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落内円は落ちている  作者: 七風


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ビアンチ エキドナメンバー調査

翌週。


情報塔の大画面に、新しい配信予定が表示されていた。


『エキドナ徹底調査! 広報担当にされた男が疑問をぶつけます』


その下には、見慣れない文字。


『エキドナ公式広報』


「……」


配信開始直後から、画面の前で男が頭を抱えていた。


「私はエキドナの広報になった覚えはありません!」


『いや、なってたぞ』

『前回リゼットに任命されてた』

『本人が納得してないだけ』

『公式広報って書いてあるじゃん』

『もう逃げられない』

『頑張れ広報』


「だから! 私はエキドナが怪しいと思っているんです!」


『それを公式広報が言うの草』

『広報なのにアンチ寄り』

『正直すぎる』

『でも調査してるのは本当だからな』


「……まあ、そこは置いておきましょう」


男は気を取り直す。


「前回、リゼットさんからエキドナについてもっと調べてみろと言われました」


「そこで今回は、改めてエキドナとは何なのかを調べていきたいと思います」


『ちゃんと調査してる』

『広報の仕事してるじゃん』

『本人だけ納得してない』

『頑張れ』


「まず、エキドナにはいくつもの活動があります」


「冒険者、研究、商品開発、情報関係……」


「ですが、調べれば調べるほど、何をしている組織なのか分からなくなってきました」


『それは分かる』

『エキドナだし』

『何でもやってるからな』


「そこで、まずはエキドナの技術関係について聞いてみましょう」


男が画面の外を見る。


「ニコラさん、お願いします」


「は~い」


ニコラが画面に入ってくる。


「エキドナって、具体的には何をしているんですか?」


「ん~?」


ニコラが少し考える。


「色々~」


「……」


『出た』

『いつもの』

『色々~』

『広報泣かせ』


「その『色々』を聞いているんです!」


「ちゃんと説明してください!」


「え~?」


ニコラは少し困ったように首を傾げる。


「じゃあ、まず研究かなぁ~」


「研究というと?」


「新しい道具を作ったり、魔道具を改良したりするよぉ~」


「なるほど」


男が頷きながらメモを取る。


「それから?」


「商品開発もするねぇ」


「商品ですか?」


「武器とか服とか、生活用品とか。食べ物もあるよぉ~」


『総合エキドナ館じゃん』

『確かに何でも売ってる』

『研究所なのか店なのか分からない』


「かなり幅広いですね……」


「そうだねぇ~」


「他には?」


「冒険者活動もしてるし~、ダンジョン関係の研究もしてるし~」


「はい」


「情報塔とかEV関係もやってるねぇ~」


「……」


男がペンを止める。


「本当に何でもやってません?」


「そうだねぇ~」


『認めた』

『ニコラ本人も分かってない説』

『でも説明はしてくれた』


「では、エキドナとして一番大きな目的は何なんでしょう?」


「う~ん……」


ニコラが少し考える。


「みんながやりたいことをやってる感じかなぁ~」


「組織として一つの目的があるわけではない?」


「そういう感じだねぇ」


「なるほど……」


男はしばらくメモを眺める。


「つまり、エキドナは一つの事業を行う会社というより、それぞれの得意分野を持った人たちが集まって活動している組織、と」


「そんな感じ~」


「ありがとうございます!」


『今回はちゃんと広報してる』

『ニコラも頑張った』

『色々~だけじゃなかった』


「では、次に――」


そのとき。


「私が話したほうが早いかしら?」


画面にリゼットが現れた。


「リゼットさん!」


『来た』

『本命』

『説明できる人きた』


「エキドナについて、少し整理しておきましょうか」


「お願いします!」


男が身を乗り出す。


「まず、エキドナとは何なのか」


リゼットは少し考えてから答えた。


「家族ね」


「家族……」


「ええ」


「ですが、外部から見ると研究組織にも見えます」


「そうね」


