アンチVS冒険者
「……で、ここまで調べたわけですが」
配信者は、ゴールの町を歩きながらカメラに向かって話していた。
「結局のところ、気になることが一つあります」
『何?』
『また始まった』
『どうせエキドナ批判だろ』
『今回は何を調べるんだ?』
「この町の冒険者、実際どれくらい強いんでしょうね?」
コメント欄が一気に流れる。
『あー』
『確かに』
『ゴールって周辺の魔物強いんだろ?』
『でもエキドナの人たちは素材扱いしてるんだよな』
『比較対象がおかしい』
「そうなんですよ」
配信者が頷く。
「町の話を聞いていると、どうにも感覚がおかしいんです」
『お前が言うな』
『ゴール調べてるうちに感覚狂ってきてて草』
『でも気になる』
「そこで今日は――」
配信者が振り返る。
「ゴールの冒険者と、実際に一度戦ってみようと思います」
『おお!』
『バトルきた』
『誰と?』
『ギルドの人?』
『前に出てきた受付の人?』
「さすがに受付の方とは戦いませんよ」
『ちょっと見たかった』
『受付VS配信者』
『書類で攻撃しそう』
「そういうのではなくてですね」
配信者が苦笑する。
「ちゃんと冒険者の方にお願いしてあります」
その直後。
「呼んだか?」
背後から声がした。
配信者が振り返る。
そこには、冒険者らしい装備を身につけた男性が立っていた。
「今回、相手をしていただく方です」
『おお』
『普通に冒険者だ』
『強そう』
『ゴールの人?』
「そう。俺はこの町で冒険者をやってる」
男は軽く肩を回した。
「別にエキドナの人間じゃない」
『ここ重要』
『ちゃんと言った』
『ゴールの冒険者=エキドナ所属じゃないからな』
「そこは俺も確認しました」
配信者が頷く。
「では、早速――」
「その前に」
男が手を上げる。
「お前、本当に戦えるのか?」
「…………」
コメント欄が爆発した。
『草』
『言われてるぞ』
『配信者なのに』
『調査系だから仕方ない』
「私はですね、こう見えても冒険者経験が――」
「じゃあいいな」
男が笑った。
「やろうぜ」
「話が早いですね」
二人は町の外へ向かった。
ゴールの外れ。
魔物の姿も見える場所だが、今日は安全のため、少し開けた場所を選んでいる。
「ルールは?」
「魔法も武器もあり。ただし殺しは禁止」
「分かりました」
配信者が装備を確認する。
その手には――。
『あれ?』
『その武器』
『エキドナ製じゃね?』
『お前www』
「……」
配信者が黙る。
「これはですね」
『言い訳タイム』
『愛用品出てきたぞ』
『アンチじゃなかったのか』
「エキドナ製品だからといって、私が使ってはいけない理由はありませんからね!」
『開き直った』
『正論』
『でもめちゃくちゃ使ってるじゃん』
男も武器を見る。
「それ、結構いいやつだろ」
「……詳しいですね」
「この町で冒険者やってるからな」
「なるほど」
配信者が構える。
「では――」
「来い」
男が一歩踏み込んだ。
次の瞬間。
金属音が響いた。
配信者の攻撃を男が受け流し、そのまま横へ回り込む。
「速い!」
「お前も悪くないな」
二人の距離が一気に縮まる。
剣。
魔法。
回避。
再び剣。
配信者も必死に食らいつく。
『普通に強い』
『配信者も強いじゃん』
『ゴールの冒険者これで普通なの?』
『さっきから互角じゃね?』
『王都の冒険者と比べてどうなんだ?』
数分後。
二人は同時に距離を取った。
「……なるほど」
男が息を整える。
「お前、思ったよりやるな」
「そちらこそ」
配信者も肩で息をする。
「ゴールの冒険者が強いという話、少し分かってきました」
『まだ続くぞ』
『ここからじゃない?』
『魔物いるぞ』
そのとき。
遠くから魔物の咆哮が響いた。
二人が同時に振り返る。
「……」
「……」
『来た』
『実戦だ』
『これがゴールか』
男が剣を構えた。
「どうする?」
配信者も武器を握り直す。
「もちろん――」
二人は同時に走り出した。
『おおおお!』
『共闘じゃん』
『バトル続行かと思ったら魔物w』
『ゴールらしいな』
そして配信画面には、二人が魔物へ向かって走っていく姿が映し出される。
配信者の声が響いた。
「ゴールの冒険者が、なぜこの町で活動できるのか!」
『お前もう普通にゴール好きだろ』
『調査とは』
『次回、エキドナ製品の宣伝になってそう』
「違いますからね!?」
『絶対好きじゃん』
『知識量がガチ』
『アンチエキドナ(エキドナ製品愛用)』
配信は、そのまま魔物との戦闘へ移っていった。




