ヒロバト説明会2
「それじゃあ、契約について説明するよぉ~」
ニコラがヒロバト本体の横に置かれたカードを一枚手に取った。
「ヒロバトで人間のデータを使う場合、まず本人の許可が必要だからね~」
『ここは前にも説明されてたな』
『勝手にカード化できないやつ』
『本人が条件を決めるんだよな』
「お金で契約することもできるし~、勝負で決めてもいいし~、依頼を受ける代わりでもいい」
「要するに、本人が納得した条件で契約するということですわ」
リゼットが腕を組んだ。
「勝手に連れてきて登録、などということはできませんからね」
『そこ重要』
『本人の許可が必須』
『王様の時も本人が契約してたな』
「そういうこと~」
ニコラが頷く。
「で、契約するときに、いろいろ条件を決められるよ~」
画面に契約項目が表示されていく。
『使用期間』
『使用回数』
『使用場所』
『使用目的』
『その他の条件』
「例えば、一ヶ月だけ使っていいとか~」
「十回まで、とかですわね」
「うん~。特定の場所だけで使ってほしい、とかもできるよ~」
『かなり細かく決められるんだな』
『学校の授業だけ、とかもできる?』
「契約内容次第だね~」
「契約時に条件として決めておけば可能ですわ」
リゼットが答える。
「逆に、決めていないことまで勝手に許可されるわけではありません」
『なるほど』
『契約書みたいなもんか』
『じゃあ後から揉めにくそうだな』
「そうなんだよね~」
ニコラがカードを裏返す。
「で、ここが今回ちゃんと説明しておきたいところ」
「契約すると、カードが三枚出るよ~」
『3枚!?』
『前にそんな話あったっけ』
『王様の実演で出てたやつか』
「一枚は、データを提供した本人のもの」
ニコラが一枚を持ち上げる。
「もう一枚は、そのデータを契約した人のもの」
「そして最後の一枚が、エキドナのものですわ」
リゼットが続けた。
「この三枚には、同じ契約内容が記録されます」
『同じ内容なのか』
『じゃあエキドナ側にも契約が残る?』
「うん~」
ニコラが頷く。
「エキドナ用のカードは、本部の記録端末にも送られるよ~」
「契約者側にも記録は残ります」
リゼットが説明する。
「ですから、後になって契約内容を勝手に書き換えることはできません」
『証拠になるってことか』
『本人側と契約者側とエキドナ側で残るんだな』
『言った言わないにならないのはいいな』
「そうそう~」
「例えば契約者が後になって、そんな条件は聞いていない、と言ったとしても」
リゼットが淡々と続ける。
「三枚の記録を確認すれば済む話ですわ」
『リゼットさん怖いw』
『契約トラブルに強そう』
『絶対揉めたくない』
「別に怖くありませんわよ」
リゼットが画面の向こうを睨むように言った。
「契約した内容を確認するだけでしょう」
『それが怖いんですよ』
『正論』
『怒らせてはいけない』
「まあまあ~」
ニコラが話を戻す。
「それで、契約には終了条件もあるからね~」
「期間契約なら、その期間が終われば使用できなくなる」
「回数契約なら、決めた回数を使い切れば終了~」
『じゃあカードも消える?』
「カード自体は残るよ~」
『お?』
「契約が終わったからって、カードまで消えるわけじゃないの」
「ただし、使えるかどうかは別ですわ」
リゼットが補足する。
「契約が終了したカードでは、そのデータをヒロバトで使用できません」
『なるほど』
『カードは残るけど使用権はなくなる』
『記念品にはできるんだな』
「そういうこと~」
ニコラが頷く。
「だから、カードを持ってるからって、いつまでも使えるわけじゃないよ~」
『じゃあ昔のカードを売るとかは?』
「契約が終わってるなら、買っても使えないよ~」
『あー』
『そりゃそうか』
『カードだけ持ってても意味ないな』
「あと、登録した本人が後から新しい技術を覚えたりしても~」
ニコラが続ける。
「昔作ったカードが勝手に更新されるわけじゃないからね~」
『剣術覚えたら自動で強くなるわけじゃないのか』
「そう~」
「新しいデータを使いたいのであれば、本人と新しく契約してもらう必要がありますわ」
『なるほど』
『昔のデータはそのまま』
『最新版が欲しければ再契約』
「そういうこと~」
ニコラは別のカードを取り出した。
「あと、ちょっと特殊な契約もあるよ~」
『特殊?』
「一回だけ使う契約」
『一回だけ?』
「うん~。例えば一回だけ戦って、そのカードを記念に持っておきたい、とかね~」
「これは通常の利用とは少し違いますわ」
リゼットが説明する。
「一回の使用が終われば契約も終了します」
「でも、そのカードは手元に残るよ~」
『お土産用ってこと?』
「そうそう~」
『じゃあ使い終わったカードは完全な記念品か』
「うん~。ただし、契約が終わってるから、そのカードを使ってもう一度戦うことはできないよ~」
『なるほど』
『記念品として残るだけ』
『それなら欲しい人いそう』
「まあ、これは本人との契約次第だからね~」
ニコラがカードを机に置く。
「あと、死後についても契約で決められるよ~」
『おお』
『そこもか』
「本人が亡くなったら契約終了にすることもできるし~」
「死後も契約を続ける条件にすることもできますわ」
リゼットが補足する。
「もちろん、それも契約時に本人が認めていることが前提です」
『そこまで決められるのか』
『かなり自由だな』
『昔の英雄とか残せるわけか』
「そういう使い方もできるね~」
ニコラはそう言って、少しだけ笑った。
「ただし、何でも好き勝手できるって意味じゃないからね~」
「契約した内容の範囲内で使える」
「それだけ覚えておいて~」
『了解』
『契約が一番大事だな』
『三枚のカードも覚えた』
『本人・契約者・エキドナ』
『エキドナのカードが証拠になるの強い』
「うん~」
ニコラが頷く。
「これで契約関係はだいたい分かったかな~」
「まだありますわよ」
リゼットが口を挟む。
「盗難や破損について説明していないでしょう」
「……あ~」
ニコラが少しだけ目を逸らす。
「そうだった~」
『そこ大事だろw』
『本体壊れたらどうなるんだ』
『盗まれた場合も気になる』
「じゃあ次はそこだね~」
ニコラが新しい資料を表示する。
『盗難・破損・復旧について』
『来た』
『これは聞いておきたい』
EVのコメント欄が一気に流れ始めた。




