ガブちゃん配信 劇に出演決定しましたわ
「皆様、ごきげんようですわー!」
配信画面に、ガブリエルが映る。
『ガブちゃんきた!』
『今日は何するんだ?』
『モンバト配信?』
『この前の大会以来、ガブちゃんのモンバト見たくなってる』
『大会の時めちゃくちゃ強かったもんな』
「今日はモンバトをする予定はありませんわ」
『えー』
『じゃあ何するの?』
『雑談でもいいぞ』
「そうですわね。今日は少し皆様とお話ししたいことがありますの」
『お、雑談回か』
『最近のガブちゃんの話聞きたい』
『学校どう?』
『また何か買った?』
「学校の話はいたしませんわ!」
『即答w』
『そこは聞いちゃいけないやつか』
『じゃあ最近何してたんだ?』
「最近ですか?」
ガブリエルが少し考える。
「そういえば、最近は劇の準備をしていますわね」
『劇?』
『あのEVで募集してたやつ?』
『エキドナの劇だよな?』
「そうですわ!」
ガブリエルが嬉しそうに答える。
「色欲聖女ナナリーさんと、エキドナの皆様が一緒に作っている劇ですの!」
『やっぱりあれか』
『ナナリー様とエキドナのコラボなんだな』
『ゴールで撮影するって聞いたぞ』
『Triangleも出るんだよな?』
「ええ。Triangleの皆様も出演しますわ」
『おお』
『じゃあガブちゃんも出るの?』
『まさか見学だけじゃないよな』
「もちろん出演しますわ!」
『きたw』
『何役?』
『そこ聞きたい』
『ガブちゃんが劇に出るってだけで面白そう』
「わたくしは、冒険者の役ですの」
『冒険者なんだ』
『王女様が冒険者役か』
『劇の中では普通の冒険者って設定?』
「そうですわ。劇の中では、わたくしも普通の冒険者ですのよ」
『王女要素なしw』
『じゃあ劇の世界では貴族じゃないのか』
『それはそれで新鮮だな』
「そして、わたくしは召喚術を使う冒険者ですわ!」
『召喚術!?』
『ガブちゃんにぴったりじゃん』
『あー、なるほど』
『モンバトやってるからか』
「その通りですの!」
ガブリエルが得意そうに胸を張る。
「劇の中で、わたくしはモンバトを使用してモンスターを召喚する振りをしますのよ!」
『ああ、劇の世界にモンバトがあるわけじゃないのね』
『演出としてモンバトを使う感じか』
『それならガブちゃんの経験をそのまま使えるな』
「ええ。劇の世界にモンバトというものが存在するわけではありませんわ」
「わたくしが普段モンバトをやっていますから、その動きを召喚術として見せるんですの」
『なるほどな』
『それなら設定も壊れないし、ガブちゃんらしさも出る』
『モンバト大会で実際に強かったのも起用理由になってそう』
「もちろんですわ!」
『やっぱりそこなんだw』
『ガブちゃん、嬉しそうだな』
『自分の趣味が劇の役に繋がるのは楽しそう』
「ですから、劇に出てくるモンスターもモンバト基準ですわね!」
『おお、それは楽しみだ』
『じゃあガブちゃんが普段使ってるモンスターも出るのか?』
『好きなモンスターを召喚する場面とかある?』
「それは……」
ガブリエルが少し考える。
「まだ全部は決まっていませんわ」
『ちゃんと決まってないんだ』
『そこは制作中なのね』
『じゃあ今後決めていく感じか』
「そうですわ。召喚するモンスターについては、わたくしも色々相談していますの」
『それならガブちゃんの意見もかなり入るのか』
『モンバト好きが選ぶ劇のモンスター、普通に気になる』
『エキドナ側にもモンバト詳しい人いるしな』
「そうですわね」
ガブリエルが少し笑う。
「マドカもモンバトはかなりやっていますもの」
『あー、マドカもいるのか』
『そりゃ詳しい人二人いるな』
『でもマドカはTriangle側なんだよな』
「そうですわ」
「マドカはTriangleの一員ですから、劇の中ではわたくしとは別の冒険者ですの」
『じゃあガブちゃんとTriangleが競うの?』
『ライバルみたいな感じか?』
『そこが一番気になる』
「ええ」
ガブリエルが頷く。
「劇の中では、わたくし達のパーティーとTriangleが冒険者として競い合うことになっていますの」
『それ絶対面白いやつじゃん』
『ガブちゃんVSマドカが劇で見られるのか』
『ナナリー様もいるなら、Triangle側もかなり強そうだな』
『現実でもモンバトで戦ってる二人が劇でも競うの面白い』
「まあ、わたくし達もA級冒険者ですから」
『お、A級設定なんだ』
『Triangleと同じくらいの立場なのか』
『ちゃんとライバルになるんだな』
「もちろんですわ!」
ガブリエルは自信満々に笑った。
「簡単には負けませんわよ!」
『ガブちゃんらしいw』
『劇なのに本気で勝ちに行きそう』
『マドカと会ったら普通に張り合ってそうだな』
『その辺も含めて楽しみだわ』
「それと――」
ガブリエルがコメント欄を眺める。
「今回の劇、出演するのはわたくし達だけではありませんの」
『ん?』
『まだ何かある?』
「舞台になるのはゴールですから」
「せっかくなら、ゴールで暮らしている皆様にも参加していただこうという話になっていますの」
『ゴール民も出られるの!?』
