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落内円は落ちている  作者: 七風


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攻略報酬

「そういえば……」


 マドカがふと思い出したように口を開いた。


「ゲンナイがダンジョンマスターに交代したのって、確か千八百年前だったよね。でも、実際にダンジョンにいたのは二千五百年くらいだって言ってなかったっけ?」


「そうね。転生したのが、そのくらい前だったはずよ」


 リゼットが答える。


「二千五百……」


 管理者の声が、わずかに揺れた。


「我は……生まれてから千二百年……」


「先輩すぎるな……」


 ぽつりと呟いた管理者に、マドカが首を傾げる。


「まぁ、後輩だよね……事情があったとしても、あの人、引きこもって発明してただけだし」


「マドカちゃん、千八百年閉じ込められてたって、普通は気が狂うよ?」


 ナナリーが少し真剣な顔で言う。


「確かに……」


 マドカも考え込んだ。


「ゲンナイに優しくしようかな」


「それがいいと思うわ」


 リゼットも苦笑する。


 そんな話をしていると、ふとアリシアが管理者へ尋ねた。


「それで、ダンジョンマスターさん。あなたは何をしにここへ来たのです?」


「うむ」


 管理者は、待っていましたとばかりに胸を張った。


「初攻略祝いにな。特別ボーナスを進呈に来たのだ。我が本気で取り組んだダンジョン製作に真っ向から立ち向かい、見事攻略した。その功績を称えよう!」


「なんか照れますね。えへへ」


 ナナリーが少し嬉しそうに笑う。


「ボーナス? 何かしら?」


「ふふ。聞いて驚くがよい。まずは武器だ」


 管理者が堂々と宣言する。


「各々に合わせた、色欲ダンジョンのレジェンド武器を――」


「マジで!?」


 マドカの目が輝いた。


「それは嬉しいのですが……」


 アリシアが自分の武器を見ながら、少し困ったように続ける。


「私たち、武器は相当強いと思うのですけど」


「アリシア、まずは見せてもらおう?」


 マドカが期待に満ちた顔で促す。


「私、専用武器みたいなの持ってないです!」


「では、そこの白髪。何を得意とする?」


「刀! これ!」


 マドカが愛用の刀を見せる。


「次は金髪の剣士は?」


「レイピアと銃ですけど」


「そこの緑髪は?」


「え? なんだろう……聖女とか言われてますけど、特に指定はないです!」


「ほう……」


 管理者は少し考えた。


「銀髪は?」


「これ、世界樹の杖なのだけど……これよりいいものなのかしら」


「それを言うなら、この刀、ヒヒイロカネって言ってた!」


 マドカが付け加える。


「私もヒヒイロカネのレイピアですね」


 アリシアまで続けた。


「…………」


 管理者が固まった。


「みんな、そんな物を!?」


 思わず声が裏返る。


「ヒヒイロカネ……世界樹……。貴様ら、どういうレア素材で作っているのだ!!」


「いや、ゲンナイに素材をもらっただけだし……」


 マドカが何でもないことのように答える。


「ゲンナイは二千五百年分のポイントを自由に使えるようよ?」


 リゼットが補足すると、管理者はしばらく黙り込んだ。


「……歴史が違うというのか……」


「結局、何がもらえるのでしょう?」


 アリシアが話を戻す。


「我の素材で一番のレアは、ダマスカスだ」


「ダマスカス!?」


 マドカが反応する。


「マドカちゃん、聞いたことあるね!」


「うん! ゲームでよくあるやつ!」


「マドカ、ダマスカスはヒヒイロカネより下よ?」


「え」


 マドカが少し固まる。


「マジかー……」


 しかし、すぐに笑った。


「でも、かっこいいよね!」


「もう……」


 ナナリーが苦笑する。


「何か貴様らが喜ぶようなもの……」


 管理者が頭を抱えるように考え込む。


 するとリゼットが、ふと何かを思い出した。


「そうね。ゲンナイの交換できるポイントは、怠惰の大陸固有で、ゲンナイのダンジョンで取れるもののみという制約があるみたいなの」


「ならば!」


 管理者が顔を上げる。


「色欲特有の素材などがよいのではないか?」


「それも嬉しいけど、レア物がいいなー!」


「もう! マドカちゃんったら!」


「だって、せっかく初討伐だったらしいし!レジェンド武器が素材に格落ちした感じじゃん!」


「た、確かにそうですね……」


「アリシアさんまで!」


「では……そうだな」


 管理者はしばらく考えた末、ようやく頷いた。


「詰め合わせセットでよいか?」


「レアな詰め合わせ!?」


 マドカの目が再び輝く。


「おもしろそう!」


「あとで鑑定するまで楽しみにしておくわ」


 リゼットも楽しそうに笑った。


「それと、緑髪」


「はい?」


 ナナリーが顔を上げる。


「貴様は職は魔法使いか?」


「ええっと……攻撃魔法も使える、吟遊詩人のような感じでしょうか」


「ほう!」


 管理者は納得したように頷く。


「では、ハープやリュートなどはどうかね?」


「あの……歌って踊るので、それはちょっときついかな」


「なるほど」


 管理者は再び考える。


「では、踊りを踊るのであれば、魅力を上げる指輪などはどうだ? 観客をさらに喜ばせられるようになるぞ」


「あ、それいいかも! ナナリーの人気アップ!」


「それは少しうれしいかもです。」


 ナナリーも嬉しそうに頷いた。


「この子の魅力が上がるなら、こちらとしても助かるわね」


 リゼットも微笑む。


 その言葉に、ナナリーが少し考えた。


「んー……でも、アリシアさんの魅力カンストって、人に好かれるタイプですよね?」


「自分では、よく分かりませんが……」


「なるほど」


 管理者がナナリーを見る。


「単純な好感ではなく、憧れや尊敬を抱かせるような魅力はどうかね?」


「過度ではない程度でお願いします。襲われたりストーカーとか怖いので。」


 ナナリーが苦笑する。


「ふふ。では、好感度アップの指輪を送ろう」


「ありがとうございます!」


 ナナリーが頭を下げる。


「では、さらばだ!攻略、見事であったぞ!」


 そう言い残すと、光の人影はゆっくりと消えていった。


 しばらくして。


「……ダンジョンマスターって、濃いな」


 マドカがぽつりと呟いた。


「うん……」


 ナナリーも頷く。


「かなり濃かったですね」


「突然現れて、レジェンド武器を配ろうとして……最後は素材の格で落ち込んでいましたものね」


 アリシアまで思い返している。


 リゼットは小さく笑った。


「でも、悪い人ではなさそうね」


「それはそう」


 マドカも頷く。


「ゲンナイと仲良くなれそうだったし」


「そこはもう、仲良くなるんじゃないかしら」


 リゼットが苦笑する。


 こうして。


 色欲のダンジョン攻略は、本当に終わったのだった。


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