勇者ジャスティス
――とある町。
「……なるほど」
ジャスティスは掲示板の前で腕を組んでいた。
そこには、一枚の依頼書が貼られている。
『最近、街道沿いで商人が襲われています』
『犯人は複数人と思われます』
『近隣の村にも被害あり』
「…………」
ジャスティスは依頼書をじっと見る。
「これは……勇者の仕事だな」
誰に頼まれたわけでもない。
報酬も大した額ではない。
だが、困っている人がいる。
それだけで十分だった。
「よし」
ジャスティスは依頼書を剥がした。
「行こう」
こうして勇者は、街道へ向かった。
*
数時間後。
「……来ないな」
街道脇に隠れていた盗賊たちは、首を傾げていた。
「今日も商人が来るはずなんだが」
「最近、妙に警戒されてないか?」
「おかしいな……」
そのとき。
「おーい!」
「!?」
遠くから声がする。
「勇者だ!」
「は!?」
「勇者ジャスティスだ!」
盗賊たちが一斉に立ち上がる。
「なんで勇者が来るんだよ!?」
「知らねぇよ!」
ジャスティスは普通に歩いてくる。
「君たち!」
「…………」
「最近、この辺りで商人を襲っているのは君たちだろう!」
「なんで知ってんだ!?」
「依頼書に書いてあった!」
「そこまで書いてあるのかよ!」
盗賊たちは逃げようとする。
だが――。
「待て!」
ジャスティスが追いかける。
「くそっ!」
「勇者相手に勝てるか!」
「だったら武器を捨てて投降しろ!」
「嫌だ!」
「そうか!」
ジャスティスは真っ直ぐ追いかける。
結果。
盗賊たちは全員捕まった。
*
「ありがとうございます!」
「助かりました!」
「さすが勇者様です!」
町の人たちから感謝される。
「いや、俺は当然のことをしただけだ」
ジャスティスは照れながら頭を掻いた。
「これで街道も安全になるだろう」
「勇者様!」
「ん?」
「こちらを!」
差し出されたのは、商人からのお礼の品だった。
「……いいのか?」
「もちろんです!」
「そうか……」
ジャスティスはありがたく受け取った。
「ありがとう」
その夜。
宿屋の部屋。
ジャスティスはベッドの上に座っていた。
「…………」
今日も人を助けられた。
勇者として、ちゃんと役に立てた。
「……うん」
満足そうに頷く。
そして。
「そういえば」
昼間にもらった箱を開ける。
「なんだこれ?」
中には小さなカードのようなものが入っていた。
「…………」
ジャスティスは裏返す。
そこには見慣れない文字が書かれている。
『モンスターゲット・バトラー』
「…………?」
ジャスティスは首を傾げた。
「なんだ、これ」
*
――同じ頃。
遠く離れた別の町。
「……よし」
一人の商人が笑っていた。
「勇者様にも渡ったな」
「これで噂が広まれば、もっと売れるぞ!」
「最近、スロリア方面から来る商人が持ってくる物は面白いものばかりだからな!」
そして、その情報は少しずつ広がっていく。
勇者ジャスティスの手に渡った一枚のモンバトカード。
本人はただのお礼として受け取っただけ。
しかし――。
勇者が持っている。
それだけで、そのカードには妙な価値が生まれ始めていた。
*
翌朝。
「……これ、使ってみるか」
ジャスティスはカードを見つめる。
「モンスターを出せるのか?」
説明書を読む。
「……よく分からん」
数秒考える。
「まあ、やってみれば分かるか」
こうして。
勇者ジャスティスは、本人も知らないうちに――
**モンバトの宣伝塔になり始めていた。**
もちろん。
エキドナの誰も知らない。
マドカも知らない。
ニコラも知らない。
ガブリエルだけは――
「…………」
後日、勇者の噂を聞いて目を輝かせる。
「勇者ジャスティスがモンバトを!?」
そして。
「これは……カードを取りに行く必要がありますわね!」
また一人。
妙な方向へ動き始めた。




