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落内円は落ちている  作者: 七風


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アンチVS住民

「……というわけで」


再びEVの画面に、いつもの男が映っていた。


『また来た』


『本当に続いたw』


『三部作って言ってたからな』


『前回のゴールの話、普通に面白かった』


「今回は前回の続きだ!」


男が胸を張る。


「ゴールという町が、どうやって今の形になったのかを調べてきた!」


『ちゃんと調べたのか』


『前回だけで終わると思ってた』


『アンチなのに勤勉』


「うるさい!」


男は咳払いをする。


「前回、ニコラに聞いたところ、エキドナが最初に買ったのは今のゴール全体ではなかった」


『エキドナ邸の周りだけだったな』


『研究施設とか鍛冶場とかを増やしていった』


『それでも町にはならんだろ』


「そう。ここからが問題だ」


男が画面を指差す。


「どうして人が増えたのか!」


『住民に聞け』


『町長に聞け』


『またニコラ呼べ』


「今回は別の人にも話を聞いている!」


画面が切り替わった。


そこには、何人かのゴール住民が映っていた。


「まず聞きたい」


男が尋ねる。


「皆さんは、いつからゴールに住んでいる?」


「俺は最初の頃からだな」


「私は周辺の村から来ました」


「俺はゴールができてから引っ越してきた」


「私も後から来たわ」


『バラバラじゃん』


『そりゃそうだろ』


『全員元開拓村じゃないのか』


「そういうことだな」


男が頷く。


「つまり、ゴールの住民にはいろんな人がいる」


「そういうことになるな」


年配の男性が答えた。


「俺は昔、この辺に住んでいた」


『お』


『元開拓村の人?』


「そうだ」


「じゃあ、開拓村が放棄された後は?」


「俺たちは別の場所に移った。戻ってきたのは、ゴールができてからだ」


『なるほど』


『出戻り組か』


『これは分かりやすい』


男が頷く。


「では、最初からゴールにいたわけではない人たちは、どうしてここへ?」


「周辺の村が限界だったからだ」


別の住民が答える。


「限界?」


「魔物だ」


その言葉に、コメント欄が少し静かになる。


「この辺りは魔物が強い。村だけで対処するのは難しかった」


『やっぱり危険地帯なんだな』


『ゴールが安全になったから忘れてた』


「村の防衛も十分じゃなかった」


「畑も荒らされることがあったな」


「それでも村を捨てるわけにはいかなかったんだが……」


「エキドナがいると知って、話が変わった」


男が聞き返す。


「エキドナが助けた?」


「それもある」


「ただ、俺たちが勝手に来た部分も大きい」


『勝手に来たw』


『移住希望者だったのか』


『エキドナに「住ませてください!」って押しかけたの?』


「まあ、似たようなものだな」


住民が苦笑する。


「周辺の村から人が集まり始めて、道も必要になった」


「一つの村だけではなく、いくつかの村から人が来た」


「それで、道を繋いでいった」


『村が合流したのか』


『今のゴールってそういうこと?』


『元の村の名前とか残ってないの?』


「今は特に意識してないな」


「ゴールに住んでる、でいいんじゃないか?」


「そうそう」


『一つの町になったわけか』


男は頷く。


「では、次の疑問だ」


「何?」


「住民たちは、どうやって今のゴールを作った?」


「それはエキドナに教えてもらったことが大きいな」


「鍛冶ならグレタ」


「農業ならヒナタ」


「魔道具ならニコラやキャサリン」


「服やら生活用品やらはマドカたちから教えてもらった」


『結構いろんなこと教えてるんだな』


『エキドナ学校じゃん』


『弟子とか多そう』


「実際、弟子になった人もいる」


住民が答える。


「ただし、何でも一から教えてもらったわけじゃない」


「そこは重要だな」


別の住民が続けた。


「俺の家は昔から木工をやっていた」


「うちは鍛冶だ」


「私は魔法を使える家系だった」


『おお』


『じゃあ元々の技術もあったのか』


