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落内円は落ちている  作者: 七風


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265/555

エキストラ募集

 情報塔に、エキドナ公式の配信が始まった。


「皆様、こんにちは。エキドナ公式広報のビアンチです」


 いつもの丁寧な挨拶。


 そして今日の告知内容は――劇のエキストラ募集だった。


「現在制作中の劇につきまして、町の皆様からエキストラを募集いたします」


『お、エキストラ募集だ』

『今度は一般人?』

『演技できる人募集?』


「今回の募集には、演技経験は必要ございません」


『え?』


「皆様には、ご本人役として出演していただきます」


『本人役!?』

『演技いらねぇってことじゃん』

『じゃあ俺そのまま出られるの?』

『どういう募集だよw』


「はい。普段の皆様のお仕事や生活を、そのまま劇の中で再現していただく形になります」


「例えば商店を経営されている方でしたら、実際のお店を使って撮影する場合もございます」


『えっ』

『俺の店も出てくる!?』

『うちの武器屋いけるか!?』

『酒場もいける!?』


「また、劇の登場人物が皆様のお店を訪れたり、実際の店主の皆様に店主役として登場していただく場面もございます」


『マジかよ!!』


『俺の店がエキドナの劇に使われる!?』

『それめちゃくちゃ宣伝になるぞ!』

『うちの店も出してくれ!』

『劇で店の名前まで出るのか!?』

『客増えるじゃん!』

『これは参加するしかねぇ!』


 配信コメントの勢いが一気に増した。


「なお、冒険者の皆様につきましては、冒険者ギルドよりエキストラ出演の依頼を正式なクエストとして発行していただきます」


『クエストなの!?』

『報酬出るのか!』

『劇に出て金もらえるの!?』


「はい。エキドナから報酬が支払われる正式なクエストです」


「冒険者以外の皆様は、役場にて受付をお願いいたします」


 ビアンチが受付表を画面に映す。


「受付表には、現在の職業をご記入ください」


「商人、職人、店員、農家、宿屋、料理人など、普段のお仕事をそのままご記入いただければ結構です」


「特別な演技指導を受けていただく必要はありません。基本的には、いつも通りのお仕事をしていただきます」


『じゃあ俺、鍛冶屋だから鍛冶してればいいの?』

『俺は酒場の店主だから酒出してればいいのか』

『演技力ゼロでも参加できる劇w』

『むしろ演技しないほうがいいんだな』


「もちろん、劇の内容や撮影の都合によって、お願いする内容が変わる場合もございます」


「その際には、撮影前にこちらからご説明いたしますのでご安心ください」


「そして、もう一つ大切なお知らせがございます」


 ビアンチが少しだけ表情を改めた。


「今回の劇は、映像結晶として皆様にお届けする予定です」


『うんうん』

『それで?』


「本編が終了した後には――トライアングルの主題歌と共に、今回の劇に参加してくださった皆様のお名前を表示いたします」


『……え?』


「劇中での役名と、実際のお名前を、それぞれ表示する予定です」


「例えば――」


 ビアンチが画面に例を表示する。


**『酒場のウェートレス ウェンディ役:ウェンディ』**


『おい』

『マジかよ!?』

『俺の名前が映像結晶に残る!?』

『それ本当に!?』

『家宝にできんじゃん!』

『子供に見せられるじゃねぇか!』

『孫の代まで残るぞこれ!』

『ちょっと待て、絶対参加するわ』

『店の宣伝どころじゃねぇw』


「はい。参加していただいた皆様の名前が、作品の一部として残ります」


『うちの親父が映像結晶に名前を残すのか……』

『なんかすげぇな』

『俺も出ればよかった』

『今から応募できる!?』

『役場どこだ!?』

『受付始まったら教えてくれ!』


 コメント欄が、先ほどまでとは別の意味で大騒ぎになっている。


「皆様の町での暮らしも、この劇の一部です」


「よろしければ、ぜひご参加ください」


 そこまで説明して、ビアンチは受付表を机に置いた。


「というわけで、町の皆様。皆様のご参加をお待ちしております」


「今回の劇では、普段この町で暮らしている皆様自身が、劇の世界を作ることになります」


 そして、ビアンチがふっと笑った。


「ちなみに――」


 少しだけ胸を張る。


「まぁ私も、結構なセリフのある役で出演しますけどね?」


 ふふん、と得意げな顔。


『お前!!』

『ずりーぞ!!』

『なんで広報がそんな役もらってんだよw』

『怪しいのはお前だろ!!』

『本人役じゃないじゃん!』

『お前が一番エキストラじゃねぇw』

『今回の劇は怪しくないです(ビアンチ談)』

『その発言が一番怪しいんだよwww』


「……な、何ですか皆さん!」


『ビアンチを監視しろ!』

『劇よりビアンチが気になる』

『絶対なんか企んでる』

『公式広報が一番信用できないw』


「今回の劇は怪しくありませんからね!?」


 ビアンチは頬を膨らませながら、もう一度だけ胸を張った。


「本当に、健全な劇です!」


『自分から言うなwww』

『はい怪しい』

『ビアンチ劇出演、ここ重要』

『本編よりこっちが気になる』


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