ガブちゃん達 変な施設を発見する
「さあ、今日も冒険ですわ!」
ゴールの町を出て、少し離れた森。
今日のガブリエルは、トンチンカントリオ――トーイ、チティ、カーンの三人と一緒に冒険者として森を探索していた。
『またトーイたちだ!』
『ガブちゃんも一緒か』
『今日は何するんだ?』
「今日は森の探索ですわ! せっかく冒険者になったのですから、色々な場所を見て回りますの!」
トーイが先頭を歩きながら振り返る。
「この辺なら、俺たちも何度か来てるぜ」
「薬草もありますね」
チティが周囲を見回し、カーンが持っている簡単な地図と照らし合わせる。
「この辺りまでは、ゴールからもそれほど遠くありません」
「では、もう少し奥へ行ってみませんこと?」
「いいんじゃねえか?」
三人は森の奥へ進んでいく。
最初のうちは、よくある森の探索だった。
薬草を見つければ採取し、魔物が出れば三人で連携して戦う。
トーイが前に出て魔物の注意を引き、チティが隙を作り、カーンが状況を見ながら動く。
「いい連携ですわね!」
ガブリエルも感心しながら、別の魔物が現れると一人で片付けていく。
『ガブちゃん普通に強いんだよな』
『トンチンカンも連携うまい』
『新米冒険者とは?』
「私たちは新米ですわよ?」
「ガブちゃんはともかくな」
「どういう意味ですの!?」
そんなやり取りをしながら、さらに森の奥へ進んでいく。
しばらくして、チティが振り返った。
「……あれ?」
「どうしましたの?」
「ゴールの町が見えませんね」
カーンも地図を確認する。
「予定していた探索範囲より、かなり奥に来ています」
「えっ?」
ガブリエルが地図を覗き込む。
確かに、いつの間にか予定していた場所を越えていた。
『どこまで来てるんだよ』
『ガブちゃん基準で進むから……』
『大丈夫か?』
ガブリエルは周囲を見回す。
「魔物もそれほど強くありませんし……」
そして胸を張った。
「余裕ですわね!」
『出たw』
『ガブちゃんの余裕ですわ』
『それ普通の冒険者基準じゃないからな』
トーイたちも特に引き返す様子はない。
三人も十分に戦えている。
むしろ、ここまで来ても大きな危険を感じることなく進めてしまうのは、ガブリエルが一緒だからこそだった。
さらに奥へ。
木々は次第に濃くなり、獣道すら見えなくなってくる。
「……この辺り、あまり人が来ていないみたいですね」
カーンが周囲を見回した。
「道もありません」
「まあ、こういうところを探すのが冒険者ですわ!」
ガブリエルは楽しそうに歩いていく。
そのときだった。
「……ん?」
トーイが足を止めた。
「どうしましたの?」
「なんか……あれ」
木々の向こうに、赤いものが見えている。
四人で近づいていく。
そこにあったのは、二本の赤い柱だった。
その上には太い横木が渡されている。
「……なんだこれ?」
トーイが首を傾げる。
「門……でしょうか?」
チティが周囲を見る。
だが、門の先には道が続いているだけで、町や屋敷があるわけでもない。
そして、その左右には石で作られた動物の像が置かれていた。
「こっちは……犬?」
チティがしゃがみ込む。
「もう一つも似ていますね」
カーンが反対側を見る。
「でも、少し形が違います」
「なんだこれ?」
トーイはもう一度赤い柱を見上げた。
『何これ?』
『ゴールにこんなのあったの?』
『見たことない』
『門っぽいけど変だな』
『両脇の像は何の動物だ?』
ガブリエルもじっと眺めている。
「私もこんなものは初めて見ましたわ」
さらに奥へ進む。
木々の間から、古びた建物が姿を現した。
屋根は崩れ、壁もところどころ朽ちている。
しかし、中央部分だけは妙にしっかりとした造りが残っていた。
「建物……?」
「お屋敷には見えませんね」
「神殿とか、そういうものじゃねえか?」
『神殿?』
『でもこんな形の神殿知らない』
『誰か知ってる人いない?』
しばらくコメントが流れる。
しかし、答えは出ない。
『知らん』
『初めて見た』
『ゴールの冒険者だけど知らないぞ』
ガブリエルが首を傾げる。
「皆さんもご存じないんですの?」
『知らない』
『謎すぎる』
「では……」
ガブリエルは建物を見上げた。
「大発見なのではありませんこと?」
トーイが笑う。
「だったら俺たち、すげえ場所見つけたことになるな」
「でも、何の場所なんでしょう?」
チティが考え込む。
カーンも周囲を確認する。
「古い施設なのは間違いなさそうですが……」
その後、四人は建物の周囲を軽く調べた。
危険な魔物はいない。
ただ、崩れている場所も多く、無理に中へ入るのは危険そうだった。
「今日はここまでにしましょう」
カーンが言う。
「そうですわね。勝手に壊してしまったら大変ですもの」
ガブリエルも素直に頷いた。
「あとでエキドナに報告して、詳しく調べてもらいましょう!」
『それがいい』
『ちゃんと報告してくれ』
『これ普通に歴史的発見じゃない?』
『ゴールの観光地になったりして』
「観光地!」
ガブリエルの目が輝いた。
「それはいいですわね!」
トーイが苦笑する。
「まだ何なのか分かってねえぞ」
「謎の遺跡というだけでも人は来ますわ!」
『ガブちゃん、もう観光地にする気だ』
『気が早いw』
『でも景色も良さそう』
確かに、ここまで来る途中の森は深かった。
人がほとんど来ない場所だからこそ、古い施設がそのまま残っていたのだろう。
「では、帰りますわよ!」
ガブリエルが振り返る。
「……あ」
そして少し考える。
「その前に」
三人を見る。
「ご飯の時間ですわ!」
「急に現実的になったな」
「お腹空きました……」
「私もです」
『結局それかw』
『ガブちゃんらしい』
『今日は大発見だったな』
ガブリエルは満足そうに頷いた。
「謎ですわね~。まあ、詳しいことはあとでエキドナに報告しておきましょう!」
そしてカメラに向かって手を振る。
「それでは皆さん、今日はここまでですわ!」
「また次の冒険でお会いしましょう!」
配信終了。
――この日、トンチンカントリオとガブリエルが発見した場所が、後にゴールの新たな観光名所の一つになることを、この時の四人はまだ知らなかった。




