アンチVSリゼットパート2
「では、今回はこのあたりで――」
配信者がカメラに向かって頭を下げる。
「これまで続けてきたゴール調査も、今回で一区切りにしたいと思います」
『お疲れ様!』
『マドカ回よかった』
『最後に本人に聞けてよかったな』
『ゴールのことかなり詳しくなったな』
「ありがとうございます」
配信者が笑う。
「自分でも、よくここまで調べたと思います」
そのときだった。
画面の端から、リゼットが入ってくる。
「あなた」
「え?」
『!?』
『リゼット!?』
『本人乱入w』
『今日のゲストじゃないよな?』
リゼットはカメラを見て、少しだけ微笑んだ。
「ゴールのこと、相当調べてたわね」
「ええ。まあ、長いこと調べてましたから」
「配信もよくまとまっていて、いい配信だったわ」
「ありがとうございます!」
配信者が嬉しそうに頭を下げる。
コメント欄も流れる。
『リゼットから直接評価されたw』
『これは嬉しいだろ』
『ゴール調査してきた甲斐あったな』
ところが。
リゼットが少し首を傾げる。
「でも――」
「はい?」
「あなた、まだエキドナを疑ってるでしょう?」
「…………」
配信者の顔が固まる。
『www』
『そこ拾うのかよw』
『確かにずっと疑ってた』
『エキドナ研究家』
配信者は少し姿勢を正した。
「……はい」
「正直ね」
「はい!」
「私はエキドナが怪しいと思っています!」
『出たwww』
『本人の前で言ったw』
『リゼットに宣言するの強すぎる』
『この人ブレないな』
リゼットは怒るでもなく、ただ笑っていた。
「そう」
「はい!」
「じゃあ、これからも調べればいいじゃない」
「え?」
「ゴールだけじゃなくて」
リゼットがカメラを見る。
「エキドナそのものを」
『おお?』
『新シリーズ?』
『エキドナ調査編か?』
配信者も少し目を輝かせた。
「……いいんですか?」
「ええ」
「本当に?」
「もちろん」
「では、今後もエキドナについて――」
「それと」
「はい?」
リゼットがさらりと言った。
「あなた、エキドナの広報をやらない?」
「…………」
配信者が固まる。
『???』
『え?』
『広報?』
『どういうことw』
「……私が?」
「そう」
「いや、私はエキドナが怪しいと思っているんですが」
「知ってるわ」
『wwwww』
『そこ知ってるのかよ』
『怪しいと思ってる人を広報にするなw』
「それでも、あなたはエキドナについてかなり調べているでしょう?」
「まあ……」
「ゴールについても、住民への取材や施設の調査までしてきた」
「はい」
「だったら、外から見たエキドナを説明する役として、あなたが一番向いているんじゃない?」
「……なるほど」
配信者が考え込む。
『納得するなw』
『丸め込まれてるぞ』
『でも確かに適任かもしれん』
「それに」
リゼットが続ける。
「あなたなら、エキドナに都合の悪い質問もするでしょう?」
「します」
「でしょうね」
「エキドナが怪しいと思っていますから!」
『www』
『そこは譲らない』
リゼットは満足そうに頷いた。
「それなら問題ないわ」
「問題ないんですか!?」
「ええ」
「私はまだエキドナを信用していませんよ!?」
「そのままでいいわ」
『強いw』
『リゼット完全に気に入ってるだろ』
『これもう採用面接だろ』
「では――」
リゼットがカメラに向かって微笑む。
「今後、エキドナについて質問や取材がある場合は、この人を通してください」
「待ってください!?」
『広報決定w』
『本人の意思は!?』
『エキドナ公式広報爆誕』
『しかもアンチ寄りw』
「ちょっと待ってください!」
配信者が慌てる。
「私はまだ何も了承して――」
「じゃあ、次回から広報として配信してね」
「話が早すぎません!?」
「大丈夫よ」
「何がですか!?」
リゼットは笑顔のまま答えた。
「あなたがエキドナを怪しいと思っていることも、ちゃんと紹介しておくから」
「それは広報としてどうなんですか!?」
『wwwww』
『この人好きだわ』
『エキドナ公式なのにエキドナを疑ってるw』
『次回から絶対見る』
『ゴール調査終わっても続くじゃん』
配信者は頭を抱えた。
「……どうしてこうなった」
マドカが横から顔を出す。
「面白そうじゃん」
「マドカさんまで!?」
『www』
『本人も乗り気』
『エキドナ広報、初回からカオス』
リゼットが満足そうに頷く。
「決まりね」
「決まってないです!」
『決まったな』
『次回、エキドナ広報配信』
『楽しみ』
配信者はカメラを見つめる。
「……えー」
一度、大きく息を吐いた。
「次回から、エキドナについてさらに調査します」
少し間を置いて。
「……私はエキドナが怪しいと思っています!」
『知ってるwww』
『それを毎回言ってくれ』
『新シリーズ始まったw』
こうして、ゴール調査配信は終了した。
――はずだった。
しかし翌週。
情報塔に、新しい配信タイトルが表示される。
**『エキドナ徹底調査! 広報担当にされた男が疑問をぶつけます』**
そして、そのタイトルの下には。
『エキドナ公式広報』
という文字が、しっかりと表示されていた。




