ビアンチ対談リゼット
情報塔の配信画面。
椅子に座ったビアンチの向かいには、いつものようにリゼットが座っている。
「本日は、リゼットさんへの質問会を行います」
『来た』
『リゼット回だ!』
『これは見たかった』
『ビアンチ、死ぬなよ』
「なぜ開始前から不穏なコメントがあるんですか?」
『相手がリゼットだから』
『マドカ回もニコラ回もかなり危なかった』
『今回は難易度が違う』
リゼットはコメント欄を眺めて、少し笑った。
「まあ、質問するだけならいいんじゃないかしら」
「では、始めます」
「どうぞ」
「まず一つ目。リゼットさんは、エキドナの代表なんですか?」
「そうなるわね」
『即答』
『代表だったのか』
『本人が一番あっさりしてる』
「二つ目。いつからエキドナに所属しているんですか?」
「マドカの保護者をしてただけよ」
「……え?」
『所属という概念がない』
『最初からエキドナじゃなかった?』
『マドカの保護者から始まったのか』
「三つ目。エキドナを作ったのは誰ですか?」
「いつのまにかできてたんだもの。わからないわ」
『創設者不明』
『町と同じじゃん』
『エキドナ、発生した組織説』
「四つ目。では、リゼットさんが代表になった理由は?」
「誰もやらないし、やってるだけよ?」
『理由が雑』
『でもエキドナっぽい』
『誰もやらないから代表になる大賢者』
「五つ目。マドカさんとの出会いについて――」
「スラムでチンピラに絡まれて、あの子が一人で殲滅してたわ」
『初対面からそれ!?』
『待って』
『それを「出会い」で済ませるなw』
「それで私にご飯よこせって」
『www』
『マドカw』
『初対面の大賢者に飯を要求』
『そこから始まったのか』
「ふふ。かわいいから連れ帰っただけね」
『リゼットの理由が一番怖い』
『かわいいから』
『強すぎる』
「六つ目。最初にマドカさんを見たときは、どう思いました?」
「なんかおかしな子ねって思ったわ。それで私の森の家で一緒に暮らし始めたわね」
『おかしな子w』
『第一印象から現在まで変わってなさそう』
『森の家で三年間生活してたんだよな』
「七つ目。マドカさんをエキドナに誘ったのはリゼットさんですか?」
「マドカが冒険者に憧れてたからついていっただけね。始まりなんてないのよ」
『また始まりがない』
『エキドナ、自然発生説が濃厚』
『本人たちに創設の自覚がない』
「八つ目。エキドナの中で、リゼットさんは具体的に何を担当していますか?」
「魔法に関わる事と最終決定だけね。交渉はエレノアよ」
『最終決定する人じゃん』
『代表だ』
『エレノアが交渉担当なの知らなかった』
『王族に交渉任せてるの強い』
「九つ目。エキドナで一番仕事をしているのは誰ですか?」
「さぁ? どうかしら。みんな分野が違うから」
リゼットは少し考える。
「でも一番はニコラだと思うわね」
『ニコラか』
『納得』
『魔道具作ってる量が違うもんな』
『本人は仕事してる自覚なさそう』
「十。逆に、一番仕事をしていないのは?」
「仕事なんて別にしなくてもいいのよ?」
「え?」
「ここがエキドナの家なのだし」
『強い』
『会社じゃなくて家だった』
『そもそも仕事をする義務がない』
『これがエキドナか』
ビアンチは少し考えてから次の質問へ進んだ。
「十一。リゼットさんは何歳ですか?」
「失礼ね。忘れたわ」
『忘れたw』
『500年以上生きてる人の回答』
『本人が忘れてるなら誰にも分からん』
「十二。王宮にはいつ頃から?」
「五百年前くらいかしら」
『スケールが違う』
『年齢は忘れたのにこっちは覚えてる』
「十三。元・王宮の大賢者というのは本当ですか?」
「信じられないなら信じなくてもいいのよ?」
「いや、そういう意味では……」
「別に自分で名乗った通り名でもないし。王国が勝手にそう決めただけよ」
『大賢者本人、肩書きに興味なし』
『国が勝手に認定』
『本人「知らん」なの草』
「十四。王宮では具体的に何をしていたんですか?」
「そうね。言われたことだけ魔法で処理してただけよ」
