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落内円は落ちている  作者: 七風


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ビアンチ対談トライアングル

情報塔の画面に、ライブ告知が映し出されていた。


『Triangle 次回ライブ開催決定!』


ナナリー、マドカ、アリシアの三人が並んだ映像とともに、開催日時や会場などの情報が表示されている。


その告知配信を担当しているのは、もちろん――。


「皆様、こんにちは! エキドナ公式広報のビアンチです!」


ビアンチはいつものように、少し緊張しながらカメラに向かって話していた。


「本日はTriangleの次回ライブについて、皆様にお知らせ――」


コメントが流れる。


『きた!』

『Triangle待ってた!』

『ナナリー様ー!』

『次のライブ絶対行く』

『新曲ある?』

『新衣装は!?』


「ええ、もちろん今回も――」


ビアンチが資料を確認する。


「新しい衣装も用意されていまして――」


コメントが一気に増えた。


『新衣装!?』

『聞いてない!』

『マジ!?』

『猫!?』

『どんな衣装?』


「はい。私も実物を見ましたが、素晴らしいものでした!」


ビアンチは嬉しそうに続ける。


「特にナナリーさんのかわいらしさがとても――」


「きもっ」


画面の外から、マドカの声が飛んできた。


「え?」


ビアンチが固まる。


『wwwww』

『マドカ直球www』

『きもっいただきました』

『広報に対する評価じゃないw』

『でもちょっと分かる』

『ビアンチ完全にナナリーファンじゃん』


「そ、そんな!」


ビアンチが慌ててカメラに向き直る。


「私は広報として! 広報として言っているだけです!」


「絶対ちょっと違う」


「違いません!」


そのやり取りを見ていたナナリーが、少し困ったように笑った。


「……ビアンチさん」


「はい!」


「まだ衣装について、何も発表してませんよね?」


「…………」


ビアンチが止まる。


コメント欄も一瞬静かになった。


『あ』

『あっ』

『そういうことか』

『広報アウト』

『おいビアンチ』

『新衣装ネタバレしてるじゃん』

『当日まで楽しみにしてる人いるだろ』


「……ですが、ライブの告知ですから」


「ライブの告知と衣装のお披露目は別ですよ」


ナナリーは穏やかに言った。


「今回の衣装、まだ公開していません」


「……」


「ライブに来る方たちは、当日まで新しい衣装を楽しみにしているかもしれませんよ?」


「…………」


マドカも口を挟む。


「そうだよ」


「マドカさんまで……」


「見に来た人が『どんな衣装かな』って楽しみにしてるのに、先に言ったらつまらないでしょ」


「……はい」


ビアンチの肩が少し落ちた。


『正論』

『ナナリー正しい』

『これは広報やらかしたな』

『本人に言われると刺さる』

『知ってても言っていいとは限らないんだよな』

『ビアンチ、前にも情報の話してたのにw』


「……私」


ビアンチが資料を見つめる。


「衣装を見せていただいていたので……」


「うん」


マドカが答える。


「だから?」


「…………」


「見せてもらったことと、みんなに言っていいことは別でしょ?」


「……はい」


ビアンチは小さく頷いた。


「その通りです」


ナナリーも少し表情を緩める。


「ライブを楽しみにしている人たちのためにも、そこはお願いしますね」


「分かりました」


ビアンチは深く頭を下げた。


「申し訳ありません。衣装については、ライブ当日まで私からは一切お話ししません」


コメントが流れる。


『ちゃんと謝った』

『今回はビアンチが悪い』

『広報、勉強中』

『次から気をつけろよ!』

『ナナリー様の衣装楽しみにしてる!』


「では、改めて告知を続けます」


ビアンチは資料を閉じた。


「Triangleの次回ライブ。日時と会場はこちらです!」


今度は予定されている公開情報だけを読み上げていく。


「皆様、ぜひ会場でお楽しみください!」


配信は無事に終了した。


――そして、ライブ当日。


会場には多くの観客が集まっていた。


開演を待つ間にも、EVではライブ会場の様子を撮影した動画が次々と投稿されていく。


『人すごい!』

『今日Triangleか』

『新衣装まだ見てない!』

『ビアンチがネタバレしなかったぞ!』

『そこ褒めるところなのかw』

『今回はちゃんと我慢したらしい』


そして照明が落ちる。


歓声が上がった。


ステージに三人が現れる。


ナナリー。


マドカ。


アリシア。


そして――新しい衣装。


猫を思わせる意匠を取り入れた衣装に、三人それぞれの個性が加えられている。


会場が大きく沸いた。


