ガブちゃん対談する
ヒロバトの発売日が、いよいよ近づいていた。
情報塔では、すでに詳しい説明映像も公開されている。
それでもガブリエルの配信には、ヒロバトについての質問が大量に届いていた。
「というわけで!」
ガブリエルがカメラに向かって胸を張る。
「本日は特別ゲストをお呼びしておりますわ!」
「どーも~」
隣でニコラが手を振る。
『ニコラきた!』
『開発者きたじゃん!』
『ヒロバト質問回!?』
『発売前情報くる!?』
「もちろんですわ!」
ガブリエルが頷く。
「本日は発売直前ということで、私が皆様を代表して、ニコラさんにヒロバトについて質問していきますわ!」
「答えるとは言ってないよぉ~」
「…………」
ガブリエルが止まる。
『www』
『先に牽制された』
『ニコラつよい』
「まあ、質問するだけなら自由ですわ!」
「それはそうだね~」
ガブリエルは気を取り直して、手元の紙を見る。
「では、第一問!」
「うん~」
「人間データは、登録した時点の能力をもとに幻影として再現される――」
「説明映像に出てるよぉ~」
「…………」
「次~」
「まだ質問の途中ですわ!」
「でも、説明映像に全部出てるよぉ~」
「全部ですの?」
「うん」
「本当に?」
「本当に~」
ガブリエルが腕を組む。
「では……人間データは本人の許可なく登録できませんわよね?」
「説明映像に出てるよぉ~」
「カードは本人のデータそのものを保存しているわけではありませんわよね?」
「それも出てるよぉ~」
「登録した時点から本人が成長しても、自動的に幻影が強くなったりはしませんわよね?」
「それも~」
「幻影同士なら戦える?」
「出てる~」
「本人と戦っても怪我をしない?」
「出てるよぉ~」
「…………」
ガブリエルが黙る。
そして、ものすごく真剣な顔でニコラを見る。
「ニコラさん」
「なに~?」
「私、説明映像を何回も見ましたわ!」
「うん~」
「本当に素晴らしいゲームですのよ!」
「ありがと~」
「何回見ても飽きませんわ!」
「それはよかったね~」
「戦闘の流れも、データ登録の仕組みも、カードの扱いも、ちゃんと理解しておりますわ!」
「じゃあ質問しなくても知ってんじゃ~ん」
「…………」
ガブリエルが固まった。
『wwwww』
『正論』
『ガブちゃん何しに来たんだよw』
『説明映像を何回も見てるの草』
「いえ!」
ガブリエルがすぐに反論する。
「理解しているからこそ、質問したいことがあるんですの!」
「たとえば?」
「えーっと……」
ガブリエルが紙を見る。
「…………」
「ないの~?」
「ありますわ!」
「どれ?」
「……この部分ですわ!」
ガブリエルが指を差す。
「『詳しい仕様については、製品版をご確認ください』」
「それは製品版で確認してね~」
「そこを聞きたいんですの!」
「それは答えられないよぉ~」
「むむむ……」
ガブリエルが悔しそうに唸る。
『発売前だからなw』
『そこは無理だろ』
『ガブちゃん頑張れ』
「では、別の質問!」
「どうぞ~」
「ヒロバトには、まだ公開されていない要素がありますの?」
「あるよぉ~」
「おお!」
ガブリエルの目が輝く。
「どんな要素ですの!?」
「秘密~」
「…………」
「発売まで待ってね~」
「それは質問に答えたことになりますの!?」
「あるってことは答えたよぉ~」
「細かいですわ!」
ニコラが笑う。
「だって発売前だもん~」
ガブリエルはしばらく考える。
そして、ふっと笑った。
「……まあ、そうですわね」
「分かってくれた~?」
「ええ」
ガブリエルはカメラへ向き直る。
「皆様、安心してくださいまし!」
「何を?」
「ヒロバトの基本仕様については、すでに公開されている説明映像を見れば大体分かりますわ!」
「それはそうだね~」
「私も何回も見ましたもの!」
「何回?」
「…………」
ガブリエルが少し考える。
「数えてませんわ!」
「たぶん結構見てるよね~」
「当然ですわ!」
胸を張るガブリエル。
「それほど素晴らしいゲームなんですもの!」
「じゃあ、発売日まで待てるね~」
「待てませんわ!」
「なんで!?」
「早く遊びたいですもの!」
即答だった。
ニコラが笑う。
「じゃあ、もう質問終わりでいいね~」
「ええ!」
ガブリエルも笑顔になる。
「発売日を楽しみに待ちますわ!」
こうして。
発売直前の質問配信は、思ったより質問にならないまま終了した。
ただし――。
ガブリエルがヒロバトの説明映像を何度も見ていることだけは、視聴者にもよく伝わったのだった。




