ガブちゃん 辻モンバト
「皆様、ごきげんようですわー!」
今日もガブリエルは元気だった。
そして、その後ろには一人のメイド。
カメラを構えて、黙々とついてきている。
『今日もメイドさん撮影?』
「そうですわ!」
ガブリエルは振り返りもせず答える。
「わたくしが自分で持っていたら、両手が使えませんもの。モンバトもできませんし!」
『なるほど』
『有能メイド』
『撮影係固定なんだ』
「ええ。ですから本日は――」
ガブリエルがエキドナ邸の廊下を歩いていく。
「辻モンバトですわ!」
『辻モンバト!?』
『何それ』
「出会った人に突然モンバトを申し込むのですわ!」
『迷惑w』
「迷惑ではありませんわ!」
ガブリエルは胸を張った。
「モンバト仲間なら、突然勝負を申し込まれても嬉しいでしょう?」
『相手による』
「わたくしなら嬉しいですもの!」
『ガブちゃん基準』
「当然ですわ!」
そのとき、廊下の向こうからマドカが歩いてきた。
「あ、マドカ!」
マドカがこちらを見る。
「ん?」
ガブリエルが駆け寄る。
「マドカ! モンバトですわ!」
「今?」
「今ですわ!」
「急だね」
「辻ですもの!」
「辻ってそういうものなの?」
『始まったw』
『マドカ逃げて』
『親友対決きた』
ガブリエルはもうやる気満々だった。
「さあ、参りますわよ!」
マドカも少し笑う。
「いいよ」
「ふふん……!」
ガブリエルが嬉しそうに笑った。
「では、エキドナ邸の廊下で――」
「場所はちゃんとしたところにしようよ」
「……それもそうですわね」
少し移動して、二人が向かい合う。
メイドも撮影位置を調整する。
『メイドさん慣れてる』
『撮影係すごい』
「では皆様、今回はマドカとのモンバトですわ!」
マドカが準備をする。
ガブリエルも構える。
「わたくし、今日は手加減しませんわよ?」
「いつもしてないじゃん」
「……」
『正論』
『マドカ強い』
「そ、それは……!」
ガブリエルが少し慌てる。
「今日は特に、という意味ですわ!」
「はいはい」
『ガブちゃん煽られてる』
『弱いw』
「煽らないでくださいまし!」
ガブリエルがすぐ反応する。
「わたくし、煽られると本気になりますわよ!」
『知ってる』
『それが見たい』
「もう!」
ガブリエルが笑う。
「では、始めますわ!」
二人のモンバトが始まった。
ガブリエルは迷いなく指示を出していく。
「そこですわ!」
「今ですの!」
「いいですわよ!」
マドカも落ち着いて対応する。
『二人とも楽しそう』
『ガブちゃん声でかいw』
『マドカ冷静』
「当然ですわ!」
ガブリエルは完全に楽しんでいる。
「モンバトはこうでなくてはいけませんの!」
しばらくして、勝負が終わった。
ガブリエルが画面の向こうを見る。
「……」
『どうだった?』
『勝敗は?』
ガブリエルが満面の笑みを浮かべた。
「もう一戦ですわ!」
「え?」
マドカが顔を上げる。
「辻ですもの!」
「終わりじゃないの?」
「終わりませんわ!」
『出た』
『ガブちゃん無双』
『マドカ逃げて』
「逃げませんわよ!」
マドカが笑う。
「じゃあ、もう一回やろうか」
「そうこなくては!」
ガブリエルは嬉しそうに構え直した。
その様子を、メイドは静かに撮影し続けていた。
『これずっと見てられる』
『辻モンバトいいな』
『次は誰に突撃するの?』
ガブリエルがコメントを読む。
「次ですの?」
少し考える。
そして、にやりと笑った。
「もちろん――」
「エキドナ邸で会った方ですわ!」
『誰だw』
『次の犠牲者』
『楽しみ』
「ふふふ……」
ガブリエルは廊下の先へ歩き出す。
「待っていなさいまし!」
メイドも黙ってその後を追った。