『言い方w』
『王宮「これお願いします」』
『リゼット「はい」』
『500年これ?』
「十五。なぜ王宮を辞めたんですか?」
「毎日のようにこき使う王がいたからよ」
『理由がすごくシンプル』
『王様……』
『今の王様に聞かせたい』
リゼットは少し笑う。
「今の王はまともね」
『フォロー入った』
『歴代王の誰かが犠牲に』
「十六。辞めるとき、王様とは揉めませんでしたか?」
「さぁ? 面倒だから城にいかなかっただけよ? 後は知らないわ」
『逃げたw』
『大賢者、退職届すら出してなさそう』
『500年働いた人の辞め方じゃない』
「十七。今でも王様とは普通に話すんですか?」
「死んでるわよ」
『あ』
『そうだった』
『質問が地雷だった』
「十八。王宮時代の知り合いは今も多いですか?」
「それも同じ質問ね」
『www』
『死んでる』
『回答が合理的』
「十九。王都に戻ろうと思ったことはありますか?」
「マドカが現れなかったら、買い物行って帰るだけね」
『マドカ基準』
『人生の予定が全部マドカで変わってる』
『マドカいなかったら森で一人暮らししてたのか』
「二十。リゼットさん自身は、自分を『魔法使い』『大賢者』『研究者』『冒険者』のどれだと思っていますか?」
「そうね」
リゼットは少し考える。
「エキドナは好きなことはなにをしてもいい。犯罪以外は」
『急にエキドナの理念が出てきた』
『犯罪以外w』
「だからどれにでもあてはまるんじゃないかしら」
『全部やる人だからな』
『選ぶ必要がない』
ビアンチは一度コメント欄を確認してから続ける。
「二十一。エキドナで一番信頼しているメンバーは?」
「決められないわ。みんな大事な仲間だもの」
『リゼットらしい』
『ここは即答しないんだな』
「二十二。一番付き合いが長いのは?」
「マドカね」
『ですよね』
『500年生きてる人の一番長い付き合いが13歳』
『人生の最後の数年を一緒に過ごす相手とかじゃなくて?』
『マドカ強い』
「二十三。一番手がかかるメンバーは?」
「それもマドカね」
『やっぱりw』
「でも最近あなたも怪しいわ」
『ビアンチwww』
『リゼットからも怪しい認定』
『本人が言ってた「エキドナは怪しい」が返ってきた』
ビアンチが少し気まずそうに咳払いする。
「二十四。一番怒らせてはいけないメンバーは?」
「さぁ?」
リゼットは首を傾げる。
「遊びでケンカしてるだけでしょう?」
『エキドナ基準』
『ケンカが遊び』
『この人たちの喧嘩怖そう』
「二十五。リゼットさんが怒ったとき、エキドナではどうなりますか?」
「怒らないけど?」
『怖い回答』
『怒らない人が一番怖い』
「興味を失ったら相手にしないだけ」
『そっちか』
『怒鳴るより怖い』
「エキドナは私は大事だと思ってるわよ?」
『つまり興味を失われるなと』
『エキドナから放置される方が怖い』
「二十六。マドカさんとは喧嘩することがありますか?」
「一緒に暮らし始めた時は料理がまずいとか散々だったわね」
『そこから!?』
『リゼット料理が下手だったのか』
「マドカは、九歳から自分で料理も洗濯も森で食料調達も全部してたのよ」
『九歳!?』
『待って、さらっと重要情報』
『九歳から全部自分で?』
『それ聞いて笑えなくなった』
『リゼットと暮らし始める前からそうだったのか』
「二十七。ニコラさんの扱いには苦労していますか?」
「好きにさせるのが一番ね」
『分かってるw』
「あの子は何かを押し付けると絶対仕事しないわ」
『ニコラ攻略法』
『取扱説明書に書いてほしい』
「二十八。グレタさんとは意見がぶつかることがありますか?」
「グレタの装備が出来たら私がエンチャントするのだけど、注文が多いだけよ」
『グレタらしい』
『装備職人と付与担当の戦い』
『注文多いんだw』
「二十九。エキドナの中で『この人に任せておけば大丈夫』と思う人は?」
「アリシアが一番しっかりしてるわ」
『これは納得』
『アリシア、ちゃんと評価されてる』