『かわいい!』

『ナナリー様きたあああ!』

『猫だ!』

『これが新衣装か!』

『マドカも似合ってる!』

『アリシアもいい!』

『三人とも衣装違うのに統一感あるな』


ステージの上で三人が歌い、踊る。


ライブが進むにつれて、観客の声も大きくなっていった。


そして客席の一角では、ビアンチも真剣にステージを見つめていた。


「……素晴らしい」


隣のスタッフがちらりと見る。


「広報として?」


「もちろんです」


「……」


「広報としてです!」


『ビアンチ絶対ファンだろ』

『また見てるw』

『顔が完全にファン』

『広報の仕事とは』

『でも仕事はちゃんとしてる』


ライブは最後まで大きな盛り上がりを見せ、そのまま終了した。


――その後。


会場の一室で、ビアンチによるライブ終了後のインタビューが始まった。


カメラの前にはTriangleの三人が並んでいる。


「皆様、本日はライブお疲れさまでした!」


「ありがとうございました!」


ナナリーが笑顔で答える。


「それでは、ライブ終了後ということで、いくつか質問させていただきます」


ビアンチは資料を開く。


そして最初の質問を口にした。


「今回のライブで、一番大変だったことは何でしたか?」


「練習ですね」


アリシアが答える。


「歌とダンスを合わせるのは、やっぱり大変です」


「私は振り付けかな」


ナナリーが続ける。


「歌いながら踊るのって、慣れていても難しいんですよ」


「マドカさんは?」


「衣装」


「衣装ですか?」


「普段着と違って動き方を考えないといけないから」


『マドカらしいw』

『そこなのかw』

『ライブであれだけ踊ってたのに』

『衣装担当さん泣くぞ』


ビアンチも笑った。


「では次の質問です」


一度、ビアンチが資料を確認する。


「今回の新作衣装について。今はライブも終了していますので、質問しても大丈夫でしょうか?」


「はい」


ナナリーが頷く。


「もう皆さんに見てもらいましたから」


「ありがとうございます」


ビアンチは少しだけ胸を張った。


「学習しました!」


「そこ強調する?」


マドカが笑う。


『成長したw』

『ちゃんと確認してる』

『前回の件が効いてる』

『広報として一歩前進』


「今回の衣装は猫をモチーフにしていますが、これはナナリーさんの希望だったんですか?」


「はい。私、猫モチーフが好きなんです」


ナナリーが嬉しそうに衣装を見る。


「せっかく新しい衣装を作るなら、好きなものを入れたいなって」


「マドカさんも賛成だったんですか?」


「うん」


マドカは即答した。


「ナナリーが好きだから」


「……私が?」


ナナリーが瞬きをする。


「うん。私はナナリー推しだから」


『出たw』

『マドカのナナリー愛』

『本人の前で言うなw』

『ナナリー照れてるぞ』

『推しと同じユニット組んでるの強い』


「マドカ、前から言ってますよね」


アリシアが笑う。


「ナナリーのこと好きだって」


「うん」


「そこまで堂々と言われると、こっちが恥ずかしくなりますね」


「なんで?」


「なんでって……」


ナナリーが頬を赤くする。


ビアンチも思わず身を乗り出した。


「なるほど。つまり今回の衣装には、ナナリーさんの好みと、マドカさんの――」


「ビアンチさん」


ナナリーが止める。


「はい」


「ちょっと落ち着いてください」


「……はい」


『また始まったw』

『ナナリーに止められてる』

『厄介ファン広報』

『マドカが正しかった』


「では次の質問です!」


ビアンチは何事もなかったように台本へ戻った。


「アイドル活動を始める前と、実際に活動を始めた後で、何か変わりましたか?」


「思ったより楽しいです」


マドカが答える。


「最初はアイドルってそこまで興味なかったんですけど」


「そうだったんですか?」


「うん。でも、やってみたら普通に楽しいから」


マドカは少し考える。


「歌とか踊りとか、ライブとか。面白ければ何でもいいかなって」


「私は皆さんに応援してもらえるのが嬉しいです」


ナナリーも笑う。


「だから、これからも色々やってみたいですね」


「私は二人が楽しそうなら、それでいいかなと思っています」


アリシアが答える。


『三人とも理由違うの面白い』

『でもちゃんとTriangleなんだよな』

『マドカ自由すぎるw』

『ナナリーはやっぱりアイドル向き』

『アリシアが一番安定してる』


「では次です」


ビアンチが質問を読む。


「Triangleとして活動する際、困ることはありますか?」


「色欲に行くと……」


マドカが少し嫌そうな顔をした。


「ナナリーファンが絡んでくる」


「そこは……」


ナナリーが苦笑する。


「私のファンですから」


「『ナナリー様と一緒にいるあの子は誰だ』とか」


マドカが続ける。


