」
サリーの表情から、安心が消えた。
「そこなんですよ!」
「?」
「今の話で、どうして最後にそれを付け足すんですか!?」
「だって本当のことだし」
マドカは不思議そうに首を傾げた。
「三十層まで行ってボス倒すだけなら、今はそんなに時間かからないよ?」
「だから煽らないでくださいって!」
サリーの声が、ギルドの受付嬢らしからぬ大きさで響いた。




