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落内円は落ちている  作者: 七風


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アンチ ゲンナイと出会う

翌週。


情報塔の画面に、今回の配信タイトルが表示されていた。


『エキドナ徹底調査! 魔道具屋で市場調査の現場に遭遇しました』


『エキドナ公式広報・ビアンチ』


「さて、今回は前回までとは少し違う場所に来ています」


ビアンチがカメラを向ける。


「総合エキドナ館については以前の配信でかなり調べましたが、ここ来てなかったので」


『お、ちゃんと覚えてた』

『前回の続きじゃないのか』

『どこ?』


「ここです」


画面に、総合エキドナ館にある小さな魔道具店が映る。


「エキドナ館が運営している魔道具屋です」


『そんな店あったのか』

『知らなかった』

『ゲンナイさんのところじゃん』

『魔道具屋あったんだ』


「私も今回初めて来ました」


店内には、様々な魔道具が並んでいる。


照明器具。


簡単な調理用魔道具。


掃除用の道具。


日用品に使える小型魔道具。


見慣れない形をしたものもいくつかある。


「……かなり色々ありますね」


ビアンチが店内を見回していると、奥からクライブが顔を出した。


「おや、配信中か?」


「あ、クライブさん」


『クライブだ』

『普通にいるw』

『エキドナの人だ』

『クライブもこういうの手伝ってるんだな』


クライブはカメラを見る。


「俺で良かったら答えるが、専門的なことはゲンナイさんに聞いてくれ」


「ゲンナイさん?」


ビアンチが聞き返す。


クライブが店の奥を指差した。


「ここの魔道具は、この人の作品だ」


そこに置かれた端末の画面が点灯する。


『あ?』


低い声とともに、画面に男の顔が映った。


「……」


ビアンチが一瞬固まる。


『誰!?』

『ゲンナイさん初登場じゃん』

『画面の中にいるぞ』

『この人もエキドナ?』


ゲンナイが画面越しにビアンチを見る。


「あ? 配信か」


「はい! エキドナ公式広報のビアンチです!」


「そうか」


ゲンナイは少しだけ画面を見つめる。


「いいぜ。俺が相手してやるよ」


「ありがとうございます!」


ビアンチが嬉しそうに頭を下げる。


「では、まず――」


「待て」


「はい?」


ゲンナイがクライブを見る。


「こいつに俺の説明、したか?」


「いや、まだだ」


クライブが答える。


「なら俺から言う」


ゲンナイは画面越しにビアンチを見る。


「俺もエキドナだ。ニコラの親戚みてぇなもんだな。ゲンナイ・ヒラガだ。」


『え?ゲンナイってニコラの親戚?!』

『エキドナだったの!?』

『知らなかった』

『ゲンナイさんってエキドナ所属なのか』


ビアンチも驚いた。


「エキドナの方だったんですか?」


「ああ」


「では、なぜ画面の中に?」


「あ?」


ゲンナイが少し眉をひそめる。


「俺は外には出られねえんだ」


「出られない?」


「だからクライブに画面越しで店を見せてもらってる」


クライブが端末を持ち上げる。


「こうして俺が持って歩けば、ゲンナイさんも店の様子を見られるからな」


『なるほど』

『そういう使い方なのか』

『ゲンナイさん本人は店に来られないのか』

『クライブがカメラ係なのね』


ビアンチが感心したように頷く。


「それで、今日は何をされているんですか?」


「市場調査だ」


ゲンナイが即答した。


「実際に何が売れるのか、何を欲しがってるのか調べてる」


「なるほど」


ビアンチが商品棚を見る。


「では、この魔道具屋は、ただ作ったものを販売しているだけではないんですね?」


「当たり前だ」


ゲンナイが答える。


「作る側が欲しいと思ったもんを作ったって、客がいらねえって言ったら終わりだ」


「確かに……」


クライブも頷く。


「だから今日は、実際に店を見ながら、どんな商品が手に取られているのか、何を聞かれるのかを確認してる」


「売れ方まで見ているんですね」


「そういうことだ」


ビアンチがメモを取る。


「では、こちらの魔道具はどういう基準で作られているんですか?」


「それは俺が説明するより、実物を見たほうが早い」


ゲンナイが言う。


「そこの照明をつけてみろ」


クライブが棚の商品を手に取る。


「これか?」


「ああ」


クライブが魔力を流す。


魔道具が淡く光った。


「普通の照明に見えますが……」


ビアンチが近づく。


「こいつは明るさを細かく調整できる」


クライブが説明する。


「店では明るく、寝室では暗く、といった使い分けができる」


「なるほど」


「それだけじゃねえ」


ゲンナイが口を挟む。


「消費する魔力も抑えてある」


「おお……」


『こういう説明もっと聞きたい』

『魔道具屋面白いな』

『ゲンナイさん普通に詳しい』

『作った本人だから当然か』


ビアンチは商品を眺めながら、ふとカメラを見る。


「今まで私は、エキドナが作った商品を『売っている』というところばかり見ていました」


「ですが、こうして話を聞いてみると、実際には――」


「研究して、作って、使ってもらって、その反応をまた次の商品に反映している」


クライブが続けた。


「そういうことだな」


「なるほど……」


ビアンチが頷く。


「エキドナという組織が、なぜこれほど多くのものを作れるのか。その一端が見えてきた気がします」


ゲンナイが鼻を鳴らす。


「ああ。だが、まだまだあるぞ」


「まだあるんですか?」


「当たり前だ」


「……」


ビアンチが少し遠い目をする。


『まだあるw』

『エキドナ広報の苦難』

『調査すればするほど増えていく』

『ビアンチ頑張れ』


クライブが笑う。


「エキドナを調べるなら、しばらく退屈はしないと思うぞ」


「……そうみたいですね」


ビアンチはため息をつきながらも、しっかりとメモを取った。


「では次回も、引き続きエキドナを調査していきたいと思います」


『次もある』

『終わらない』

『タイトル通り』

『ビアンチのエキドナ調査、長期シリーズ化しそう』


画面の端で、ゲンナイがぼそりと言った。


「あ? 次は何を調べるんだ?」


「それをこれから考えるんですよ!」


ビアンチが即座に返した。


『もう仲良くなってるじゃん』

『広報頑張れ』

『ゲンナイさんも協力的で草』


配信は、そのまま終了した。


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