『それ初めて聞いたぞ』
『自分の町がそのまま劇になるってこと?』
「はい」
「町の住民として、自分自身の役で参加していただけるそうですわ」
『自分役なら俺でも出られる?』
『俺もゴール住民だから応募してみようかな』
『店やってる人なら店ごと出られたりするのか?』
「そのあたりも、撮影内容によって決まるでしょうね」
『なるほど』
『ゴールの町を使うなら住民がいた方が自然だよな』
『劇のために知らない人を集めるより、普段の住民がそのまま出る方が面白そう』
「そうですわね」
ガブリエルも頷く。
「それに、今回は特技を持っている方にも参加していただきたいそうですの」
『特技?』
『どういうの?』
『戦える人とか?』
「音楽や演奏、芸、魔法、職人の技など……劇の中で披露できるものなら、色々募集するそうですわ」
『それなら結構いろんな人が参加できるな』
『鍛冶屋なら鍛冶を見せればいいし、楽器ができるなら演奏できる』
『普通の住民役と特技披露の両方があるわけか』
『俺、特技ないんだけど』
『自分役なら普通に町を歩いてればいいんじゃない?』
『それも立派な住民役だろ』
『確かに。ゴールで暮らしてること自体が役になるのか』
「そういうことですわ」
ガブリエルが笑う。
「皆様、難しく考えなくてもよろしいのではありません?」
『ガブちゃんに言われると安心するな』
『王女様が普通に住民参加を勧めてるw』
『じゃあ応募してみるか』
「ただし!」
『お?』
「まだ募集は始まっていませんの」
『あっ』
『まだなのかw』
『今すぐ応募するところだった』
『ガブちゃん、そこちゃんと確認してるな』
「募集が始まる際には、エキドナから正式に告知があるそうですわ」
「ですから、参加したい方はもう少々お待ちになってくださいまし」
『了解』
『正式告知待つわ』
『ゴール民、準備しとけよ』
『何の特技で出るか考えとこう』
『俺は普通に自分の店で出たい』
『それなら店の掃除くらいしとけw』
『劇のために急に店を綺麗にする奴出そう』
ガブリエルがコメントを見て笑う。
「ふふっ。なんだか、皆様も楽しそうですわね」
『そりゃ楽しみだよ』
『ガブちゃんとTriangleが競う劇なんて見たいわ』
『ゴールの人たちも出られるなら、完成したら探すのも楽しそう』
『自分が映ってたら家族に自慢できるな』
「わたくしも楽しみですわ」
ガブリエルは少しだけ考えるようにしてから、笑顔を見せた。
「それでは、今日はこのあたりにしておきましょうか」
『もう終わりか』
『劇の話もっと聞きたかった』
『次はモンバトもやってくれ』
『劇の準備が進んだらまた教えてくれよ』
「劇については、またお話しできることが増えたらお話ししますわ」
『楽しみにしてる』
『次の情報待ってるぞ』
『募集開始されたら絶対応募する』
「では皆様、ごきげんようですわ!」
ガブリエルが手を振る。
「またお会いしましょう!」
配信終了。
それから少しして。
情報塔の画面に、新しい告知が表示された。
『先ほどガブリエルさんの配信でもお知らせしました、映像結晶による劇について――』
『現在、劇への出演者を募集しています』
『ゴールの住民として出演してくださる方』
『音楽、演奏、芸、魔法、職人技など、劇中で披露できる特技をお持ちの方』
『その他、劇の制作・撮影にご協力いただける方』
『募集の詳細については、こちらをご確認ください』
告知が終わる。
そして、EVにも同じ告知が表示された。
コメント欄が一気に動き始める。
『来た! ガブちゃんが言ってた募集だ!』
『自分役で出られるなら、ゴールに住んでる俺は応募してみるか』
『特技がなくても住民役なら参加できるんだよな? それなら結構参加しやすいぞ』
『俺は楽器ならできる。劇の中で使えるならやってみたい』
『魔法を使った芸って、どこまでやっていいんだ? 下手すると普通に目立ちそうだな』
『職人も対象なら、ゴールの店をそのまま撮影に使える人もいそう』
『というかゴールそのものが舞台なんだよな。普段の町並みが劇に出るなら、それだけでもちょっと見てみたい』
『ナナリー様と一緒に撮影できるってことだろ? 応募者すごい数になりそう』
『Triangleとガブリエルの冒険者対決もあるらしいし、完成したらかなり大きな作品になりそうだな』
『ガブちゃんが召喚術師って聞いたけど、どんなモンスター出すんだろう』
『モンバト基準って言ってたぞ。あの大会で使ってたモンスターも出てくるかもしれないな』
『それならモンバト知ってる人にはちょっとした楽しみになりそう』
『俺も出たいけど特技がない』
『さっきもいたな、お前』
『じゃあ自分役で町を歩いてこい』
『それならできる』
『できるのかよ』
『劇のためならやる』
ゴールの町では、すでに告知を見た住民たちが集まり始めていた。
「劇に出られるって?」
「自分役でいいらしいぞ」
「じゃあ、店の前で仕事してるだけでもいいのかな」
「特技がある人は披露してくれって書いてあるぞ」
「じゃあ誰か応募するのか?」
「……お前がやればいいだろ」
「なんで俺なんだよ」
町のあちこちで、そんな話が始まっていた。