「会社のような活動もしています」


「ええ」


「冒険者の集まりでもありますよね?」


「そうね」


「商品も作っています」


「はい」


「情報関係の活動もしています」


「ええ」


「……」


男が少し黙る。


「結局、何なんですか?」


「だから、エキドナよ」


『それ答えになってないw』

『リゼット強い』

『広報また困ってる』

『でも間違ってない』


「いや、分かります。分かりますけど!」


男が頭を抱える。


「私が聞きたいのは、外部から見たときにどう説明すればいいのかという話です!」


「そうねぇ」


リゼットは少し考える。


「では、こうしましょう」


「はい」


「あなたが自分で調べればいいわ」


「……はい?」


「総合エキドナ館にも行ったでしょう?」


「はい」


「なら、今度はそこで働いている人たちに話を聞けばいい」


「なるほど……」


「研究をしている人にも聞けばいいし、商品を作っている人にも聞けばいいわ」


「はい」


「冒険者にも聞けばいい」


「分かりました」


「ただし――」


リゼットが笑う。


「エキドナ本邸は駄目よ」


「……やっぱりそこは駄目ですか」


「ええ。あそこは私たちの生活する場所だから」


「なるほど。では、取材可能な範囲で徹底的に調べます」


「それでいいわ」


「ありがとうございます!」


男は勢いよく頭を下げる。


「では次回から、実際にエキドナの各施設を回って、そこで何が行われているのかを調査していきます!」


『始まった』

『エキドナ調査編』

『広報なのに自分で取材するの草』

『でも一番詳しくなりそう』


ニコラが横から口を挟む。


「広報のお仕事、よろしくねぇ~」


「だから私は広報になることを了承した覚えが――」


「取材依頼も、あなたのところに送るようにしておいたから」


リゼットがさらりと言った。


「……はい?」


「今後、エキドナについて問い合わせがあった場合も、まずあなたのところに行くようにしてあるわ」


「ちょっと待ってください」


「ええ」


「私、まだエキドナが怪しいと思っているんですが」


「知っているわ」


「それでいいんですか?」


「ええ。あなた、ちゃんと調べるでしょう?」


「……それは、まあ」


「なら問題ないわ」


「そういう問題なんですか!?」


『広報確定』

『逃げ道消滅』

『疑ってる人間を広報にするエキドナ』

『逆に信用できるかもしれん』

『本人だけ納得してない』


男は深く息を吐いた。


「……分かりました」


「こうなったら、徹底的に調べます」


「エキドナが何なのか、私自身が納得するまで調査します!」


『頑張れ!』

『応援するぞ広報』

『エキドナの謎を暴け』

『なお本人は公式広報』


「ところで」


リゼットがふと思い出したように尋ねる。


「あなた、名前は何なの?」


「……」


男が固まった。


「え?」


「名前よ。今まで聞いていなかったでしょう?」


「ああ……」


男は少し照れくさそうに答える。


「ビアンチです」


『ビアンチ!?』


『アンチかよ!』


『名前からしてアンチじゃんwww』


『エキドナ公式広報・ビアンチ』


『よりによってビアンチ』


『そりゃエキドナ怪しいって言うわ』


「違います!」


ビアンチが即座に叫ぶ。


「私の名前がビアンチなだけです!」


『説得力ゼロ』

『名前が悪い』

『公式広報ビアンチ』

『もう完璧じゃん』


「名前で判断しないでください!」


ニコラが横で笑っている。


「ビアンチくん、これからよろしくねぇ~」


「よろしくされる立場になった覚えがないんですが!」


リゼットも楽しそうに笑った。


「頑張ってね、ビアンチ」


「はい……」


ビアンチは諦めたようにため息をつく。


「……次回も、エキドナを調査します」


『次回もあるの確定』

『終わらないw』

『タイトル通り』

『次回――総合エキドナ館に潜入!』


「……終わらない!」


配信終了。


そして翌週。


情報塔には、新しい告知が表示されていた。


『次回――総合エキドナ館に潜入!』


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