「『どういう関係だ』とか」


『あーw』

『それはファンからしたら気になる』

『マドカ、普通にナナリーと仲良いからな』

『むしろ羨ましいだろ』

『ナナリー様の隣にいつもいる女』


「うざい」


「マドカ!」


ナナリーが慌てる。


「でも、まあ……」


アリシアが笑う。


「気持ちは分からなくもないですね」


「私は普通にナナリーと仲良くしてるだけなのに」


「それが羨ましいんでしょうね」


「知らないよ」


マドカはナナリーを見る。


「私はナナリー好きだから」


『また言ったwww』

『今日何回言うんだよw』

『ナナリー完全に照れてる』

『マドカのナナリー愛が爆発してる』

『ビアンチ黙れ!お前が興奮すると危ない!』


ビアンチはコメントを見て、少しだけ姿勢を正した。


「……では、次の質問です」


「急に冷静になった」


「私は広報ですから!」


『学習してるw』

『今回はちゃんと仕事しろ』

『ナナリーから離れろw』


「Triangleとして、今後やってみたいことはありますか?」


ナナリーがすぐに答えた。


「あります」


「おっ」


「クリスティーナ夫人の領地でライブをしてみたいです。前にお会いした時素敵だったので!」


「クリスティーナ夫人の領地で?」


「はい。あそこでライブをしたら、どんな感じになるのかなって」


「私も行ってみたい」


マドカが頷く。


「クリスティーナ夫人にも会いたいし アイドルしてるのもっと見せたい!」


『出た』

『マドカ、クリスティーナ夫人好きだなw』

『憧れの人だもんな』

『領地ライブ実現したら見たい』


「まだ予定ではありませんよ」


ナナリーが付け加える。


「もちろんです」


ビアンチは即答した。


「予定として発表されていないものは、私から勝手に告知しません」


マドカが満足そうに頷く。


「うん。偉い」


「褒められました!」


『広報育成配信w』

『ビアンチ成長記録』

『エキドナ、広報を教育中』


「では最後にもう一つ」


ビアンチが質問を選ぶ。


「ライブ以外で、Triangleとしてやってみたいことはありますか?」


「映像結晶を使って、劇のようなものをやってみたいです」


ナナリーが答えた。


「劇?」


「はい。三人で一つの物語を演じて、それを映像結晶に残すんです」


「それは面白そうですね」


「冒険する話とか」


アリシアが続ける。


「三人それぞれ役を決めて、ちゃんと物語を作って」


「いいね」


マドカも乗り気だった。


「普通にやってみたい」


『映像結晶の劇!?』

『それ見たい!』

『Triangleの物語作品か』

『歌だけじゃなく演技も見られる?』

『これ新しい企画になりそう』

『エキドナ映像部門きたな』

『ナナリーの演技見たい!』

『マドカが普通に冒険しそうなのが怖いw』


「では、今後の活動として検討されるということで?」


「はい」


ナナリーが頷く。


「まだ具体的に決まったわけではありませんけど、やってみたいです」


「分かりました」


ビアンチはメモを取る。


「では、最後の質問です」


三人がビアンチを見る。


「今回のライブを終えて、今後Triangleを応援してくださる皆様に伝えたいことは?」


ナナリーが少し考えてから、笑顔になった。


「これからも三人で、色々な楽しいことをやっていきたいです」


「うん」


マドカが頷く。


「私も」


アリシアも笑った。


「三人で頑張ります」


コメント欄が一気に流れる。


『Triangle最高!』

『次のライブも行く!』

『クリスティーナ領ライブ待ってる!』

『映像結晶の劇も見たい!』

『ナナリーかわいかった!』

『マドカの推し愛すごかったw』

『アリシアも頑張って!』

『ビアンチ今日はちゃんと広報だったな』

『最初やらかしたけどなw』

『新衣装ネタバレ未遂事件を忘れるな』


ビアンチが苦笑する。


「……その件は、もう十分反省しました」


「うん」


マドカが頷く。


「ならいいよ」


「ありがとうございます」


ナナリーも笑う。


「今日はちゃんと、質問する前に確認してくれましたし」


「当然です」


ビアンチは胸を張った。


「私はエキドナ公式広報ですから!」


「でも」


マドカがナナリーを見る。


「ナナリー見てるときは、ちょっときもい」


「最後にそれ言います!?」


ナナリーが吹き出す。


アリシアも笑い、コメント欄も一気に埋まった。


『wwwww』

『締めがそれかよ』

『マドカ容赦ない』

『ビアンチ頑張れ』

『でも今日ちゃんと成長したな』

『次は何をやらかすのか楽しみ』


「……私は広報です!」


ビアンチの声が響く。


その日のインタビューは、笑い声の中で終了した。


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