聖女とマネージャー エキドナ邸へ
翌日。
マドカはナナリーと、そのマネージャーをエキドナ邸へ招いていた。
応接室に通された二人を前に、エキドナの面々が集まっている。
昨日のライブのときとは違う。
今度は、ちゃんと話すための時間だった。
「まず、マネージャーさんは……生まれ変わりっていう概念、知ってるかな?」
マドカが尋ねると、マネージャーは少し考えてから頷いた。
「ええ。輪廻転生という言葉なら、色欲の教会でも聞いたことがありますね」
「そっか」
マドカはナナリーを見る。
「私は前世、地球っていう世界で生きてきた記憶があるの。九歳くらいから少しずつ記憶が戻ってきて、今はエキドナのみんなと活動してるの」
「……」
マネージャーは黙って聞いている。
「それで、ナナリーにも私と同じ記憶があるって、昨日気づいたんだ」
「そうなんですか? 聖女様」
「ええ」
ナナリーが小さく頷く。
「言ったところで、誰にも分からないと思っていたんです。でも、マドカちゃんは私の前世の歌い手としての活動を知っていてくれて……すぐに私だって気づいてくれたの」
「なるほど……」
マネージャーが感心したようにナナリーを見る。
「聖女様は、前世も合わせると、とても長い歌手活動をしていたのですね」
「そんな、大げさな……」
「いえ。本番に強いのも、私、納得です!」
ナナリーが少し照れたように笑う。
すると、マドカがすぐに口を挟んだ。
「前世なんて関係ないよ!」
「マドカちゃん?」
「私が応援してるのは、聖女様だからですもの!」
「……ふふ」
ナナリーが嬉しそうに笑う。
その横では、リゼットがじっとマドカを見ていた。
「何かコソコソしてると思ったら、マドカったら。それで昨日、様子がおかしかったのね」
「いや、お姉ちゃん。あの場でみんなを巻き込んだら、ナナリーが怖いでしょ!」
「ふふ。まぁ、そうね」
リゼットは納得したように笑ってから、改めてナナリーへ向き直った。
「それじゃあ、改めて。聖女ナナリー……と」
視線がマネージャーへ移る。
「マネージャーさん。えっと……名前、なんだったかしら?」
「失礼しました」
マネージャーが姿勢を正す。
「私は聖女ナナリー様の仕事のスケジュールを管理しています。マネリーです」
「マネリーさんね」
リゼットが頷く。
「大賢者様にお目にかかれて光栄ですわ」
「ええ。私がエキドナの代表、リゼットよ」
リゼットは穏やかに微笑んだ。
「よろしくね、マネリーさん」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
ナナリーもその様子を見ながら、少しだけ肩の力を抜いた。
少なくとも――ここは、昨日まで想像していたような怖い場所ではなさそうだった。




