アンチVSリゼット
「……エキドナの皆さんって」
配信者は、グレタが去っていった廊下を見ながら呟いた。
「自分たちが町を作った、という意識があまりないんですね」
「ありませんもの」
リゼットは即答した。
「私たちは、必要なものを作っていただけですわ」
「必要なもの……」
「ええ」
リゼットは指を折るように説明する。
「住む場所が必要なら家を作る。道が必要なら道を作る。水が必要なら井戸や水路を作る。仕事に必要なら技術を教える」
「それが積み重なって、町になった?」
「そういうことですわね」
『なるほど』
『ゴールが計画都市じゃない理由が分かってきた』
『必要だから作ってたら町になったのか』
配信者は少し考える。
「でも、それなら……」
「何かしら?」
「エキドナの活動そのものが、ゴールの発展につながっているように見えます」
「まあ、そうでしょうね」
リゼットは特に否定しなかった。
「というより」
少し考えてから、付け加える。
「マドカがやりたいと言ったことが、そのままエキドナの活動内容になっていることが多いんですのよ」
『おお?』
『どういうこと?』
『マドカが原因?』
「料理をやりたいと言えば料理をする」
リゼットは淡々と続ける。
「服を作りたいと言えば服を作る。面白いゲームを作りたいと言えばニコラが作る。便利なものが欲しいと言えば、誰かが研究を始める」
『www』
『ヒロバトもそれ?』
『全部マドカ発信なのか?』
「もちろん、私たち自身が勝手にやっていることもありますわよ」
「ですよね」
「ただ、エキドナが今やっていることを見れば、マドカが『こういうのが欲しい』と言ったものがかなり混ざっています」
配信者がカメラを見る。
「……それなら」
少し間を置いてから言った。
「マドカさん本人に聞いたほうが早いのでは?」
「ええ」
リゼットはあっさり頷いた。
「最初からそうすればよかったんですのに」
『wwww』
『それな』
『10話くらい調べてようやく気づいた』
『ゴール研究家、遠回りしすぎ』
「……」
配信者はコメント欄を見て苦笑する。
「では、次回はマドカさんに話を聞いてみたいと思います」
「そうしてくださいな」
リゼットは廊下の先へ歩き出す。
「ゴールのことを聞くなら、あの子に聞くのが一番早いでしょうから」
『次回マドカ!』
『ついに本人』
『何を聞くんだ』
『田舎に住みたかっただけ説』
『ゴール誕生の元凶説』
「元凶って……」
配信者がコメントを読み上げる。
その横でリゼットが小さく笑った。
「まあ……間違ってはいませんわね」
『wwwww』
配信は、そのまま次回予告へと切り替わった。




