しゃべる剣の試練
『試練を開始する』
「……何するんだ?」
『まずは素振り千回』
「千回!?」
『そして毎日、屋敷を百周』
「百周!?」
『腕立て伏せ三百回』
「三百!?」
トーイが思わず叫ぶ。
「無理だろ!」
『マスター』
しゃべる剣の声は、いたって冷静だった。
『お主らはもう十二歳だ』
「…………」
『冒険者登録ができるだろう?』
「ああ!」
トーイが拳を握る。
「俺はあと五日!」
『ほう』
「私とカーンは、もう登録できています」
チティが言う。
「僕たちはすでに冒険者です」
『ならば問題ないな』
「いや、俺には問題あるんだけど!?」
トーイが抗議する。
「あと五日しかないんだぞ!?」
『だからこそ修行だ』
「いや、千回は多すぎるって!」
『冒険者として活躍したいのだろう?』
「……したい」
『ならば、やれ』
「…………」
トーイが黙る。
しばらくして。
「……分かった!」
剣を握り直す。
「やってやる!」
「トーイ、一緒にやろう」
カーンが頷く。
「私も手伝います」
チティも続く。
『よし』
剣が満足そうに言う。
『では、次の試練だ』
「まだあるの!?」
『当然だ』
「…………」
トーイの顔が引きつる。
『ダンジョンへ行け』
「ダンジョン?」
『出会うモンスター、すべての頭をラストアタックで叩き割れ』
「…………」
トーイは目を瞬かせた。
「え?」
『頭だけを狙え』
「攻撃するの、頭だけ!?」
『そうだ』
「なんで!?」
『先ほどの技を覚えているか?』
「ああ……」
『あれは兜割』
「兜割……」
『まだまだ会得には遠いぞ』
トーイが自分の剣を見る。
「じゃあ、あれを覚えるために?」
『そうだ』
「でも、頭だけ狙うって難しくないか?」
『難しい』
「…………」
『だから修行になる』
チティが少し考える。
「最後の一撃だけ、頭に当てればいいんですか?」
『その通り』
「じゃあ、途中までは普通に攻撃しても?」
『構わん』
カーンが頷く。
「つまり、最後に頭へ正確な一撃を入れる技術を鍛えるんですね」
『理解が早いな』
「なるほど……」
トーイも少しずつ納得していく。
「敵を弱らせて、最後の一撃を頭に入れる」
『そうだ』
「でも、失敗したら?」
『やり直せ』
「モンスター相手に!?」
『当然だ』
トーイはしばらく黙った。
そして。
「……やってやる」
剣を強く握る。
「俺、冒険者になったら活躍したいんだ」
カーンとチティを見る。
「だったら、今のうちに強くならないとな」
「うん」
「はい」
三人が頷く。
『よし』
しゃべる剣が告げる。
『では、まずは素振り千回からだ』
「今から!?」
『今からだ』
「…………」
トーイは大きく息を吸った。
「よーし!」
剣を振り上げる。
「一!」
振り下ろす。
「二!」
「三!」
「四!」
その横で。
「……私たちもやりますか」
「そうですね」
チティとカーンも剣を構えた。
そして三人は、黙々と素振りを始めた。
まだ幼い三人の冒険者。
その最初の修行が、こうして始まった。