『一番しっかりしてる人がいるからエキドナが回ってる説』
「三十。逆に、『この人だけは一人にしてはいけない』と思う人は?」
「マドカね」
『即答』
『ですよね』
「気づいたら何かに巻き込まれてるのよ。ふふ」
『www』
『本人が巻き込んでる側でもある』
『でも確かに』
『ゴールもそうだった』
『モンバトもそうだった』
『ヒロバトもそうだった』
『本人はスローライフ希望』
ビアンチは一度息を吐いた。
「……ここまでで三十問です」
「結構聞いたわね」
「まだあります」
「そう」
リゼットは特に嫌そうな顔もせず、続きを促した。
「三十一。ゴールの土地を25億金貨で買ったのは本当ですか?」
「嘘ついてどうするの?」
『正論』
『そりゃそう』
『25億が普通に出てくる』
「三十二。25億金貨を払っても『余裕』だったという話は?」
「私、めったにお金使わないもの」
『それで余裕なのか』
「インベントリに今までの報酬があっただけよ?」
『インベントリw』
『報酬を何百年分も保管してたのか』
「三十三。そもそもリゼットさんは、どうしてそんなにお金を?」
「王国の相談役って話をしてるだけに見えるのでしょう?」
『見えます』
『絶対見えない』
「問題解決はほぼ私に押し付けてたのよ?」
『あっ』
『それで報酬が』
『王国「これもお願いします」』
『リゼット「分かった」』
『王国「報酬です」』
『リゼット「インベントリ」』
「三十四。その報酬を貯めていた?」
「その報酬ね」
『なるほど』
『そりゃ25億も払える』
「三十五。エキドナの資金管理は誰が?」
「エレノアよ」
『王女が会計』
『王族に管理させていいのか』
『むしろ安心感ある』
「三十六。リゼットさん個人のお金とエキドナのお金は分けていますか?」
「当たり前じゃない」
リゼットが少しだけ呆れた顔をする。
「横領って言葉知ってる?」
『www』
『ビアンチが怒られた』
『これは広報担当として重要な質問』
『リゼット、金の管理には厳しい』
「三十七。エキドナで一番稼いでいる商品は?」
「モンバトかしらね」
『やっぱり』
「ヒロバトは買う人を選ぶ。別に高いっていうなら買わなければいいだけね」
『強い』
『値下げする気はないのね』
「買ってくれとこちらは頼んでないわ」
『正論すぎる』
『エキドナ商法』
『欲しい奴が買う、それだけ』
「三十八。一番お金のかかっている事業は?」
「今のところ困ったことはないのよ?」
『回答になってないw』
『金で困ってない人の回答』
「三十九。メンバーの給料は?」
「エレノアに聞いてちょうだい」
『会計担当に丸投げ』
『適材適所』
「四十。エキドナには会計担当以外に経営を担当する人は?」
「同じ質問多くないかしら?」
『www』
『ビアンチ、質問の整理が甘い』
『ニコラ回でも言われてたぞ』
ビアンチは苦笑した。
「……次に行きます」
「四十一。『大賢者』と呼ばれることについては?」
「勝手に呼ばれてるだけね」
『またそれ』
「エキドナでは大賢者として接してくる人はいないし」
『普通に家族扱い』
『500年の肩書きが家では意味なし』
「四十二。リゼットさんより魔法に詳しい人はいますか?」
「さぁ?」
少し考えてから、
「死んでるんじゃない?」
『怖いw』
『候補者がみんな寿命で消えてる』
『500年生きてる人に聞く質問じゃない』
「四十三。今でも魔法の研究は?」
「魔法の知識をため込むのは趣味ね」
『趣味で知識が500年分』
『怖い趣味』
「四十四。昔と今で、魔法の使い方は変わりましたか?」
「そうね」
リゼットの表情が少し真面目になる。
「昔の技術は、受け継ぐ人がいないとすぐに廃るもの」
『なるほど』
「この国は情報管理が杜撰なのよ」
『情報管理?』
「だから今の最難関ダンジョン程度がクリアできない」
『えっ』
『そこまで言う?』
「強くなるための情報が伝わってないの」
『これは重要な話だ』
『技術継承の問題か』
『リゼットがダンジョン攻略情報を知ってるってこと?』
