宣伝って、必要じゃない?
「……これ、本当に使うの?」
ニコラが一枚の紙を持っている。
「使う!」
マドカは即答した。
「絶対?」
「絶対!」
「恥ずかしいんだけど~……」
「なんで!?」
紙に描かれているのは――
デフォルメされたニコラ。
二頭身。
大きな眼鏡。
白衣。
そして手には巨大な魔道具。
その横には。
『ニコラ印! 魔力節約型・自動温度調整器!』
「……私、こんなに頭大きい~?」
「可愛いでしょ!」
「私は学者なんだけど~」
「だから可愛くしたの!」
「学者は可愛くしなくていいよ~……」
リゼットが紙を覗き込む。
「よく描けているわね」
「でしょう!」
「ただ」
リゼットがニコラを見る。
「実物より少し幼く見えるわ」
「そこ~!?」
ニコラが頭を抱えた。
◆
「そもそも」
ニコラは椅子に座る。
「魔道具って、宣伝する必要あるの~?」
「ある!」
「欲しい人が買えばいいじゃん~」
「それじゃダメ!」
マドカが力説する。
「どんなに良い商品でも、知られなかったら売れない!」
「…………」
「例えばこの魔道具!」
マドカは温度調整器を持ち上げる。
「これ、めちゃくちゃ便利なのに、普通の人は存在すら知らない!」
「まあ……そうだね~」
「だから!」
マドカは紙に大きく書く。
『知ってもらう』
「まずこれ!」
「…………」
ニコラは少し考える。
「なるほど~」
「分かった?」
「うん~」
ニコラが頷く。
「つまり私が研究してる間に、あなたが勝手に宣伝してくれるんだね~」
「そう!」
「楽~」
「ニコラさん、そういうところだよ!」
「何が~?」
◆
翌日。
マドカは町の掲示板に漫画を貼った。
『魔道具って便利!』
一枚目。
デフォルメされた女性が暑さに苦しんでいる。
『あつい……』
二枚目。
ニコラが登場。
『そんなときはこれ~』
三枚目。
魔道具を起動。
『涼しい~』
四枚目。
女性が笑顔。
『すごい!』
最後。
ニコラが腕を組んでいる。
『詳しくは魔道具工房ニコラまで~』
「完璧!」
マドカは満足そうに頷く。
通りすがりの人たちが漫画を見る。
「なんだこれ?」
「魔道具の宣伝?」
「絵が上手いな」
「この女の子、可愛い」
「ニコラって誰?」
マドカは遠くから様子を見ていた。
「……見てる!」
リゼットも頷く。
「ええ」
「成功じゃん!」
「そうね」
◆
その日の夕方。
研究所。
「ニコラさん!」
「ん~?」
「今日、お客さん来た?」
「来た~」
「何人?」
「七人」
「すご!」
「魔道具買った人は三人~」
「三人!?」
マドカが飛び跳ねる。
「やった!」
「なんか~」
ニコラは売上を眺める。
「昨日まで一日一人来るかどうかだったのに~」
「でしょ!」
「……宣伝ってすごいね~」
「でしょ!」
「じゃあ明日もお願い~」
「もちろん!」
ニコラが何気なく言う。
「あと新しい魔道具作ったから~」
「え?」
「これも宣伝して~」
机の上に置かれた魔道具。
「…………」
マドカはそれを見る。
「ニコラさん」
「ん~?」
「私、広報担当になってない?」
「便利だから~」
「人を便利扱いしないで!」
リゼットが笑う。
「でも、あなたは絵を描くのが好きでしょう?」
「まあ……好きだけど」
「ならいいじゃない」
「うーん……」
マドカは新しい魔道具を見る。
そして。
「……漫画のネタになるなら、いいか!」
「決まり~」
「軽い!」
◆
数日後。
王都のあちこちに。
ニコラの魔道具を紹介する漫画が貼られるようになった。
その中には。
妙に可愛い二頭身ニコラ。
そして。
なぜか毎回隅っこに描かれている。
「便利って最高!」
という謎のマドカのキャラクターまでいた。
◆
研究室。
「……なんで私よりこの子のほうが人気なの~?」
ニコラが漫画を見ながら呟く。
「マドカだからじゃない?」
リゼットが答える。
「納得いかない~」
「じゃあニコラさんもキャラクター化する?」
「もうしてるじゃん~」
「もっと可愛く」
「嫌~」
「もっと美人に」
「……それなら考える~」
「そこは乗るんだ……」
マドカが呆れる。
しかし。
その日から少しずつ。
王都では――
「ニコラの魔道具は便利」
という評判が広がり始めていた




