冒険者配信
今日も、ゴールの外では冒険者たちが活動している。
その中に、見慣れた四人組がいた。
マドカ、ティニア、アリシア、そしてリゼット。
四人の前を歩くマドカが、手元の端末を眺めながら口を開く。
「この辺に、珍しいモンスターが出るらしいよ」
『お、今日はレアモン探し?』
『エキドナの冒険者活動きた』
『またマドカちゃんか』
「うん。まあ、暇つぶし」
「暇つぶしって言うなー!」
すかさずティニアが横から割り込んだ。
「せっかく配信してるんだから、もっとこう……冒険してます! って感じにしようよ!」
「冒険者活動はちゃんとやってるよ?」
「そこじゃないの!」
『ティニア今日もうるせぇw』
『開始三十秒でうるさい』
『いつもの』
『ティニアいないと寂しいから必要』
「ほら見て! みんな私を求めてる!」
「最後の一人だけじゃない?」
「マドカひどい!」
ティニアが頬を膨らませる。
アリシアが苦笑しながら端末を確認した。
「でも、今日は視聴者の方から情報をいただいていますよ。少し先に、見たことのない魔物が出たという話がいくつか来ています」
「じゃあ、それ探そ」
「うん。見つかったら倒しておきましょう」
リゼットは周囲を見回した。
「……それにしても、この辺りは本当に難易度が低いわね」
『リゼットさんまた言ってるw』
『強者の感想』
『この人基準にしたら駄目だろ』
「だって、本当に弱いもの」
少し離れた場所から、小型の魔物がこちらを見つけて走ってくる。
リゼットがちらりと見る。
次の瞬間には、魔物は地面に転がっていた。
「ほら」
「ほら、じゃないよ!」
ティニアが叫ぶ。
「まだ何もしてないじゃん!」
「近づいてきたから」
「だからって一瞬で倒すな!」
『草』
『リゼットさんにとっては散歩』
『難易度低いわね』
『つまんない敵しかいないわ』
「誰の真似よ!」
ティニアが画面に向かって突っ込む。
「リゼットじゃん!」
「私そんな言い方しないわよ」
「してるよ!」
「してないわ」
アリシアが笑いをこらえながら歩き出した。
「まあまあ。今日はレアモンスターを探しながら、皆さんの質問にも答えていきましょう」
『質問いい?』
『最近ゴールってどうなってる?』
『王都との転移陣っていつできるの?』
「それは……」
アリシアが少し考える。
「もうかなり進んでいますね。完成すれば、王都からゴールまで簡単に移動できるようになる予定です」
『マジか』
『旅行感覚になるじゃん』
『ゴール行ってみたい』
『転移って高いんじゃないの?』
「そこはエキドナに聞いてみないと」
四人の視線がマドカへ向く。
「一日分の食費くらいじゃなかったっけ?」
「え?」
「転移するだけなら、それくらいでいいって言ってたよ」
『安っ』
『交通費どうなってんだよw』
『王都から一瞬で来てそれ?』
『ゴール人増えるぞ』
「まあ、増えてもいいんじゃない?」
マドカはあっさり答えた。
「町、広くなってるし」
「エキドナは町を広げるのは嫌がってなかった?」
「うん。だから土地は買ってある」
『解決方法が力技』
『土地買ったのかよ』
『エキドナらしい』
そんなコメントを眺めながら歩いていると、ティニアが突然立ち止まった。
「ねえ!」
「ん?」
「私にも質問きてる!」
ティニアが端末を覗き込む。
「『ティニアは何歳ですか?』だって!」
「秘密!」
『即答w』
『何歳なんだよ』
『妖精だから分からん』
「じゃあ『好きな食べ物は?』!」
「いっぱい!」
「雑!」
「いっぱいあるんだから仕方ないでしょ!」
『ティニアらしい』
『食いしん坊妖精』
『次、好きな人』
「いない!」
『早いw』
『じゃあマドカ』
「なんで!?」
「マドカは妹みたいなものだから!」
「私はペットじゃないよ」
「誰もペットとは言ってない!」
またティニアが騒ぎ始める。
その横でリゼットは、何事もなかったように周囲を見ていた。
「……あら」
「どうしたの?」
マドカが振り返る。
「少し先に何かいるわ」
四人が足を止める。
草むらの向こう。
普通の魔物とは明らかに違う、銀色の毛並みがちらりと見えた。
「いた?」
「たぶんね」
アリシアが小声になる。
「視聴者の方が言っていた魔物かもしれません」
『おおおお』
『レアモンきた?』
『ティニア静かにしろ』
「なんで私だけ!?」
『お前が騒ぐと逃げそう』
「そんなことしないし!」
「すると思う」
「マドカまで!?」
ティニアが抗議している間に、銀色の影が草むらから飛び出した。
「いた!」
アリシアが声を上げる。
マドカが一歩前へ出る。
リゼットはその場に残ったまま。
ティニアは――。
「うおおおお! レアモンだあああ!」
『うるせぇww』
『逃げるぞw』
『始まった』
銀色の魔物が一瞬こちらを見て、逃げようとする。
「ほらぁ!」
「ティニアのせい」
「私のせいじゃない!」
マドカが走り出す。
「待ってー!」
アリシアも追いかける。
リゼットは二人を見送りながら、小さく息を吐いた。
「……まあ、たまにはこういうのも悪くないわね」
そして、ゆっくりと後を追った。
『リゼットさん楽しそう』
『今日も平和』
『こういう雑談配信好きだわ』
『エキドナの日常見られるのいいな』
『次は何の話するんだろ』
そんなコメントが流れる中。
四人は、逃げていく銀色の魔物を追いかけていった。