「四十五。現在のエキドナで魔法について一番詳しいのは?」
「私ね」
『即答w』
『さっきの話のあとだと説得力がすごい』
「四十六。ニコラさんやキャサリンさんの魔道具技術については?」
「もう私が最終確認するくらいかしら」
『ほぼ任せてるんだ』
「ほぼ任せているわね」
『完成品だけチェック』
『エキドナの技術力高すぎない?』
「四十七。ゲンナイさんとはどのくらい昔から?」
「ん。三か月前ね」
『!?』
『三か月!?総合エキドナ館の超便利なアイテムあの人だぞ?』
「四十八。リゼットさん自身が作った魔道具は?」
「いらないわ」
『即答』
「魔法でだいたいできるもの」
『そうだった』
「エキドナ製のを使ってるだけよ。他のは微妙」
『魔道具作ってる人たちの前で言っていいのかw』
「四十九。自分でも『かなりすごいことをした』と思う魔法は?」
「さぁ?」
『え?』
「自分でもどれがすごいのかわからないのよ」
『感覚が壊れてる』
「大抵はなんでもできるし」
『それ言える人ほとんどいない』
『大賢者ってこういうことか』
「五十。逆に、苦手な魔法は?」
「知らない魔法ね」
『分からない魔法だけ?』
『苦手=知らない』
『それ以外は大抵できる』
ビアンチは少し黙った。
そして次の質問へ移る。
「……五十一。リゼットさんは、エキドナのメンバー全員の秘密を知っていますか?」
「それ、聞いて広めるの?」
『あ』
『ビアンチ終わった』
『質問が危険地帯に入った』
「い、いえ。質問として……」
「五十二。マドカさんについて、本人が話していないことを知っていますか?」
「さぁ?」
リゼットは淡々と答える。
「少なくても、視聴者に聞かせることでもないわね」
『完全に線引きされた』
『知ってるかもしれないけど言わない』
『これが広報に必要な感覚』
「五十三。ニコラさんが知らないエキドナの情報をリゼットさんは?」
「よくわからない質問ね」
『ビアンチまた』
「何が言いたいの?」
『詰められてるw』
『リゼットに質問の意図を聞かれてる』
「五十四。エキドナでリゼットさんだけが知っている情報は?」
「どうかしら」
リゼットは少し考える。
「何が秘密になるのかわからないのよね」
『この人、秘密の基準が独特だ』
「具体的にいってくれないかしら?」
『ビアンチ、逆に質問されてるぞ』
『広報担当が取材対象に詰められてる』
「五十五。王様との契約について、まだ公開されていない内容はありますか?」
リゼットの表情が少し変わった。
「今は私はエキドナ。王家とは一切関係ないわね」
『おお』
『そこは明確』
「それに、そういう契約内容をベラベラ話してるって、人としてどうなの?」
『正論』
『ビアンチ、今後気をつけよう』
「もちろん、ゴールの土地の契約は王様も承知してるから、話しても構わないことね」
『公開していい契約とダメな契約がある』
『これはかなり大事』
「五十六。エキドナが今後作ろうとしているものは?」
「好きなものをつくればいいでしょう?」
『未来の計画は言わない』
『エキドナらしい』
「五十七。まだ公表していない研究は?」
「ニコラに聞きなさい?」
『ニコラに丸投げw』
『ニコラ「さぁ~?」になりそう』
「五十八。エキドナに加入する条件は?」
「特にないけど」
リゼットは少し考える。
「今のメンバーに嫌われないことね」
『一番難しい条件じゃん』
『ビアンチ終了』
『もう嫌われかけてる』
「五十九。リゼットさんが『この人にはエキドナに入ってほしい』と思う人物は?」
「特にいないわね。ただアーノルドは本部の料理が楽しみね。」
『アーノルドか!』
『モンスター裁いて食ってたよな!』
「六十。逆に、絶対に入れたくないタイプは?」
リゼットはビアンチを見る。
「今あなたを入れたのを、少し悩んでるわね」
『wwwww』
『出た』
『本人に直接言った』
『ビアンチ、加入初日にして危機』
『質問しすぎなんだよw』
ビアンチはしばらく黙った。
「……では、残り十問です」
『まだやるの!?』
『リゼットの精神力すごい』