『エキドナが全部作ったわけじゃないんだな』


「そういうことだ」


男が納得したように頷く。


「つまり、エキドナが教えた技術と、もともと住民が持っていた技術が組み合わさった?」


「そうだな」


「だから覚えるのも早かった」


「その後、店を開いた人も多い」


『なるほど』


『ゴールの店って弟子から始まったところも多いのか』


『それなら一年でも一気に増えるの分かる』


『移住者も元々技術持ってる人なら参加できるしな』


男が画面に向かって指を立てる。


「つまり、ゴールはエキドナが全部作った町ではない!」


『おお』


『急にまともな結論』


「エキドナが環境を作り、そこに人が集まり、元々持っていた技術や教わった技術を使って、それぞれが仕事を始めた」


「そういうことだな」


「そして、それが町になっていった」


「そうだ」


男は少し考える。


「……では、町の名前は?」


「ゴールだろ?」


「いや、正式名称だ」


「スロリアゴール」


「なぜそんな名前に?」


住民たちが顔を見合わせる。


「それは……」


「エキドナが決めたんじゃなかったか?」


「そうだったな」


『またエキドナか』


『名前まで決めたのか』


『どういう意味?』


男が質問を続ける。


「スロリアゴールには、どういう意味がある?」


住民の一人が答える。


「ゆっくり暮らすことを目指す場所、だったはずだ」


『めっちゃエキドナっぽい』


『ゴール=目的地ってことか』


『スローライフのゴール?』


『名前の付け方が雑なのか深いのか分からん』


「つまり――」


男がまとめる。


「田舎でゆっくり暮らしたいというところから始まって、いつの間にか人が集まり、町になって、その町の名前が『スロリアゴール』になった?」


「たぶん、そんな感じだな」


『たぶんw』


『住民も詳しく知らないのかよ』


『一年だもんな』


『歴史が長い町みたいに見えるから忘れるけど、できてから一年なんだよな』


男がコメント欄を読む。


「一年……」


少し考えてから、男は呟いた。


「そう考えると、かなり急激に大きくなったんだな」


「そうだと思う」


「だから昔から住んでいる人だけじゃないんだ」


「そうだな」


「元々ここにいた人もいる。周辺の村から来た人もいる。ゴールができてから移住してきた人もいる」


『やっと整理された』


『ゴール住民、全員同じじゃなかった』


『そりゃそうだ』


『俺も半年くらい前に引っ越してきたから知らないこと多いわ』


『俺なんか先月来た』


『じゃあお前らほぼ新人じゃんw』


『うるせえ』


コメント欄が少し盛り上がる。


男はそれを見て、少し笑った。


「なるほどな」


「ゴールは、昔からそこにあった町じゃない」


「一年の間に、人が集まって、村が合流して、店ができて、道ができて……」


男は画面を見つめる。


「それぞれが暮らし始めた結果、今の町になったわけか」


『だいぶ分かってきた』


『でも町長とか行政は?』


『土地って誰のものなんだ?』


『冒険者ギルドは何であんな小さいんだよ』


『商業ギルドも変じゃない?』


「……」


男がコメント欄を見て固まる。


「お前ら、質問が増えてないか?」


『まだ何も分かってないからな』


『次は町の仕組みだろ』


『町長誰なんだよ』


『エキドナが全部管理してるの?』


「……」


男は少し遠い目をした。


「どうやら三部作では終わらないらしい」


『知ってた』


『ゴール編、長編化決定』


『アンチさん頑張って』


「誰がアンチさんだ!」


男が叫ぶ。


そして、その日の配信は終了した。


ゴールの町では、配信を見ていた住民たちがそれぞれ話していた。


「俺、ゴールに来たの半年前だから知らないことばっかりだな」


「私もよ」


「昔の村の話なら、戻ってきた人に聞けばいいんじゃないか?」


「でも、今の町のことなら町長に聞いた方が早いだろ」


「それもそうだな」


一年。


まだそれだけしか経っていない。


だからこそ、ゴールの歴史を最初から最後まで知っている人間は、意外なほど少なかった。


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