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落内円は落ちている  作者: 七風


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ガブちゃん 帰る

村を歩き回った二人は、すっかり日が暮れた頃に宿へ戻ってきた。


「今日はいっぱい見て回りましたわね!」


「そうね!」


ティニアも満足そうだ。


「じゃあ今日はここに泊まっていきましょ」


「ええ!」


『結局泊まるのかw』

『完全に観光旅行になってる』

『この村、思った以上に楽しそう』


宿の主人が二人を迎える。


「旅人よ……長き旅路で疲れた身体を、今宵はここで休めるがいい」


「ありがとうございますわ!」


ガブリエルもすっかり慣れた様子で頭を下げる。


「我が身に刻まれし疲労を……今宵、癒やすといたしましょう!」


「……」


ティニアが吹き出す。


「ふふっ!」


「何ですの!?」


「ガブちゃん、もう完全にこっち側じゃない!」


『wwwww』

『今日一日で成長しすぎ』

『王女様が村の言葉を完全習得してる』


その夜。


二人は宿で食事を済ませ、ゆっくりと休んだ。


そして翌朝。


「おはようございますわ!」


「おはよ!」


二人は宿を出る。


「さて……」


ガブリエルが村を見回す。


「帰る前に、一つだけ気になることがありますの」


「何?」


「結局ここ……」


ガブリエルが首を傾げる。


「なんなんですの?」


『それなw』

『視聴者もずっと気になってた』

『誰か説明してくれ』

『村人全員あのノリなのは何なんだよw』


ティニアも「あー」と声を漏らした。


「それ、私も最初に思ったわ」


「では、村長さんに聞いてみましょう!」


二人は村の中央にある建物へ向かった。


中に入ると、年配の男性が座っていた。


「おお……旅人たちよ」


「村長さんですの?」


「そう呼ばれている」


「ちょうどよかったですわ!」


ガブリエルは村長の前に座る。


「わたくし、どうしても気になっていることがありますの」


「何かな?」


「この村……どうして皆様、あのような話し方をなさるんですの?」


村長は少し黙った。


そして、遠くを見るような目をした。


「……あれは、半年前のことだ」


「半年前?」


「この村に、一人の旅人が訪れた」


『旅人?』

『誰だ?』


「その者は自らを……勇者と名乗っていた」


「まあ!」


ガブリエルが目を輝かせる。


「勇者なんているんですの!?」


『ああ、なんか自称勇者って人?』

『そういえば各地で問題を解決してるって話、聞いたことある』

『あの人この村にも来てたのか』

『勇者って名乗ってる人、何人かいるのかな』


村長は頷いた。


「その者は、この村に滞在している間……我らに様々なことを教えてくれた」


「様々なこと?」


「日常の出来事であっても、壮大に語る」


「……」


「普通の買い物であっても、運命の旅路として語る」


「……」


「ただの鍛錬であっても、己との戦いとして語る」


ガブリエルの顔がどんどん楽しそうになっていく。


「なるほど……!」


『何教えてんだよw』

『問題解決しに来て、村に変な文化残していったのか』

『でも村長さん普通に気に入ってそうだなw』


「最初は我らも戸惑った」


村長は苦笑する。


「だが……やってみると、これがなかなか面白くてな」


「まあまあ!」


ガブリエルが笑う。


「素敵ですわ!」


『ガブちゃん肯定したw』

『この村、住民みんな楽しそうなんだよな』

『本人たちが楽しんでるならもういいかw』


「それにしても……」


ガブリエルは少し考える。


「その方、面白いことを教えてくださったんですのね!」


「うむ」


村長が頷く。


「今では、この村の文化になっている」


「まあ!」


ガブリエルが立ち上がる。


「では、わたくしも一つ学ばせていただきましたわ!」


ティニアが笑う。


「何を?」


「日常とは、自ら物語に変えるもの……ですわ!」


『うわw』

『ガブちゃん完全に感染してるw』

『名言っぽく言うなwww』

『最初あんなに困惑してたのにw』


ガブリエルは村長へ向かって頭を下げる。


「今日はとても楽しかったですわ!」


「それは何よりだ」


「本当に面白い村でしたわ!」


そして振り返る。


「また来ますわ!」


ティニアも手を振る。


「またね!」


村人たちが二人を見送る。


「旅人よ……またこの地へ戻ってくるがいい」


「ええ!」


ガブリエルは笑顔で手を振りながら、村を後にした。


『めちゃくちゃ面白かった』

『また来てほしい』

『この村、定期的に見たい』

『勇者が何をしたのかもっと聞きたい』

『ガブちゃん完全に気に入ったな』


そして――


『やべぇ、あの村俺の出身地だわ』


一瞬、コメント欄が止まった。


『え?』

『!?』

『出身地!?』

『待ってwww』

『村人本人降臨してる?』

『いや草』

『お前もあの喋り方なの?』

『↑俺もそこ気になった』


少しして、そのコメントに返信がつく。


『普通に育ったはずなんだけど、帰省すると親父まであの喋り方になってる』


『wwwww』

『感染源どこだよw』

『村全体じゃねえか』

『勇者の影響すげえな』

『これもう普通に文化になってるじゃんw』


ガブリエルはまだ、そのコメントには気づいていなかった。


彼女の知らないところで――


その村の「言葉」は、少しずつ村の外へも広がり始めていた。


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