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落内円は落ちている  作者: 七風


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ガブちゃん 冒険者登録する

「皆様、ごきげんようですわ!」


今日のガブリエルは、ゴールの冒険者ギルドにいた。


「本日はですね、私、初めて冒険者登録をいたしますの!」


『冒険者登録!?』


『ガブちゃん今までしてなかったの?』


「していませんわ。ですから今日は、冒険者になる記念すべき日ですわね!」


受付へ向かう。


「こんにちは。冒険者登録をお願いしたいのですけれど」


受付で手続きを進めてもらいながら、ガブリエルは周囲を見回していた。


「……あら?」


『どうした?』


「こちら、ずいぶん小さいですわね?」


受付嬢が苦笑する。


「はい……ゴールの冒険者ギルドは、かなり小規模ですので」


「そうなのですの?」


改めて室内を見回す。


受付。


少しの待合スペース。


そして、冒険者が何人か。


「……クエストボードは?」


「町役場です」


「…………」


ガブリエルが固まった。


「……なぜですの?」


『草』


『それは思う』


『クエスト受けたいのに役場行くの?』


「冒険者ギルドなのに?」


「はい……」


「クエストを探すために?」


「町役場へ……」


「ここでは?」


「受付だけです」


「…………」


ガブリエルの笑顔が少し引きつる。


「それは……不便ではありませんこと?」


近くにいた冒険者が口を挟んだ。


「まあ、不便っちゃ不便だな」


「やはりそうですの!?」


『わかるわー』


『受付とは別なんだよな』


『そこ分ける意味ある?』


『役場にクエストボード置くならギルド何してるんだ』


「皆様もそう思っているではありませんの!」


ガブリエルが勢いよくコメント欄を見る。


「よかったですわ。私だけが変なことを言っているのかと思いましたわ!」


受付嬢も慣れた様子で苦笑している。


「昔から皆様そうおっしゃいますね」


「では改善すればよろしいのでは?」


「それが簡単ではなくて……」


「むぅ……」


ガブリエルは少し頬を膨らませた。


「冒険者ギルドなのですから、冒険者に便利な場所であってほしいものですわ」


『正論』


『ガブちゃん珍しく普通に怒ってる』


「これは怒っているのではありませんわ」


少し考えて。


「……ちょっとだけ不満ですの」


『それを怒ってるっていうんだよ』


「違いますわ!」


そんなやり取りをしながら、登録手続きは進んでいった。


やがて受付嬢から告げられる。


「登録には実技審査があります」


「実技ですの?」


「はい。戦闘能力の確認をします」


「なるほど」


ガブリエルの表情が変わる。


「それなら得意ですわ!」


『出た』


『ガブちゃんの「できますわ!」』


『これは期待』


「実技試験の相手は――クライブさんにお願いしています」


「あら、クライブですの?」


振り返る。


そこには、見慣れたクライブがいた。


「お、来たか」


「クライブ! よろしくお願いいたしますわ!」


「こっちこそ。まさか冒険者登録するとはな」


「私も今日思い立ちましたの!」


「それは勢いで来たな……」


「いいではありませんの!」


エキドナ邸でもよく顔を合わせている二人だけあって、すでにかなり気安い。


クライブが軽く肩を回す。


「じゃあ、やるか」


「ええ。手加減はいりませんわよ」


「言ったな?」


「もちろんですわ!」


メイドが少し離れたところからカメラを向ける。


『ガチ戦闘きた』


『クライブ相手か』


『エキドナ邸でいつも会ってる二人なのいいな』


二人が構える。


「じゃあ、いくぞ」


「参りますわ!」


次の瞬間。


ガブリエルが一気に踏み込んだ。


速い。


クライブが受ける。


「おっと」


そのまま距離を取る。


「……やっぱ速いな、お前」


「でしょう?」


「でも――」


クライブが踏み込む。


「そこ、ちょっと雑!」


ガブリエルが攻撃を受け流す。


「むっ!」


「今の、力任せすぎるぞ」


「なるほど!」


「素直だな、おい」


再び攻撃。


今度はガブリエルが動きを変える。


「お、今のはいい」


「でしょう!」


「でも足が止まってる」


「そこですのね!」


『ダメ出しされまくってる』


『でも全然めげない』


『むしろ楽しそう』


「だって、せっかくクライブに見てもらっていますもの!」


ガブリエルは楽しそうに笑う。


「どんどん言ってくださいまし!」


「じゃあ遠慮なく」


クライブが攻め込む。


ガブリエルも迎え撃つ。


激しくぶつかり合う。


「そこ!」


ガブリエルがかわして反撃。


クライブが受ける。


「おお、今のはいい」


「やりましたわ!」


「ただ、次はそのまま突っ込むなよ」


「……はい!」


『ちゃんと聞いてる』


『ガブちゃん戦闘センス高いな』


『修正早い』


再び距離が開く。


クライブが笑う。


「飲み込み早いじゃん」


「褒めても何も出ませんわよ?」


「いや、普通に褒めてるだけだ」


「……そういうのは困りますわね」


少し照れながら、すぐに構え直す。


「では、もう一度!」


「おう」


そこから何度も攻防が続いた。


クライブの指摘が入るたび、ガブリエルは動きを変えていく。


「そこはいい!」


「ありがとうございますわ!」


「今度は攻撃に寄りすぎ!」


「はい!」


「今の回避はよかったぞ!」


「でしょう!」


「調子に乗るな!」


「乗ってませんわ!」


『仲いいなこの二人』


『実技試験というより稽古』


『ガブちゃん楽しそう』


しばらくして、クライブが構えを解いた。


「よし、ここまででいいだろ」


「はい!」


ガブリエルも息を整える。


「どうでしたの?」


「戦闘能力は高い」


「やった!」


「ただ、まだちょっと勢い任せなところがある」


「なるほど!」


「あと、攻撃するときに周りを見る余裕がなくなる」


「それも覚えておきますわ!」


「……落ち込まないのな」


「なぜ落ち込むんですの?」


ガブリエルは不思議そうな顔をした。


「直したらもっと強くなるのでしょう?」


「まあ、そうだな」


「でしたら、教えていただいたほうがお得ですわ!」


「そういう考え方か」


『強い』


『メンタルも強い』


『ダメ出し=経験値になってる』


「それに」


ガブリエルが笑う。


「クライブに勝負していただけるなら、またお願いしたいですわ!」


「お前、冒険者登録した理由それじゃないだろうな?」


「……それも少しありますわ」


「あるのかよ」


『草』


『クライブ逃げて』


『次の稽古確定』


二人でギルドへ戻る。


「これで私も冒険者ですわね!」


「たぶんな」


「たぶん?」


「登録の手続きは終わってるから大丈夫だろ」


「では正式に――」


ガブリエルがギルド内を見回す。


「……やっぱり小さいですわね」


「そこに戻るのかよ」


「だって気になりますもの!」


『まだ言ってる』


『相当不満だったんだな』


「クエストボードが町役場ですのよ!?」


クライブも苦笑する。


「まあ、それは確かに不便だけどな」


「でしょう!?」


『冒険者も認めた』


『ゴールギルド、改善して』


「次に来たときも、私はきっと同じことを言いますわ!」


「はいはい」


「『はいはい』ではありませんわ!」


ゴールの小さな冒険者ギルドに、ガブリエルの声が響いた。


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