しゅん
「情報漏洩するなと言ってあるでしょう?」
「ですが、お姉様!」
エレノアに正面から怒られ、ガブリエルは必死に弁明する。
「決定的には言ってませんわ! その可能性を示唆するだけで――」
「そのせいでニコラが取材で面倒なことになっているのですよ? 少しは反省しなさい!」
「うぅ……申し訳ありませんわぁ……」
「まぁ、今回は確かに確実なことは言ってないからねぇ~」
ニコラが横からのんびり口を挟む。
「モンバトはもう結構な購入者がいるけど~、ヒロバトは発売いつしてもいい状態だけど、まだ売ってないでしょ~?」
「そうですわね」
「もし『モンバトを持ってても、ヒロバトと遊べるかも~?』ってなったら、ヒロバトいらないじゃ~んってなるわけ~」
「確かに……」
ガブリエルも少し考える。
「ですが、会議内容では『モンバトとヒロバトのデータで勝負ができると面白いね』って話だけで、作るとは言ってなかったですわよ?!」
「そもそも、あなたなんで会議にいるのかしら?」
リゼットが冷静に突っ込んだ。
「私はメンバーですわよ!」
「え、違うけど」
マドカまで即座に突っ込む。
「な! マドカ! 裏切りですの!?」
「卒業したらじゃなかった?」
「……」
「確かにそうね」
リゼットが頷く。
「今の学生の身分じゃ、仕事は遊びの配信くらいしかダメだと思うわ。だから私も『卒業後』と言ったはずよ?」
「言われたような気がしますわ!」
「もう~」
ニコラが頭を掻く。
「作るの私なんだけどなぁ~」
「それで、結局モンバトとヒロバトのリンクというのは――」
「ん~?」
ニコラは少し考えてから答える。
「確かに可能だよ~?同じデバイスだもの~。データ連携できるようには作ってあるし~」
「では!」
ガブリエルが身を乗り出す。
「ただ~」
「ただ?」
「発売前にその情報は危険なんだよ~」
「そうなんですの?」
「そうだねぇ」
マドカも話に入る。
「ヒロバトとも遊べるかもだったら、モンバト側だけ得じゃん。モンバトに何か制限かけないと不公平だよ。値段全然違うし」
「制限ですの?」
「例えば、モンバト側が勝負を挑む時は課金しないとダメとか。ヒロバトは無制限で勝負を挑めるとか。そういう追加の料金設定が必要かもしれないってこと」
「まっ!」
ガブリエルが目を丸くする。
「買ったらモンバトユーザーはずっと無料だと思ってますわよ?!」
「だから、追加で色々な機能を後付けできるけど、お金かかりますよってオプションだよ」
「マドカ~、例えばどんなの~?聞いてからできるか判断させて~?」
ニコラがマドカに振る。
「そうだなー。オリジナルモンスターを作成。自分だけのモンスターをカード化できるとか?」
「最高ですわね!」
ガブリエルが即座に食いついた。
「私だけのモンスター! さっそくデザインを!」
「だから~まだ出来るかわかんないんだって~」
「むぅ……」
「例えば、自分だけのモンスター作成チケットを買って、専用カードに絵を描くとデータ化される」
「素敵ですわ!」
「ただ、何のスキルや魔法がつくかはランダム」
「ランダム……」
「いいのが付くまで買ってね~、とか」
「き……」
ガブリエルの顔が引きつる。
「鬼畜ですわ!」
「まぁ、それだけモンバトが安いおもちゃなのですよ」
エレノアが穏やかに続ける。
「そのくらいの追加要素で、なお遊べるというのならお得じゃないですか?」
「お姉様まで賛成ですの?!」
「もちろん、もちろんそのモンスターを育てるのは課金以外の要素も入れるといいよ」
「ん~?」
ニコラが興味を示す。
「実際にモンスターを自分に追尾させて、一緒にモンスターを倒すとレベルが上がっていくとかさ」
「ほうほう」
「使わないカードをエサにできるとかね」
「なるほどね~」
ニコラが頷く。
「ゴミカードの有効活用か~」
「面白いわね。マドカのカードホルダー、パンパンで厳選も難しいでしょう? いらないカードをエサにすればいいわね」
「そうだね、お姉ちゃん。売ればいいとかもあるけど、コレクションで取っておきたいじゃん」
「わかりますわ!」
ガブリエルも大きく頷いた。
「厳選が楽しいのと、いつか使うかもで残してあるんですわよね!」
「他に何かある~?」
ニコラが尋ねる。
「うーん……モンバトってカード化して、倒されたりしたらその場から消えるじゃん?また出せばいいだけだど、お気に入りのモンスターを、常時出せるようにするとか」
「ほう」
「もちろん本来のサイズじゃなくて、手のひらサイズがずっとついてくるとかね」
「まぁ!最高ですわね!シェリーはかわいい子が好きですから、絶対売れますわ!」
「まだ作るって言ってないからねぇ~?」
ニコラがすかさず釘を刺す。
「なんにせよ、モンバトはアップデートの余地はあるけど、ニコラたち技術班次第なんだよ。私はアイディア言うだけ。実現できるかは知らないよ?」
「なるほど……」
ガブリエルもようやく少し冷静になる。
「まぁ~、今回迂闊だったね~。記者めんどいしぃ~。『そんなに連携したいなら自分でつくればぁ?』って思ったし~」
「ご……ごめんなさいですわ……!」
ガブリエルがしゅんとする。
「ニコラ博士、もう漏らしませんわよ!」
「ほんと、気を付けてねぇ~」
「はいですわ……!」
結構ガチめに怒られたガブリエルは、その後しばらく大人しくしていた。
そして――。
「……」
テーブルの上に並べたモンバトのカードを整理し始める。
「これは残しますわ」
一枚。
「これは……」
また一枚。
そして、手に取ったカードを見て。
「あ、これはエサですわ!」
「まだ決まってないって~」
「はい」
ガブリエルは素直にカードを戻した。




