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落内円は落ちている  作者: 七風


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アンチVS町長

「……というわけで」


EVの画面に、またしてもいつもの男が映っていた。


『来た』


『ゴール編三回目』


『もうアンチ配信じゃなくてゴール研究番組だろ』


『前回、三部作じゃ終わらないって言ってたな』


「うるさい!」


男が机を叩く。


「今日はゴールの現在について調べる!」


『町長?』


『行政?』


『土地?』


『ギルド?』


「そう!」


男が指を立てる。


「前回までで、ゴールがどうやってできたのかは分かった」


「だが、今のゴールを実際に動かしているのは誰なんだ?」


『エキドナじゃないの?』


『リゼットじゃね?』


『ニコラに聞けば?』


「いや、今回は本人に聞く」


画面が切り替わる。


そこに映ったのは、ゴールの町長だった。


「よろしくお願いします」


「こちらこそ」


男が少し緊張した様子で頭を下げる。


「まず聞きたい」


「はい」


「ゴールの町長ということは、この町の全部を決めているんですか?」


「いいえ」


町長は即答した。


「全部ではありません」


『お?』


『いきなり違う』


「では、何を?」


「町の行政です」


「行政?」


「住民登録、町の施設、道路や土地利用の調整、町として必要な手続きなどですね」


「では、エキドナは?」


「エキドナは……」


町長は少し考える。


「町の運営を私たちに任せています」


『え?』


『エキドナが町長じゃないの?』


『リゼットが全部決めてると思ってた』


「もちろん、エキドナに相談することはあります」


町長は続ける。


「特に新しい土地の利用や、エキドナに関係する施設については確認が必要です」


「なるほど」


男が頷く。


「では、ゴールの土地は町長のもの?」


「それも違います」


『え?』


『じゃあ誰の?』


町長が少し苦笑する。


「大部分はリゼット様が所有しています」


『やっぱりリゼットw』


『またリゼットかよ』


『結局リゼットじゃん』


「待て!」


男が画面に向かって叫ぶ。


「土地を持っている人間と、町を運営する人間は別なのか?」


「はい」


「そこ、かなり重要じゃない?」


「そうですね」


町長は頷く。


「土地を所有しているからといって、日々の町の行政まで全部行うわけではありません」


『なるほど』


『大家と町役場みたいな感じか』


『じゃあ町長はちゃんと仕事してるんだな』


「当然です」


町長が少し苦笑する。


「私たちも一年間、何もせずにいたわけではありませんから」


『一年』


『そうだった』


『この町まだ一年なんだよな』


男は話を続ける。


「では、町長以外には誰がいる?」


「元々この周辺の村には、それぞれ村長がいました」


「その人たちは?」


「現在は町長補佐として協力してもらっています」


画面に三人の姿が映る。


『おお』


『元村長か』


『この人たちが昔の村を知ってる人?』


「そうです」


町長が説明する。


「それぞれ元々別の村をまとめていた方々です」


「今は?」


「町全体の相談役ですね」


「まだ現役?」


「現役ですが、年齢もありますから」


元村長の一人が笑う。


「そろそろ若い者に任せてもいい頃だと思っているよ」


『一年で世代交代w』


『町が急成長しすぎなんだよ』


『元村長が三人もいるのか』


「では、今後は?」


「若い住民にも行政を覚えてもらっています」


「勉強会もやっていますよ」


別の元村長が口を挟む。


「エキドナの方々に教えてもらうこともあります」


『エキドナ学校、まだ続いてた』


『町の行政まで教えてるのか』


『何でも屋すぎる』


男が次の質問をする。


「では、町の土地が欲しい人はどうする?」


「役場で手続きをします」


「役場で土地を買える?」


「土地によります」


町長が答える。


「新しく利用できる土地については、リゼット様の確認を取った上で、私たちが案内します」


「不動産屋もあるんだよな?」


「はい。町役場の近くにあります」


『町役場の横に不動産屋w』


『町になってるな』


『一年とは思えない』


「最初の頃に移ってきた人には、かなり安く土地が渡されたと聞いている」


「そうですね」


町長が頷く。


「ただ、その後に移住してきた方は、土地や家を借りることも多いです」


「家賃の一部は?」


「土地の所有者に支払われます」


『つまりリゼットにも入る?』


「はい」


『リゼットの資産、また増える』


『もうそこ気にするなw』


男は少し呆れた顔になる。


