神域
マドカたちは、神社をエキドナの管理下で修復していくことを狛犬たちに伝えた。
「この神社を修復することになったんだよ」
「そうか」
狛犬は神社を見上げる。
「ならば、少し魔力を補充させてもらえれば、この神社も修復していくだろう」
「え?」
「俺らの力でな」
「じゃあ、建て直さなくていいの?」
「そういうことだ」
マドカが神社を見回す。
「でも、結構壊れてるよ?」
すると狛犬が、リゼットを見る。
「見たところ、そこの銀髪の美女」
「あら。いいこと言うじゃない」
リゼットが少し嬉しそうに笑う。
「なにかしら?」
「お前は、この世界の上位者か?」
「何年生きているかは忘れたわ。まぁ、この世界の魔法使いの中では上の方じゃない?」
「なら、お前なら俺達の魔力を補充できるだろう」
「お姉ちゃんが魔力を提供すると、神社の敷地が綺麗になるってこと?」
マドカが尋ねる。
「実家が元に戻るんです?」
ヒナタも神社を見渡す。
「結構壊れてますけど」
「そうだな」
狛犬が頷く。
「ただ、この神社に入るのはあまり勧めない」
「どうして?」
「彼女の魔力であれば、元々神聖な浄化空間であるこの神社は、さらに強くなるだろう」
狛犬は少し間を置く。
「悪人は入れぬであろうし、人を選ぶ」
「あー……」
マドカが嫌な予感を覚える。
「入れないなどと文句をつけるやつもいそうだぞ?」
「確かにそうだね!」
マドカが頷く。
「なんで入れないのかって、エキドナに苦情がいきそう!」
「あなたが邪気を持っているからよ?」
リゼットが真顔で言う。
「……なんて説明したら、怒り出すでしょうね」
「絶対怒ると思う!」
マドカが笑う。
「まぁ、この神社はエキドナ管理でいいよね。ヒナタの実家だし」
「ええ」
リゼットも神社を見る。
「本当はここを修復したら、教会のように使おうとも思っていたけれど……人を選ぶのなら仕方ないわね」
「ゴールには教会はありませんからね」
ヒナタが少し困ったように笑う。
「私も、実家がこの世界の教会扱いになるのはちょっと困りますし!」
「そうだねー」
マドカも頷く。
「神的な何かが守護していた過去の神殿なので、重要文化財。入るのは構わないけれど、何があるかは分からないよ?」
「それくらいなら、いいんじゃないか?」
狛犬が答える。
「この場所をどう扱うかは、お前たちに任せよう」
マドカは改めて、古びた神社を見上げた。
「じゃあ、エキドナ管理の重要文化財ってことで!」
「そうね」
リゼットも頷く。
「それなら修復もできるし、無理に人を集める必要もないわ」
「実家が残るなら、それでいいです」
ヒナタは、少し嬉しそうに神社を見つめた。
こうして、土御門日向の実家である古い神社は、エキドナの管理する不思議な文化財として残されることになった。
「見たところ、魔力で修復したら、いい庭園とかになると思うんだよね」
マドカが神社の周囲を見回す。
「桜もあるし」
「そうですね」
ヒナタも桜の木を見上げる。
「よく実家でお花見してましたし。いい景色でした」
「じゃあ、春になったらお花見とか面白そうだね!」
「サクラ? 花なのかしら?」
「えーっと、ピンクの花が木いっぱいに咲き誇る、日本の名物みたいなやつ!」
「マドカちゃん、適当だね!」
「でも、そんな感じで季節の花として大事にされてる木ですよ」
ヒナタが笑う。
「ふふ。それは楽しみね」
リゼットも桜の木を見上げる。
「咲いたらさ! みんなでお弁当いっぱい持って、お花見しようよ!」
「いいですね」
「地球の記憶が戻って、今まで以上に料理を完成させられると思うの。私、元々料理好きだったから」
「あら」
リゼットが少し驚いたようにヒナタを見る。
「じゃあ、エキドナの食事も質が上がりそうね」
「やったね!」
マドカが嬉しそうに笑う。
「じゃあ町の料理も種類増えそう!」
「今まではなんとなくだったけど、限りなく近くは出来そうだと思う」
「私もなんとなくでしか知らなかったし!」
「ヒナタが料理を思い出してくれて嬉しいな!」
マドカが楽しそうに言う。
「帰ったらさっそく試作作ってみようかな」
「他にもナナリーも元日本人だし、いっぱいお話しようね!」
「あら、私は仲間外れ?」
リゼットが少し寂しそうな顔をする。
「寂しいわ?」
「お姉ちゃんもパジャマパーティーしよう!」
「はいはい」
リゼットは苦笑する。
「では狛犬。魔力を提供して帰るわ。また来るわね」
「ああ」
狛犬は静かに答える。
「自慢の俺達の神域、少しずつだが元に戻していくさ」
「じゃあ、ちょくちょく見に来ますね」
ヒナタが二体の狛犬を見る。
「お二人も、私を待っててくれますか?」
「もちろんだ」
狛犬は力強く答えた。
「俺たちの巫女」




