↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落内円は落ちている  作者: 七風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
235/531

アンチVS城のメイド

「……では」


配信者は、猫カフェの入口で足を止めた。


「ここも見ておきましょう」


『絶対ここ入りたかっただけだろ』


『さっきから猫しか見てないぞ』


『ゴール研究家、猫カフェへ』


「違います。総合エキドナ館の施設調査です」


そう言いながら、配信者は店内へ入った。


扉が開く。


「いらっしゃいませ」


落ち着いた声が迎える。


配信者は少しだけ目を見開いた。


「……?」


『どうした?』


『店員さん?』


『なんか雰囲気違うな』


店員は整った制服を着ていた。


猫が足元を歩き、その横を別の店員が静かに通り過ぎる。


「こちらは猫カフェです」


「ええ。それは分かっています」


「ご利用でしたら、ご案内いたします」


「……」


配信者が店員をじっと見る。


「失礼ですが、こちらで働いて長いんですか?」


「いえ。こちらに配属されてからは、まだそれほど」


『配属?』


『普通のバイトじゃないの?』


『言われてみれば』


配信者もそこに引っかかった。


「配属……ですか?」


「はい」


店員は微笑んだ。


「私はもともと王城でメイドをしておりました」


『!?』


『城のメイド!?』


『なんで猫カフェに!?』


「王城のメイド?」


配信者も思わず聞き返す。


「はい」


「なぜ、ここで働いているんです?」


店員は少しだけ猫を見る。


「エレノア様にお声をかけていただきまして」


「エレノア様に?」


「はい。こちらの猫カフェを一度利用した際に、私が大変気に入りまして」


『まさかの』


『メイドさんが猫カフェにハマったのか』


『エレノア何してんだw』


「それで、そのままこちらで働くことに?」


「そういうことになります」


店員は猫を抱き上げた。


「今では、この仕事がとても楽しいです」


『いい話だ』


『猫好きだったんだな』


『城のメイド→猫カフェ店員』


『人生何があるか分からんな』


配信者は店内を見回した。


「しかし、総合エキドナ館の店員が、皆さんこういう方というわけではないですよね?」


「はい」


「ほとんどの店舗は普通の方が働いております」


『普通の人』


『つまりバイト?』


『ほとんどバイトだぞ』


コメントを見て、配信者が聞き返す。


「バイトが多いんですか?」


「そう聞いております」


「エキドナのメンバーが直接店を運営しているわけではない?」


「すべてをエキドナの方が担当しているわけではありません」


『なるほど』


『総合エキドナ館って名前だから勘違いしやすいな』


『ゴールの人も働いてるんだ』


「なるほど……」


配信者が考える。


「つまり、エキドナが商品や施設を作り、それをゴールの人たちが仕事として支えている、と」


『そういうこと』


『だいぶ理解してきたな』


『ゴール研究家』


「その呼び方はやめてください」


猫が一匹、配信者の足元に近づいてきた。


「……」


配信者がしゃがむ。


猫が靴に鼻を近づける。


「……かわいいですね」


『お?』


『陥落した』


『ゴール研究家、猫に敗北』


「少しだけ触っても?」


「もちろんです」


配信者が恐る恐る手を伸ばす。


猫が手の匂いを嗅ぐ。


そして、そのまま頭を擦りつけた。


「……」


『www』


『完全に気に入られてる』


『もう帰れないぞ』


「……調査を続けます」


『声が弱いw』


『猫カフェ滞在時間、延長』


配信者は猫を撫でながら話を続ける。


「ところで、この猫たちはどこから?」


「エキドナの方々が保護した子や、こちらで引き取った子たちです」


「なるほど」


『猫カフェにもエキドナらしさあるな』


『ただの商売じゃないんだな』


「そういう意味でも、ここはゴールらしい施設なのかもしれませんね」


『急に研究家』


『また始まった』


「……今のは普通の感想です」


店員が笑う。


「よく言われます」


「何をです?」


「ここで働いているうちに、ゴールのことが好きになった、と」


配信者は少し黙った。


店内には猫が歩いている。


客が笑っている。


店員が猫の様子を見ながら接客している。


そして、そこには王城のメイドだった女性までいる。


「……なるほど」


『何がなるほど?』


「総合エキドナ館というのは、エキドナだけの場所ではないんですね」


『おお』


『そこに気づいたか』


「エキドナの商品が並んでいるけれど、働いているのはゴールの人たちでもある」


「そういうことだと思います」


店員が頷いた。


配信者は少し考えてから、カメラに向き直る。


「……ゴールについて調べ始めてから、分からないことが増えている気がします」


『今さらw』


『調べるほど増えるやつ』


『でも面白い』


『次は何を調べる?』


「それは……」


配信者は猫を見る。


猫は何も気にせず丸くなっている。


「……まず、この店をもう少し調査してから考えます」


『調査=猫と遊ぶ』


『もう研究家でいいよ』


『猫カフェ研究家』


「違います!」


店内に笑い声が響く。


その日、配信者の調査は予定より少し長引いた。


原因は――猫だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。