「では、エキドナに所属していないとゴールには住めない?」


「そんなことはありません」


町長ははっきり答えた。


「エキドナの所属者である必要はありません」


「商人も?」


「もちろん」


「冒険者も?」


「はい」


「普通の住民も?」


「当然です」


『普通に町じゃん』


『エキドナのメンバーじゃなくてもいいのか』


『そこ勘違いしてた』


「では、商業ギルドは?」


男が尋ねる。


「ゴールにある商業ギルドは、どうしてあんな形なんだ?」


町長が苦笑する。


「最初から大きな商業ギルドがあったわけではないからです」


「なぜ?」


「この土地に、外部の商人が大規模に関わる理由がなかったからですね」


「でもエキドナの商品が売れ始めた」


「はい」


「それで?」


「エキドナの方々は、自分たちで商売を広げる時間がありませんでした」


『でしょうね』


『研究してるか何か作ってるもんな』


「そこで、販売を担当する商業ギルドが必要になった」


「そうです」


「エキドナが作る。商業ギルドが売る」


「簡単に言えば、その形です」


『合理的』


『エキドナに商売までやらせたら死ぬほど忙しくなる』


『ニコラとか絶対嫌がる』


男は頷く。


「では、冒険者ギルドは?」


「そちらはもっと特殊です」


『来た』


『ゴールの小さい冒険者ギルド』


『なんで町の規模に合ってないのか気になってた』


「元々、この地域には大きな冒険者ギルドを置く必要がないと判断されていました」


「開拓地だったから?」


「それもあります」


町長は続ける。


「それに、外から突然大きな組織が入ってきても、私たちもエキドナも警戒しますから」


『まあそうだよな』


『何もしてない連中が急に来てもな』


「そして、この周辺には珍しい素材や魔物も多い」


「なるほど」


「ですから、冒険者向けの依頼はまず町役場で受け付ける形になりました」


『町役場がクエスト受付してた理由それか』


『仕事増えすぎだろ』


「今では、さすがに町役場だけで扱うのは大変になってきました」


町長が苦笑する。


「冒険者ギルドには、もう少し大きくなってもらった方がいいと思っています」


『拡張予定?』


『普通の冒険者ギルドになるのか』


『町役場の負担減らしてやれw』


「そういう話も進めています」


男は椅子にもたれた。


「……なるほど」


少し考える。


「ゴールって、エキドナが全部管理している町だと思っていた」


『俺も』


『情報だけ見るとそう思うよな』


「でも実際は違う」


男が指を折っていく。


「町の行政は町長たち」


「土地の所有者はリゼット」


「商売は商業ギルド」


「冒険者関係は小規模な冒険者ギルドと町役場」


「そしてエキドナは――」


男が少し考える。


「……なんだ?」


『そこまで来て分からないのかよw』


『エキドナはエキドナだろ』


『技術提供』


『商品作る』


『町に色々教える』


『たまに変なもの作る』


『最後の重要だろ』


「……」


男はコメント欄を見て、少し笑った。


「まあ、そういうことなんだろうな」


画面の向こうで町長も笑う。


「エキドナは、私たちにとっては恩人です」


「町を全部動かしているわけではない?」


「はい」


「でも、町が今の形になったきっかけではある」


「そうですね」


「そして、私たちは私たちで、この町を運営していく」


町長はそう言った。


「エキドナに頼り切るのではなく、自分たちで続けられるように」


コメント欄が少し静かになる。


『なんかいい話になった』


『アンチ配信どこいった』


『普通にゴール紹介番組として面白い』


『で、結局エキドナが嫌いなの?』


男が黙る。


「……」


『答えろ』


『そこ重要』


『お前の原点だろ』


「……嫌いだから調べ始めたんだよ」


男は少しだけ間を置いた。


「でも、調べれば調べるほど……」


『ほど?』


「知らないことが多すぎる」


『www』


『それはそう』


『アンチ失格』


「うるさい!」


男が叫ぶ。


「今日はここまでだ!」


画面が暗くなる。


配信終了。


その後も、ゴールではこの配信を見た住民たちが話をしていた。


「土地と町の運営は別だったんだな」


「私も知らなかった」


「冒険者ギルドが小さい理由も初めて聞いた」


「町役場、仕事多すぎない?」


「それは前から言われてる」


そんな会話が、町のあちこちで交わされる。


まだできて一年。


ゴールには、知られていないことが多い。


そして、それは住民だけではなかった。


町を調べていたあの男自身もまた――


この町について、まだ知らないことが山ほどあるのだった。


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