ガブちゃん音楽配信
「皆様、ごきげんようですわ!」
今日のガブリエルは、エキドナ邸の一室にいた。
「最近、ナナリー様がマドカとアリシアさんとユニットを組んで活動しているでしょう?」
『あー』
『そういえば今やってるね』
『アイドル活動中だもんな』
「そうですの!」
ガブリエルは少し頬を膨らませる。
「お二人とも楽しそうですし、ナナリー様も忙しそうですし……」
そして、堂々と宣言した。
「私、ひまですの!」
『そこ?』
『ガブちゃん暇なの?』
「暇ですわ!」
『学校は?』
「学校はありますわよ?」
『じゃあ暇じゃないじゃん』
「学校以外の時間が暇なんですの!」
『なるほど』
『お嬢様の暇基準』
「ですから今日は――」
ガブリエルが横に置かれていたケースを開ける。
「バイオリンを弾きますわ!」
『おお』
『音楽配信だ』
「せっかくですから、皆様にも聴いていただきますわね」
バイオリンを構える。
しばらくして、部屋に音色が響き始めた。
軽やかで、よく通る音。
『普通に上手い』
『ガブちゃん何でもできるな』
『これは暇つぶしのレベルじゃない』
演奏を終える。
「どうでした?」
『上手い』
『すごい』
『もっと聴きたい』
「ふふっ」
ガブリエルは満足そうに笑う。
「そうでしょう?」
そこへ、部屋の外から声がした。
「……あら?」
ガブリエルが振り返る。
「ナナリー様?」
「ガブリエルさん?」
ナナリーが顔を出した。
「何をしているんですか?」
「配信ですわ!」
「配信?」
「最近暇なので、バイオリンを弾いておりますの!」
「ああ……」
ナナリーが少し笑う。
「楽しそうですね」
「ええ!」
「では、私も何か――」
「踊ります?」
「……なぜ分かったんですか?」
『草』
『ナナリー=踊る』
『もうユニット活動の影響が』
「なんとなくですわ!」
ガブリエルがバイオリンを構える。
「では、ナナリー様。踊ってくださいまし!」
「今ですか?」
「今ですわ!」
「いいですよ」
ナナリーが軽く音に合わせる。
そして――。
『え?』
『めっちゃ踊る』
『ナナリーさんすげえ』
『キレッキレじゃん』
ガブリエルが目を見開いた。
「…………」
演奏を続けながら、ナナリーの動きを見る。
「……なるほど」
『ガブちゃん何か考えてる』
「そういうことですのね」
演奏が少しだけ激しくなる。
「では私も負けませんわ!」
『何の勝負?』
『始まった』
『ガブちゃん対抗心出てる』
ナナリーが笑いながら踊る。
ガブリエルはそれに合わせるように演奏をさらに華やかにしていく。
「どうですの!」
「素敵ですね!」
「まだまだですわ!」
演奏が速くなる。
ナナリーもさらに動く。
『なんだこのコラボ』
『めっちゃ楽しそう』
『二人とも負けず嫌い?』
「ほら! これでも踊れますの!?」
「もちろんです!」
「ならばこちらですわ!」
さらに演奏が変わる。
「まだいけます?」
「いけますよ!」
『なんで張り合ってるんだ』
『音楽配信とは』
『ただの対決になってる』
しばらくして、ようやく二人が止まった。
「……ふぅ」
ナナリーが息を整える。
「ガブリエルさん、かなり本気でしたね」
「ナナリー様こそ!」
二人で顔を見合わせる。
「楽しかったですわ!」
「私もです」
『仲良くなってる』
『これコラボでいいじゃん』
『またやって』
「またですか?」
ガブリエルがコメント欄を見る。
「そうですわね……」
少し考えて。
「ナナリー様がお暇なときなら、またやってもいいですわよ?」
「私も構いませんよ」
「では決まりですわ!」
『次回決定』
『暇つぶしからコラボ成立』
ガブリエルは満足そうにバイオリンをケースへ戻した。
「というわけで、本日の暇つぶしは大成功ですわ!」
そして最後に一言。
「……でも、次はもう少し難しい曲にしますわね」
「私も頑張らないといけませんね」
『まだ勝負する気だ』
『ガブちゃん楽しそう』
「当然ですわ!」
そうして、その日の配信は終わった。




