素材もってきて~
「……ない~」
ニコラが机の上を漁っている。
「何が?」
「素材~」
「どのくらい?」
「全然~」
「…………」
マドカとリゼットが顔を見合わせる。
「じゃあ、採りに行こう!」
「そうね」
「えっ」
ニコラが顔を上げる。
「二人で~?」
「うん!」
「魔物とかいるよ~?」
「倒す!」
「危ないよ~?」
「大丈夫!」
「私も行く~?」
「来るの?」
「……行きたくない~」
「じゃあ研究所で待ってて!」
「そうする~」
即答だった。
◆
ニコラから渡された素材リスト。
『高純度魔石』
『雷角獣の角』
『月光草』
『魔導銀』
「……」
マドカが紙を見る。
「これ、全部必要?」
「うん~」
「どれも結構レアじゃない?」
「そうだね~」
「なんでそんなものが必要なの?」
「新しい魔道具作りたいから~」
「何を?」
「まだ決めてない~」
「決めてないの!?」
「素材を見てから考える~」
「天才の考え方って分かんない……」
リゼットが紙を見る。
「この素材なら、北の山に行けば見つかるでしょう」
「じゃあ行こう!」
「ええ」
◆
北の山。
「寒っ!」
マドカが震える。
「言ったでしょう」
リゼットは平然としている。
「寒い!」
「魔法を使えば?」
「……そうだった」
マドカが自分に防寒魔法をかける。
「快適!」
「便利ね」
「魔法ってすごい!」
「今さら?」
二人は山を進む。
◆
最初に見つけたのは月光草。
「これ?」
「そうね」
「簡単じゃん!」
マドカが採取する。
次に魔導銀。
「……あれ?」
「鉱石ね」
「掘るの?」
「ええ」
「面倒!」
「冒険者でしょう」
「そうでした!」
マドカがツルハシを振る。
カンッ!
カンッ!
カンッ!
「……」
「……」
「出ない!」
「もう少し」
「お姉ちゃんやって!」
「嫌よ」
「なんで!?」
「あなたの依頼でしょう」
「そういうところだけ厳しい!」
◆
そのとき。
山の奥から轟音。
「グルルル……」
「……」
マドカが振り返る。
「雷角獣?」
「ええ」
「素材リストにあったやつ!」
「そうね」
「倒していい?」
「どうぞ」
「よっしゃ!」
雷角獣が突進する。
マドカは正面から迎え撃つ。
「――せいっ!」
剣と角がぶつかる。
バチィッ!
「うわっ!」
電撃が走る。
「痛い!」
「気をつけなさい」
「先に言って!」
「言う前に突っ込んだでしょう」
「それはそう!」
雷角獣が再び突進。
マドカは横へ跳ぶ。
「今度は!」
剣を振る。
角を叩き落とす。
「取った!」
雷角獣が倒れる。
「やった!」
「素材として使えるわ」
「じゃあニコラさん喜ぶね!」
「ええ」
◆
帰宅。
「ただいまー!」
「おかえり~」
ニコラが顔だけ出す。
「素材!」
「おお~」
袋を開く。
「月光草……魔導銀……雷角獣の角……」
ニコラの目が輝く。
「最高~」
「でしょ!」
「これなら新しい魔道具作れる~」
「何作るの?」
「まだ決めてない~」
「また!?」
「素材を見てから決めるのが一番楽しいんだよ~」
ニコラは素材を一つずつ手に取る。
「……これとこれを組み合わせて~」
もう研究の世界へ入っている。
マドカがリゼットを見る。
「……始まった」
「ええ」
「私たち、素材集め係?」
「そうなりそうね」
「冒険者としては正しいのかな?」
「少なくとも、依頼はこなしているわ」
「ならいっか!」
マドカは笑った。
◆
翌日。
ギルド。
「また素材を?」
サリーが目を丸くする。
「はい!」
「最近、珍しい素材ばかり納品されていますけど……」
「山で採ってきた!」
「……そうですか」
サリーは記録を見る。
「依頼達成数もかなり増えていますね」
「うん!」
「この調子なら、そろそろ――」
サリーが言いかける。
マドカは身を乗り出した。
「ランクアップ!?」
「……まだです」
「なんで!?」
「実績と経験が必要です」
「うそぉ……」
マドカは机に突っ伏した。
リゼットが笑う。
「焦らないことね」
「Sランク遠い……」
「あなた、昨日まで薬草を採っていたでしょう」
「そうだけど!」
サリーは二人を見ながら。
小さく笑った。
まだ新人。
けれど。
確実に。
二人の名前はギルドの中で知られ始めていた




