翌日 ニコラへの取材
翌日。
エキドナの屋敷には、朝から記者が押しかけていた。
「ニコラ博士!」
「ん~?」
ニコラは眠そうに顔を上げる。
「昨日のガブリエル王女の配信についてお聞きしたいのですが!」
「もう~、うるさいなぁ~」
「モンバトとヒロバトのリンク機能について――」
「しらないよぉ~」
「ですが博士!」
「ん~?」
ニコラは面倒そうに記者を見る。
「ガブリエル王女が、配信中に『今度、ヒロバトとのリンクも』と発言しました。これはつまり――」
「ん~?」
「……はい?」
「ガブちゃんがなに~?」
「え?」
「ガブちゃんがそう言ったら現実になるわけぇ~?」
「いえ、ですから……」
「だったらガブちゃんに聞けばいいんじゃないのぉ~?」
「ガブリエル王女は開発者ではありませんので!」
「そうなのぉ~?」
「そうです!」
「じゃあ知らないよぉ~」
「ですが博士!」
「ん~?」
「ニコラ博士が開発に関わっていることは皆さん知っています!」
「そうだねぇ~」
「でしたら、リンク機能の予定があるのかどうかだけでも!」
「はぁ~?」
ニコラは心底不思議そうな顔をする。
「なんでそんなこといわないとだめなのぉ?」
「それは……」
「予定があるかどうかなんて、まだ分かんないじゃ~ん」
「ですが、昨日のガブリエル王女の発言は――」
「ん~?」
「『今度、ヒロバトとのリンクも』と……」
「そうなんだぁ~」
「博士!」
「なにぃ~?」
「ですから!」
記者は一度息を整える。
「モンバトとヒロバトをリンクする予定があるのかを!」
「はぁ~?」
ニコラは首を傾げる。
「ガブちゃんが『あったらいいね』って話をしただけじゃないのぉ~?」
「いえ! ですから予定があるのかを!」
「ん~?」
「……」
「なんで予定があるかどうか知りたいのぉ~?」
「それが重要な情報だからです!」
「そうなのぉ~?」
「そうです!」
「へぇ~」
ニコラは興味なさそうに相槌を打つ。
「じゃあ、あったらいいね~」
「博士!」
「なぁにぃ~?」
「そういう話ではありません!」
「そうなのぉ?」
「そうです!」
「じゃあ、どういう話なのぉ~?」
「リンク機能の予定が――」
「はぁ~?」
ニコラはまた同じ顔をする。
「なんでそんなこといわないとだめなのぉ?」
「……」
記者が黙る。
だが、ここで引き下がるわけにはいかない。
「……では、質問を変えます」
「うん~」
「モンバトとヒロバトは、将来的に連携する可能性がありますか?」
「ん~?」
「可能性です。予定ではなく、可能性だけでも!」
「可能性?」
「はい!」
「そりゃあ、可能性くらいあるんじゃないのぉ~?」
「!」
「世の中、なにが起きるか分かんないしぃ~」
「では、可能性はあると!」
「可能性がないとは言ってないよぉ~?」
「……」
「でも、あるとも言ってないけどねぇ~」
「博士……」
「なぁにぃ~?」
「ずっとかわしていますよね?」
「そうかなぁ~?」
ニコラはいつもの眠そうな笑顔を浮かべる。
「しらないよぉ~」
「…………」
「私、忙しいんだけどなぁ~」
「最後に一つだけ!」
「まだあるのぉ~?」
「ガブリエル王女の発言は、事実だったのでしょうか!」
「ん~?」
ニコラは少しだけ考える。
「ガブちゃんがそう言ったんでしょう?」
「はい!」
「じゃあ、ガブちゃんに聞けばいいんじゃないのぉ~?」
「本人が知らない可能性も――」
「じゃあ、私もしらないよぉ~」
「博士!」
「もう~」
ニコラは大きく伸びをする。
「うるさいなぁ~」
「…………」
「質問はそれだけ~?」
「……はい」
「じゃあ、帰ってねぇ~」
結局。
記者は、最後まで何一つ確かな情報を引き出すことができなかった。
ただ一つ分かったことがある。
――ニコラ博士は、何かを知っているのかもしれない。
だが、それを本人の口から聞き出すのは、どうやら簡単なことではなさそうだった。




