ラスボス作ってみた
「じゃあ今回は、ヒナタも連れて来たし――地球人だけの秘密会議でもしようか!」
マドカが楽しそうに言った。
「地球のマンガとかラノベとか、ゲームの内容とかも参考にして相談できるしね」
「ダンジョンのラスボスを作る、だったか?」
ゲンナイが確認する。
「でも劇用だろ? 実際にお前たちが苦戦する程度でいいんじゃねぇか?」
「うん、それでいいと思う!」
ヒナタが笑った。
「私もマンガは好きだったから、意見するね」
「ナナリーはゲーム配信もしてたし詳しいよね。それにMMOも大好きだったし!」
「そうそう。ゲームはかなりやってたよ」
「お前らもか!」
ゲンナイが目を丸くする。
「俺もだ!」
「ふふ、みんな知ってるんだね!」
マドカが嬉しそうに笑った。
「じゃあ、さっそく作戦会議!」
マドカが身を乗り出す。
「まずはボスの姿から?」
ナナリーが聞く。
「うん。最初は人型がいい!」
「人型か。普通に喋らせるのか?」
ゲンナイが聞く。
「そうそう。最初はちゃんと会話できるラスボス」
「設定して喋らせるくらいならできるぜ」
「おお!」
「ただし、定型文だな。好き勝手に会話させることはできねぇ」
「なるほどね」
マドカが頷く。
「じゃあ、劇の中で決まったセリフを言わせる感じか」
「それなら十分じゃない?」
ヒナタが続ける。
「ラスボスが自分で説明してくれるなら、見ている人にも分かりやすいし」
「だよね!」
マドカが頷いた。
「で、ただの悪い奴じゃなくて、今回のスタンピードの原因にするの」
「ダンジョンを暴走させて町を襲わせてた、とか?」
ナナリーが乗ってくる。
「そう! そして目的は――魔王復活!」
「ベタだけど分かりやすいな」
ゲンナイが笑う。
「魔王様を復活させるためにダンジョンを暴走させる。町を襲わせれば、大量の贄が手に入る――とか?」
「それそれ!」
マドカが嬉しそうに頷く。
「そういうのでいい!」
「なら、そのための装置も欲しいね!」
ヒナタが言った。
「ダンジョンの奥に、モンスターを大量に発生させる装置を置いておくの」
「ああ、それいい」
ナナリーも頷く。
「30層でモンスターがどんどん湧いてくる理由にもできるよね」
「それなら31層のボス戦でも使えるな」
ゲンナイが話を繋げる。
「装置からモンスターを召喚し続けるようにすりゃいい」
「じゃあ、ラスボスだけじゃなくてモンスターとも戦う!」
「うん。そっちのほうが大変そう」
ヒナタが苦笑する。
「でも、複雑なギミックは要らないよね」
「そうだな」
ゲンナイも頷く。
「三人で攻略するんだろ? モンスター処理しながら複雑なことまでやらせたら、ただ面倒なだけになる」
「だから、攻撃そのものを鬼畜にする!」
マドカが言い切った。
「例えば――」
マドカが床を指差す。
「一定間隔で、ラスボスを中心に円状の光線が出るの!」
「円状?」
「こう、輪っかみたいな光が広がってきて、それをジャンプして避ける」
「ああ、それなら見た瞬間に分かるね」
ナナリーが頷く。
「避けるタイミングも分かるし、映像としても格好いい」
「でも一回だけだと簡単すぎるから、何回も来るようにする」
「速度を変えたり?」
ヒナタが聞く。
「うん。あと変身したらもっと速くする!」
「変身するのか」
ゲンナイが笑う。
「そりゃラスボスだし!」
マドカが当然のように答える。
「人型のまま倒されるんじゃなくて、HPが減ったら変身!」
「それならできるぜ」
「できるんだ」
「HPの減り具合で調整すればいいだろ? 半分になったら第二形態、三割切ったら第三形態、とかよ」
「ダンジョンマスター、なんでもありなんですね」
「まあな」
ゲンナイが肩をすくめる。
「だてに1800年、この部屋で遊んでたわけじゃねぇからな」
「なるほどね」
マドカたちは特に驚くこともなく、再びラスボスの話へ戻っていく。
「じゃあ第一形態は人型!」
マドカが指を一本立てる。
「第二形態で魔人っぽくなって――」
「三段階くらいあってもいいんじゃない?」
ナナリーが続ける。
「最後は巨大化とか」
「いいね!」
ヒナタも乗ってくる。
「最後だけものすごく大きくすると、最終形態って感じがする」
「じゃあ、最終形態は巨大な怪物だな」
ゲンナイが設計を確認する。
「でも、でかくなると三人が殴りにくくない?」
「そこは三人が動き回れるようにすればいいじゃん」
マドカが答える。
「壁とかも使って」
「壁走り?」
「そう。私たちならできるし」
「ああ、それなら面白いね」
ナナリーが笑う。
「光線をジャンプで避けて、そのまま壁を走って反対側へ行くとか」
「実際にできるから撮れるしね」
ヒナタも頷く。
「それなら劇としてもかなり映えそう」
「じゃあ、31層は広めにしとくか」
ゲンナイが言う。
「三人が走り回れるくらいにな」
「うん!」
そこからは、四人の案が次々と出てきた。
ラスボスの攻撃。
召喚されるモンスター。
一定間隔で広がる光線。
変身するたびに強くなる攻撃。
三人がジャンプし、走り、壁を蹴り、空中で方向を変えながら戦える広い部屋。
それでも、考え方そのものは単純にする。
見れば分かる。
避ければいい。
倒せばいい。
走ればいい。
それでも難しい。
そんなラスボスを目指して、四人は好き勝手に案を出していった。
しばらくして――。
「……」
「……」
「……」
「……」
四人は、完成した設計を眺めていた。
人型の魔人。
ダンジョンを暴走させる装置。
大量のモンスターを召喚する能力。
円状に広がる光線。
何段階もの変身。
変身するほど激しくなる攻撃。
そして、最後には巨大な異形。
31層そのものも、三人が縦横無尽に動き回れるようになっている。
ゲンナイがぽつりと言った。
「……すげーの出来たな」
「でしょ?」
マドカが満足そうに笑う。
「ただ、これ……」
ゲンナイが設計を眺める。
「通常階層に置いといたら、みんな死ぬな」
「確かにね!」
マドカが即答した。
「劇用でよかった」
「うん。私たち三人が戦うから、なんとかなるくらいだもんね」
ナナリーが笑う。
「じゃあ、これで決まり!」
こうして――。
劇のためだけに作られる、31層のラスボスが決まった。




