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落内円は落ちている  作者: 七風


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202/532

トンチンカンVSトンチンカン

「ニコラ!」


 トーイが勢いよく駆け込んできた。


「お願いがある!」


「なに~?」


 ニコラが顔を上げる。


「俺たちの幻影と戦わせてくれ!」


「…………」


 ニコラの隣にいたチティとカーンも、揃って頭を下げる。


「お願いします」


「自分たちがどれくらい強くなったのか、試してみたいんです」


「へぇ~」


 ニコラは三人を見る。


「自分自身と戦ってみたいんだ?」


「そう!」


「なるほどね~」


 ニコラは少し考えた。


「まぁ、いいけど~」


「本当か!?」


「ただし、あくまでテストプレイだからね~」


 ニコラが指を立てる。


「まだ正式な仕様じゃないし、テスト中の機能もあるから、ここで知ったことを必要以上に人に話したりしないでね~?」


「分かった!」


「はい」


「もちろんです」


 三人が勢いよく頷く。


「よし。じゃあ出してみようか~」


 ニコラがヒロバトを操作する。


「登録データ――トーイ」


 光が集まる。


 そこに現れたのは。


「…………俺?」


 トーイと瓜二つの幻影だった。


「すげぇ……」


 トーイが目を輝かせる。


「動きまで俺なのか?」


「登録されてるデータの範囲ならね~」


「じゃあ……」


 トーイが剣を握る。


「勝負だ!」


 幻影のトーイも剣を構える。


「始め!」


 戦闘が始まった。


「うおおおっ!」


 トーイが突っ込む。


 幻影も同じように踏み込んでくる。


「うわっ!」


 剣がぶつかる。


「こいつ、俺の動き読んでやがる!」


「そりゃ自分だからね~」


「それでも!」


 トーイは一度距離を取る。


 幻影も同じように下がる。


「……やりにくい」


「自分の癖も分かっちゃうからね~」


 再び激突する。


 剣を振る。


 避ける。


 踏み込む。


 受ける。


 まるで鏡写しだった。


「くっ……!」


 トーイの額に汗が浮かぶ。


 そのとき。


『マスター』


「ん?」


 腰に差していた剣が喋った。


『右』


「右?」


『次、右から来る』


「!」


 トーイが反射的に身を捻る。


 直後。


 幻影の剣が目の前を通り過ぎた。


「当たってた!」


『そのまま一歩下がれ』


「こうか!」


『違う。半歩だ』


「細けぇ!」


 それでもトーイは言われた通りに動く。


 幻影の攻撃が空を切る。


『今』


「――っ!」


 トーイが踏み込む。


『剣を横に』


「こう!」


 剣が閃く。


 幻影の姿勢が崩れた。


「今だあああ!」


 トーイが一気に距離を詰める。


 最後の一撃。


 幻影が光となって消えた。


「…………」


「…………」


「勝った?」


 トーイが恐る恐る尋ねる。


「勝ったよ~」


「やったああああ!」


 トーイが拳を突き上げる。


「俺、やったぞ!」


『マスター』


「なんだ?」


『先ほどの動き、覚えておけ』


「え?」


『今までのお前にはなかった動きだ』


 トーイが自分の剣を見る。


「……新技?」


『そう呼んでもいい』


「すげぇ!」


 トーイが嬉しそうに笑った。


「俺、新しい技覚えた!」


「じゃあ次、チティだね~」


「はい!」


 チティも自分の幻影と向き合う。


 最初は動きが遅かった。


 けれど、自分の弱点を知っているからこそ、少しずつ修正していく。


「そこ……!」


 幻影の攻撃をかわす。


 一歩。


 また一歩。


「今!」


 チティが攻撃を当てる。


 幻影が消える。


「……勝った」


「おめでとう~」


「はい……!」


 チティが小さく拳を握る。


「次は僕です」


 最後にカーン。


 幻影と向き合った。


「…………」


「…………」


 互いに動かない。


「カーン、動かないの~?」


「相手が僕なら、最初に動いた方が不利です」


「なるほど~」


 しばらく睨み合ったあと。


 幻影が先に動いた。


「そこです!」


 カーンが一歩踏み込み、攻撃を受け流す。


 そして反撃。


「――!」


 幻影が崩れる。


 最後の一撃。


 幻影が消えた。


「……勝ちました」


「三人とも勝ったね~」


 トーイが二人の肩を叩く。


「俺たち、やったな!」


「はい!」


「うん!」


 三人が嬉しそうに笑う。


 その様子を見ていたニコラも微笑む。


「いいテストになったよ~」


 すると。


『マスター』


 しゃべる剣が再び口を開いた。


「ん?」


『先ほどの技は、お試しだ』


「……お試し?」


『そうだ』


 剣は淡々と告げる。


『あれで、今の性能の三パーセントほどだと思え』


「…………」


 トーイが固まった。


「え?」


『三パーセントだ』


「いやいやいや!」


 トーイが剣を持ち上げる。


「あれで三パーセント!?」


『そうだ』


「すごかったぜ!?」


『だから三パーセントだ』


「…………」


 チティとカーンも顔を見合わせる。


「三パーセント……」


「それだけで、あれほど……」


 トーイは自分の剣を見る。


「じゃあ……全部使えるようになったら?」


『その時に考えろ』


「なんだよ、それ!」


 剣は答えない。


 ただ静かに、トーイの手の中に収まっている。


「ニコラ……」


「なに~?」


「これ、もっと強くなれるのか?」


「さぁ~?」


 ニコラは楽しそうに笑った。


「それもテストしてみたらいいんじゃない?」


「…………」


 トーイが剣を握り直す。


「やる」


「トーイ?」


「もっと強くなる!」


 すると。


『では――』


 しゃべる剣の声が変わった。


『試練を開始する』


「……え?」


 トーイの顔が引きつる。


「ちょっと待て」


『開始』


「おい!」


「試練モードに入ったね~。しゃべる剣が適切な修行方法を提示するはず~」

 トーイたちが振り返る。


「じゃあ……これから修行が始まるんですか?」


 ニコラは少しだけ目を細めた。


「……見てみようか~」


 試練が、始まった。


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