ヒロバト説明会1
王都の一室。
そこには、ヒロバトの実機を中央に置いた説明会用の机と、撮影用の端末が並んでいた。
今日は、ヒロバトの発売を前にした最終説明会。
そして今回は、その様子をEVで配信している。
王都だけではなく、各地から多くの視聴者が集まっていた。
「それじゃあ、今日はヒロバトの発売前説明会だよぉ~」
中央に立ったニコラが、いつもの調子で話し始める。
「前にも説明会はやったけど~、発売が近くなったからね~。今日は実際に買う人が困らないように、最後の確認をしておこうかなって~」
『きた、発売前説明会!』
『前の説明会から結構経ったな』
『予約した人には重要な配信だ』
『買えないけど仕様は気になる』
『学校で使う予定だから詳しく知りたい』
「まず現在の予約状況だけど~」
ニコラが資料をめくる。
「二千台以上だよ~」
『2000!?』
『もうそんなにいってるのか』
『金貨300枚だよな?』
『予約だけでかなりの数だな』
「そうだね~。結構予約してくれてるみたい~」
ニコラは特に驚く様子もなく、次の資料を出した。
「それで、ヒロバトの値段は一台三百金貨」
『高い!』
『知ってた』
『前から発表されてるぞ』
『それでも高い』
『騎士団とか学校なら欲しいだろうな』
「うん~。そこは前から変わってないよ~」
隣にいたリゼットが腕を組む。
「三百金貨程度で騒ぐものでもないでしょうに」
『リゼットさん強い』
『言い方w』
『貴族相手でも容赦ない』
「まあ、買うかどうかは任せるけどね~」
ニコラはあっさり言った。
「欲しいかどうかは私たちが決めることじゃないし~」
「そうですわ。欲しいと思った者が買えばよいだけでしょう」
リゼットは当然のように言い切る。
『この二人、温度差がすごい』
『ニコラもリゼットも売る気があるのかないのか分からんw』
「それで発売は一ヶ月後」
ニコラが続ける。
「今回は受注生産になるよぉ~」
『受注生産か』
『この値段なら在庫を大量に作るわけにはいかないよな』
『予約してないと発売日に買えない?』
「基本的には予約してもらった分を作っていく形だよ~」
「当然でしょうね」
リゼットが資料を覗き込む。
「この数を見て、先に何千台も作っておけなどと言われても困りますわ」
『正論』
『リゼット様ほんと強い』
『貴族への説明会でそれ言ったのかな』
「それで、発売日にどうやって受け取るかなんだけど~」
ニコラが資料を切り替える。
「貴族家とか王家には、こっちから配達することになってるよ~」
『配達!?』
『取りに行かなくていいのか』
『王家は当然そうなるか』
「ギルドとか学校みたいに、みんなで使うところは、各町の商業ギルドに届けるから、そこで受け取ってね~」
『学校は商業ギルドで受け取りか』
『先生が取りに行く感じか』
『ギルドも同じなのね』
「そう~」
ニコラは頷いた。
「あと、ここからが今日の本題ね~」
画面に、
**『ヒロバト登録について』**
と表示される。
『来た』
『ここ重要そう』
『予約したけど登録のことよく分かってない』
「ヒロバトは買ったら誰でも好き勝手に使えるわけじゃないからね~」
「前にも説明したでしょうに」
リゼットが視聴者ではなく、説明会に集まった者たちへ向けるように言う。
「聞いていなかった者は、今度こそ覚えておきなさいな」
『リゼット容赦ないw』
『絶対貴族にも同じこと言ってる』
「まず、一台購入した人がマスターになるよ~」
「そのヒロバトの管理者ですわね」
「そうそう~」
ニコラが頷く。
「マスターなら、全部の設定ができるよ~。契約関係もね~」
「マスターが管理者なのですから、当然ですわ」
『リゼット様が全部先に言ってくれる』
『補佐というか監督』
「それとは別に、サブ登録もできるよ~」
『サブ登録?』
「サブ登録された人は、データの参照とか、カードの作成とか、普通の使用はできるよ~」
「ただし、契約を結ぶことはできません」
リゼットがすぐに補足する。
「そこを勘違いしないように。契約を管理できるのはマスターだけですわ」
『なるほど』
『学校なら校長がマスターで先生がサブとか?』
「そういう使い方ができるね~」
ニコラが画面を切り替える。
「例えば学校なら、校長先生とか責任者の人をマスターにして~、実際に授業で使う先生をサブ登録しておく」
『生徒全員を登録する必要はない?』
「ないよぉ~」
ニコラは即答する。
「先生が使って、生徒に見せたり、対戦させたりすればいいからね~」
「生徒全員を登録してどうするのです?」
リゼットが呆れたように言う。
「管理する人数が増えるだけでしょうに。必要な者だけ登録すればよろしい」
『ぐうの音も出ない』
『正論しか言わない』
『リゼットさん学校関係者に厳しいw』
「それで、最初はマスターを含めて五人まで登録できるよ~」
『5人か』
『家族なら十分そう』
『学校なら先生4人まで?』
「うん~。マスター一人とサブ四人で五人だね~」
「それ以上必要なら追加できますわ」
リゼットが続ける。
「一人につき五金貨です」
『追加5金貨か』
『追加は結構安いな』
『三百金貨に比べたら確かに』
「だから、家族で使うなら最初の五人で足りると思うし~」
ニコラが続ける。
「学校とかギルドなら、必要な担当者だけ登録してもらえばいいよ~」
「誰彼構わず登録する必要はありませんわ」
リゼットがきっぱりと言う。
「管理する人間は、少ないほうが楽でしょう?」
『リゼットさん管理者目線だ』
『こういうところ妙に現実的』
「そういうこと~」
ニコラは頷く。
「じゃあ、次は――」
画面が切り替わる。
**『人間データの契約とカードについて』**
「ここは結構大事だからね~」
ニコラがヒロバト本体を指差す。
「前の説明会でもやったけど~、今回は発売前だから、細かいところまで確認していくよぉ~」
『待ってました』
『カードの仕様知りたい』
『契約期間とかどうなるんだ?』
『ここから長そうだな』
「ええ、ここからは特にしっかり聞きなさいな」
リゼットが腕を組み直す。
「買ってから知らなかった、では困りますもの」
ニコラが少しだけ笑った。
「うん~。じゃあ、ここからが本番だね~」




