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落内円は落ちている  作者: 七風


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別世界のゴール

「うん、だいたいそんな感じ」


マドカが用意した紙を見ながら話す。


「今回の劇って、みんな今やってる仕事とか性格をそのまま使えるようにしてるんだよね」


「つまり?」


クライブが聞く。


「無理に演技しなくていいってこと」


マドカはあっさり答えた。


「性格も口調も普段のままでいいし、覚えるのはセリフだけ。役として動くけど、基本的にはいつもの自分でいいんだよ」


「それなら楽だな」


グレタが頷く。


「下手に役作りなんてするより、普段通りのほうがやりやすい」


「確かにそうですね」


アリシアも頷く。


「普段と違う人格を演じる必要がないなら、演技経験がなくても参加しやすそうです」


「そういうこと!」


マドカが笑う。


「じゃあ、まず――」


マドカがリゼットを見る。


「お姉ちゃんはギルドマスター」


「私が?」


「うん。冒険者ギルドの責任者」


「まあ、それならいいわね」


リゼットが頷く。


「普段からみんなの面倒を見ているようなものだし、ギルドマスターくらいなら――」


「あと、不老の三千年を生きる美女」


「…………」


リゼットの動きが止まった。


「不老の、三千年?」


「うん」


「三千年生きてる美女?」


「そう」


リゼットはゆっくりマドカを見る。


「……マドカ」


「なに?」


「私がそう見えるのね?」


「劇の役だよ?」


「そういう問題じゃないでしょう」


『あ』


『リゼットさん怒ってる?』


『三千年は攻めすぎでは』


「三千年生きてる美女って、要するに私を――」


「違うって!」


マドカが慌てて手を振る。


「不老の設定が面白そうだっただけ!」


「ババアと言いたいの?」


「言ってない!」


「言ってるように聞こえるけど?」


「だから劇の役だって!」


リゼットがじっとマドカを見る。


「……まあ、いいわ」


「よかった」


「劇の中だけだからね」


「もちろん」


「それに、三千年生きているならギルドマスターとしても説得力はありそうね」


リゼットは少し考える。


「ただし、私自身が三千年生きているわけではないから、そこはちゃんと劇の設定として扱いなさいよ」


「分かってるって」


マドカが次の紙を見る。


「じゃあ次」


「まだあるのね」


「いっぱいあるよ」


マドカは楽しそうに続きを話し始めた。


「カトリーヌはギルドマスターの秘書」


「なるほど」


カトリーヌが頷く。


「リゼットさんを補佐する役ですね。普段とあまり変わりません」


「うん。たぶんそのままで大丈夫」


「では、そうさせていただきます」


「マネリーはギルドの受付」


「受付ですか」


マネリーが少し考える。


「普段とは違いますが、皆さんを案内したり依頼を受けたりする役なら問題なさそうですね」


「うん。セリフ覚えてもらえれば大丈夫」


「分かりました」


マドカはさらに紙をめくる。


「グレタは鍛冶屋」


「それはそのままだな」


「そうでしょ?」


「劇だからって別の仕事をやらされるより、そのほうが楽だ」


「ヒナタはポーション屋」


「はい」


ヒナタも頷く。


「それなら私も普段とほとんど変わりませんね」


「アーノルドは屋台」


「屋台か」


アーノルドが考える。


「料理ができるなら問題ない」


「ニコラは魔道具屋」


「普通の魔道具屋~?」


ニコラが首を傾げる。


「普通じゃないと駄目なの~?」


「いや、普通でいいよ」


「そっかぁ~」


ニコラは少し考えてから笑った。


「じゃあ普通の魔道具屋さんやるよぉ~」


「でも、ちょっと怪しい感じにしてもいいよ」


「なんで私だけ怪しくするの~?」


「似合うから」


「ひどいよぉ~」


「ビアンチは記者」


「記者ですか!」


ビアンチが少し嬉しそうになる。


「それなら情報を集めるのが仕事ですから、私にも向いていますね!」


「うん。劇の中でも町の出来事を取材して回って」


「分かりました!」


ビアンチが張り切る。


「では、私が町の情報を皆さんに伝える役を――」


「ただし、ネタバレは禁止だからね」


「…………はい」


「この前みたいに先に衣装の情報を言わないでね」


「はい……」


『反省してるw』


『広報、ちゃんと学習してるな』


『劇でも情報漏洩禁止』


ビアンチが少し恥ずかしそうに資料を見る。


「今回は大丈夫です」


「じゃあ、ティニアは――」


マドカがティニアを見る。


「ダンジョンに住んでる妖精」


「妖精!」


ティニアが嬉しそうに飛び跳ねる。


「何してもいい?」


「基本的にはダンジョンでイタズラしてていいよ」


「イタズラしてやるわ!」


「でも冒険者を本気で困らせすぎないでね」


「分かった!」


ティニアが笑う。


「じゃあ、宝箱隠したり、道変えたりする!」


「それくらいなら面白そう」


「エレノアは領主」


「私が領主ですか」


エレノアが少し驚く。


「はい。町を治める立場ですね」


マネリーが補足する。


「なるほど……」


エレノアは少し考えてから笑った。


「普段とは違う立場ですが、楽しそうですね」


「ブリジットは騎士」


「承知しました」


ブリジットが頷く。


「町を守る騎士として、しっかり務めます」


「で、私たちは歌って踊れる冒険者!」


ナナリーが嬉しそうに言う。


「はい!」


アリシアも笑う。


「それなら私たちは、ほとんど普段通りですね」


「そうそう」


マドカも頷く。


「私たちは冒険して、歌って、踊る!」


「そして私がライバルですのね!」


ガブリエルが胸を張る。


「わたくしはサマナー。A級冒険者として、トライアングルと競い合う役ですわ!」


「うん」


「そして、わたくしのパーティーはモンバト部の皆さん」


「そうそう」


マドカが後ろを見る。


「みんなもA級冒険者役ね」


モンバト部の面々が顔を見合わせる。


「本当にA級冒険者役なんだ……」


「格好いいな」


「ガブリエル様と一緒なら楽しそうです!」


ガブリエルも満足そうに頷く。


「では、パーティー名については、後ほど皆さんで考えますわ!」


「うん。それはガブちゃんたちに任せる」


マドカは最後にクライブを見る。


「クライブは先輩冒険者」


「俺は普段と変わらないな」


「新人を気にかける役だから、最初はトンチンカンの三人を案内してあげて」


「任せろ」


クライブが頷く。


「……まあ、あいつらが俺の話を聞いてくれればだがな」


トーイが即座に反応した。


「聞く聞く!」


「本当か?」


「たぶん!」


「信用できないな……」


その横で、カーンとチティが笑う。


「トーイはすぐ先に行っちゃうからね」


「俺だけじゃねえぞ!」


「いや、お前だよ」


クライブがため息をつく。


「……劇でも大変そうだな」


マドカが笑った。


「でも、そういうところも普段のままでいいんだよ」


「それなら、演技する必要なんてほとんどないな」


グレタが言う。


「セリフを覚えて、その世界で普段通りに動けばいい」


「そう!」


マドカが頷く。


「だから、みんなそんなに難しく考えなくていいよ」


ナナリーも嬉しそうに笑う。


「それなら、私も安心しました」


「うん」


マドカはみんなを見回した。


「じゃあ次は、実際に撮影する順番とか、最初のシーンを決めよう」


劇の準備は、少しずつ具体的な形になっていった。


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