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落内円は落ちている  作者: 七風


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アンチVSニコラ対談

「……というわけで」


EVの画面に、いつもの男が映っている。


「今日は、ゴールについて話します」


『またお前か』


『定期配信きたな』


『前回もう配信しないって言ってなかった?』


『言ってた』


『何日ぶり?』


「うるさいな!」


男が机を叩く。


「今回は本当に違うんだよ! 俺だって毎回エキドナのことを話したいわけじゃない!」


『じゃあ何でゴールの話なんだよ』


「それは……」


男が少し黙る。


「最近、ゴールの住民から不満を聞くことが増えたからだ」


『お?』


『今回は住民調査か』


『何が不満なんだ?』


「まず、エキドナが町のいろんなところに関わりすぎている、という話だ」


『いつもの話』


『でもゴールってエキドナの町なんじゃないの?』


「そこなんだよ!」


男が指を立てる。


「俺もそこが気になった!」


『今まで知らなかったのか』


『お前ゴールについて何回配信したんだよ』


「細かいことはいい!」


男は咳払いをする。


「そもそも、ゴールって何なんだ?」


『知らん』


『住んでるけど知らん』


『俺も知らない』


『普通に町だと思ってた』


「……」


男がコメント欄を見つめる。


「お前らも知らないのかよ!」


『お前もだろ』


『アンチなら調べろ』


『情報塔に聞け』


「だから今日は調べるんだ!」


男は胸を張った。


「ゴールの成り立ちから、今の町の仕組みまで、全部調べる!」


『おー』


『珍しくまともな企画』


『期待していいのか?』


「もちろんだ」


男が少し得意げに笑う。


「まず、ゴールの現在について知っている人間に話を聞いてきた」


画面が切り替わる。


そこに映ったのは――


「やっほ~」


ニコラだった。


『ニコラじゃん』


『いきなり本丸』


『アンチにニコラをぶつけるなw』


「なんでニコラなんだよ!」


「だってゴールのこと聞くんでしょ~?」


ニコラはいつもの調子で答える。


「私たち、最初からここにいるしねぇ~」


「……では聞こう」


男は少し姿勢を正した。


「ゴールという町は、どうしてできた?」


「ん~?」


ニコラは少し考える。


「元々は開拓村だよぉ~」


『え?』


『開拓村?』


『最初から町じゃないの?』


「そうそう~」


ニコラは気軽に続ける。


「貴族の人が責任者として赴任して、開拓する予定だったみたいなんだけどねぇ~」


「だった?」


「逃げちゃった~」


『ええ!?』


『責任者逃げたの!?』


『何それ』


『開始早々すごい話出てきた』


「それで開拓村が放棄されちゃったんだよぉ~」


「じゃあ、その後は?」


「誰も開拓しなかったねぇ~」


「なぜだ?」


「危ないから~」


ニコラはあっさり答えた。


「王都の周辺とかと比べたら、この辺の魔物はかなり強かったし~。私たちからしたら素材みたいなものだけどねぇ~」


『基準がおかしい』


『エキドナ基準やめろ』


『王都の冒険者でも苦戦するんじゃない?』


「たぶんねぇ~。王都のモンスターって弱いし~」


『また言ってる』


『王都の冒険者かわいそう』


「だから王国でも、ここを開拓するのは無理だと思われてたみたい」


男は少し黙った。


「……つまり」


「うん?」


「ゴールは、王国が見捨てた土地だった?」


「そういう言い方もできるねぇ~」


『いきなり重い』


『でも危険地帯なら仕方ないか』


『今のゴールから想像できない』


男は次の質問をする。


「では、なぜエキドナがそこを買った?」


「マドカが田舎で暮らしたいって言ったから~」


『理由それ!?』


『めちゃくちゃ個人的』


『国家的な開拓計画とかじゃないのかよ』


『マドカ一人の希望で町が生まれてる』


「王都にはもう転移装置があったしねぇ~」


ニコラは続ける。


「だから場所はどこでもよかったんだよ~。静かだったら、私たちも迷惑かけないし~」


「待て」


男が割り込む。


「エキドナは、その土地をどうやって手に入れた?」


「普通に買ったよぉ~」


「いくらで?」


「えーっと……」


ニコラが少し考える。


「二十五億金貨だったかなぁ~」


『二十五億!?』


『それでも広さ考えたら安いんじゃない?』


『捨てられた危険地帯ならそんなもんなのか?』


『そもそも金貨二十五億持ってるほうがおかしい』


「リゼットが払ったんだよねぇ~」


『リゼットw』


『またリゼットか』


『資産どうなってんだよ』


「それで?」


男が続ける。


「購入した土地を、最初から町にしたのか?」


「してないよぉ~」


「……では?」


「最初は今のエキドナ邸の周りだけ~」


『え?』


『今のゴール全部じゃないの?』


「うん~」


ニコラは画面の向こうで、あっけらかんとしている。


「最初は私たちが暮らす場所があればよかったからねぇ~」


「では、なぜ土地が広がった?」


「研究施設が必要になったり、鍛冶場を作ったり、家畜を飼ったり~」


ニコラは指を折りながら続ける。


「必要なものを作っていったら、だんだん使う場所も増えていったんだよ~」


「町を作ろうとしていたわけでは?」


「全然~」


『じゃあ何でこうなったんだよw』


『行き当たりばったりじゃねえか』


『エキドナらしい』


男も思わず眉を寄せる。


「……では、ゴールは」


「うん?」


「エキドナが町を作ったわけではない?」


「そうだねぇ~」


「必要なものを作っていたら、結果的に町の形になった?」


「そうそう~」


『雑すぎる』


『でも今のゴール見ると本当にそうなんだろうな』


『研究施設、鍛冶場、店、住宅……』


『全部積み重ねか』


男は少し考えてから、次の質問を口にした。


「では、現在のゴールにいる住民は?」


「それは次の話かなぁ~」


「なぜだ?」


「そこまで話すと長くなるし~」


『次回に続くのか』


『珍しく引っ張った』


『アンチさん三部作決定』


「……」


男がコメント欄を見る。


「三部作?」


『ゴールの歴史』

『ゴールの住民』

『ゴールの現在』


『あと冒険者ギルド』


『商業ギルドも』


「……」


男は少し遠い目をした。


「思ったより知らないことが多いな……」


『お前が知らなすぎるだけでは』


『ゴール住民も知らないって言ってただろ』


「それは……」


男は少しだけ黙り、


「……次回も調べる」


と言った。


『お』


『続けるんだ』


『アンチなのに真面目』


『また次回な』


「では今回はここまでだ!」


男が画面に向かって指を立てる。


「次回は、なぜゴールに人が集まったのか。そして、今の住民はどうやって町を作ったのかを調べる!」


『楽しみ』


『普通にゴールの歴史番組になってて草』


『アンチ配信とは』


「うるさい!」


配信終了。


その日の夜。


ゴールの住民の間でも、少しだけ話題になった。


「なあ、昔ここが開拓村だったって知ってたか?」


「知らん」


「俺も知らん」


「町長さんに聞いてみるか?」


「そうするか」


ゴールには、開拓村だった頃からその土地を知る者もいれば、周辺の村から合流してきた者もいる。


そして、ゴールができてから移り住んできた者も少なくない。


それでも、自分たちが暮らしている町がどう始まり、どう広がってきたのかを詳しく知っている人は、意外と少なかった。


そして翌日。


ゴールのあちこちで、同じような会話が始まった。


自分たちが暮らしている町が、どうやってここまで大きくなったのか。


その歴史を、住民たち自身も知らなかったのだ。


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