『ビアンチもすごい』
「六十一。リゼットさんは、エキドナの中で一番怖い人ですか?」
「どうかしら」
「怒ることは?」
「滅多に怒らないわよ?」
『じゃあ何が怖いんだ』
『怒らないタイプなのか』
「六十二。マドカさんに怒られたことは?」
「一緒に暮らし始めた時くらいね」
『子供時代か』
『やっぱり料理関係?』
「六十三。マドカさんに逆らえないことはありますか?」
「家事をすべてやってもらったことくらいかしら」
『そこ!?』
『マドカが全部やったの!?』
『森生活時代の話だな』
「六十四。エキドナで一番苦労していることは?」
「報告なしで勝手に進めてる事ね」
『あっ』
『これは広報担当に刺さる』
『ビアンチ聞いてるか?』
ビアンチは黙ってメモを取った。
『メモしたw』
『成長してる』
「六十五。エキドナを解散しようと思ったことは?」
「する必要ある?」
『ないよね』
『そもそも解散という概念が』
「六十六。もしマドカさんがエキドナを辞めると言ったら?」
「エキドナって別にどこでも出来るのよ?」
『え?』
「このゴールにこだわってるわけではないもの」
『ゴールがエキドナじゃないのか』
「もう充分お金は稼いだわけだし」
『さらっと凄いこと言った』
『ゴールから引っ越す可能性あるの!?』
「マドカがやめるなら、一緒にどこかにみんなで行くんじゃないかしら」
『家族じゃん』
『結局全員ついていく』
「六十七。もしリゼットさんがエキドナを辞めたら?」
「さぁ? 考えてないわね」
『本人が一番考えてない』
「六十八。リゼットさんがいなくてもエキドナは成立しますか?」
「成立はすると思うけど」
『おお』
「仕事の押し付け合いですぐ解散しそうね」
『www』
『そこかよ』
「事務系が特に」
『エレノア頑張って』
『会計担当逃げて』
『アリシアにも負担が行きそう』
ビアンチは最後の二問を見た。
「六十九。リゼットさんにとって、エキドナとは何ですか?」
「家族よ」
『……』
『これは』
『シンプルだな』
『ここまで聞いて最後にこれか』
「では、最後です」
ビアンチが少しだけ間を置く。
「七十。結局、リゼットさんはエキドナの何なんですか?」
リゼットは少し考える。
そして、いつもの穏やかな顔で答えた。
「お姉ちゃんよ」
『うわ』
『これか』
『代表でも大賢者でもない』
『お姉ちゃん』
『エキドナの大賢者が自分をお姉ちゃんって』
『でも一番しっくりくる』
『マドカとの関係考えると完全にそれ』
ビアンチはしばらく何も言わなかった。
コメント欄も、少しだけ静かになる。
やがて一つのコメントが流れた。
『ビアンチ、今日かなり色々聞いたな』
それに続く。
『公開情報と秘密の線引き、ちょっと分かったんじゃない?』
『リゼットは答えてるようで、答えちゃいけないところはちゃんと止めてたな』
『本人が知ってることと、広報が話していいことは違うってことか』
『これ、ビアンチにはかなり大事な回じゃね?』
ビアンチはコメントを読み、ゆっくり頷いた。
「……確かに」
「今日、かなり勉強になりました」
「そう?」
「はい」
ビアンチは少し考えてから、リゼットを見る。
「それでも私は、エキドナが怪しいと思っています」
『最後それ言うのかよw』
『ここまで聞いて!?』
『もう恒例行事』
リゼットは楽しそうに笑った。
「そう」
『リゼット余裕すぎる』
『完全に遊ばれてる』
『ビアンチ頑張れ』
『次は誰に質問するんだ?』
ビアンチは画面の向こうのコメントを眺める。
「……次回については、まだ決めていません」
リゼットが立ち上がる。
「じゃあ、私は帰るわね」
「はい。本日はありがとうございました」
「こちらこそ」
リゼットはそのまま部屋を出ていった。
配信画面には、最後までコメントが流れ続けていた。
『おつリゼット』
『神回だった』
『70問は多いw』
『リゼット強すぎる』
『ビアンチ、質問の仕方もっと勉強しろ』
『でもちゃんと聞き方を覚えてきてるのは偉い』
『次回も期待』
配信は終了した。




