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落内円は落ちている  作者: 七風


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ビアンチ 新料理を調査

翌週。


情報塔の画面に、今回の配信タイトルが表示された。


『エキドナ徹底調査! 新作料理を試食してみます』


『エキドナ公式広報・ビアンチ』


配信が始まる。


「皆さん、こんにちは。エキドナ公式広報のビアンチです」


『もうすっかり広報だな』

『今回は何?』

『料理回?』


「今回は、エキドナで新しい料理が開発されているという情報を入手しました」


「そこで本日は、その現場を取材します」


ビアンチが店の奥へ進んでいく。


「どうやら、こちらのようですね」


扉を開ける。


中ではヒナタが料理をしていた。


「こんにちは!」


「こんにちは、ビアンチさん」


ヒナタが振り返る。


「今日は料理を作っているんですか?」


「はい。新しい商品を作ろうと思って」


「商品?」


「エキドナで出す料理です」


「なるほど」


ビアンチが興味深そうに鍋を見る。


「何を作っているんですか?」


「カレーです」


「……カレー?」


ビアンチが首を傾げる。


「聞いたことのない料理ですね」


『ビアンチまた知らないw』

『今度は料理か』

『この世界ではまだ一般的じゃないのかな』


「では、こちらを」


ヒナタが器に盛る。


香辛料の香りが広がった。


「……いい香りですね」


「どうぞ」


「いただきます」


ビアンチが一口食べる。


「…………」


しばらく黙る。


「どうですか?」


「……美味しい」


『反応がナナリーの時と同じw』

『また落ちてる』

『ビアンチ食レポしろ』


「いや、これは……」


ビアンチがもう一口食べる。


「辛さと香りがあって、それでいてご飯とよく合う……」


「よかったです」


ヒナタが嬉しそうに笑う。


「ちなみに、この料理はヒナタさんが?」


「ええ」


「どこで覚えたんですか?」


ヒナタが少しだけ考える。


「故郷の味なんです」


「故郷?」


「はい。昔の記憶を思い出したので、その味を再現しました」


「なるほど……」


ビアンチがメモを取る。


「では、こちらもどうぞ」


ヒナタが別の料理を出す。


「これは?」


「豚の角煮です」


「……また聞いたことがありません」


『また知らないw』

『ビアンチ、食文化弱い』

『広報として勉強しよう』


「いただきます」


柔らかく煮込まれた肉を口に入れる。


「……!」


ビアンチの目が開く。


「柔らかい……」


「何時間か煮込みました」


「味が染みていますね」


「はい」


「これも故郷の料理ですか?」


「ええ」


「なるほど……」


さらに料理が並ぶ。


「こちらは?」


「そばです」


「そば?」


「麺料理です」


ビアンチが一口食べる。


「……これも美味しい」


「ありがとうございます」


そして最後に。


「デザートもありますよ」


ヒナタが小さな器を置く。


「これは?」


「あんみつです」


「……あんみつ」


ビアンチが器を見る。


透明な寒天。


餡。


果物。


そして甘い蜜。


「初めて見るものばかりですね」


「私の故郷では、よく食べられていたものです」


「では、いただきます」


一口。


「…………」


また沈黙。


『また止まった』

『ビアンチw』

『完全に食レポ放棄』


「……甘い」


「はい」


「でも、いろいろな食感がありますね」


「そうなんです」


「これは……好きですね」


ヒナタが嬉しそうに笑う。


「よかったです」


ビアンチは並んだ料理を見る。


カレー。


豚の角煮。


そば。


あんみつ。


そして、もう一度ヒナタを見る。


「……ヒナタさん」


「はい?」


「これ、全部ヒナタさんが?」


「ええ」


「故郷の味を再現した?」


「はい」


ビアンチは黙り込む。


『どうした?』

『また何か始まったぞ』

『ビアンチの調査モード』


「怪しい……」


ヒナタがきょとんとする。


「え?」


ビアンチが真剣な顔で料理を見る。


「この美味しさを作れる少女……」


「これは調査せねば」


『お前またそれかw』

『何が怪しいんだよ』

『ただ美味しい料理食べただけだろ』

『ナナリーの時と同じ流れじゃん』

『ビアンチ、調査対象増えすぎ』


「ヒナタさん」


「はい?」


「この料理、他にもあるんですか?」


「まだありますよ」


「……!」


ビアンチの目が輝く。


『完全に食べたいだけ』

『広報とは』

『調査という名の試食会』


ヒナタが笑う。


「じゃあ、次は何を作りましょうか」


「ぜひお願いします!」


ビアンチが即答する。


『また即答w』


「……あ」


ビアンチが少しだけ我に返る。


「いえ。これはあくまでエキドナの新商品についての調査です」


『はいはい』

『絶対食いたいだけ』

『広報さん頑張って』


ビアンチはカメラに向き直った。


「エキドナでは、まだ私の知らない料理が作られているようです」


「次回も引き続き調査します!」


そしてヒナタの前には、次に作る料理のための材料が並び始めていた。


『次回も料理回決定?』


『ビアンチ、完全にエキドナに胃袋掴まれてる』


『ナナリーに続いてヒナタまで調査対象』


『エキドナ公式広報、大丈夫か?』


配信は、そんなコメントとともに終了した。


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