↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落内円は落ちている  作者: 七風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
152/516

モンバト大会

 モンスターバトル大会は、予想以上の盛り上がりを見せていた。


 参加者たちが次々と勝ち上がり、観客席からは歓声が途切れない。


 実況席ではニコラが、いつもののんびりした調子で実況を続けている。


「おお~、これは意外な展開だねぇ~」


 隣の解説役が、それらしい分析を加える。


 予選、そして準々決勝。


 マドカも、ガブリエルも順調に勝ち進んでいった。


 そして迎えた準決勝。


 第一試合は――


「さあ、準決勝第一試合! ガブリエル選手対――トロイ王!」


「おおおおおっ!」


 王族同士の対戦に、会場が大きく沸いた。


「王様だからといって、手加減はしませんわよ!」


「もちろんだ。大会なのだからな」


 二人とも、普段とは違う真剣な表情。


 そして始まった試合は、予想以上に激しいものとなった。


 しかし最後は、ガブリエルが勝利。


「やりましたわー!」


「……負けたか」


 王は悔しそうに笑いながら、ガブリエルと握手を交わした。


「見事だった」


「ありがとうございますわ!」


 そしてもう一つの準決勝。


「続いては、マドカ選手対リゼット選手だよぉ~」


「あら」


 リゼットが少しだけ目を細める。


「まさか、ここで当たるとは思わなかったわね」


「私も」


 マドカはいつも通りだった。


 そして――試合開始。


 こちらも一進一退の攻防が続いた。


 リゼットは長年の経験を活かし、マドカの癖をよく知っている。


 マドカもまた、リゼットがどう動くかを知っている。


「おお~、これは読み合いだねぇ~」


 ニコラの実況が続く。


 そして最後は――


「勝者、マドカ選手!」


 会場が沸いた。


「よく頑張ったわね」


「お姉ちゃんもね」


「ええ」


 こうして決勝の組み合わせが決まった。


 マドカ。


 そして――ガブリエル。


 ニコラが実況席から立ち上がる。


「それじゃあ、決勝だよぉ~」


 そこで、解説席の人物が交代した。


 席についたのは、先ほどまで戦っていたリゼットだった。


「……負けた選手が解説ね。」


「マドカのこと、よく知ってるからねぇ~」


「そういうことね」


「それじゃあ、決勝戦の選手紹介だよぉ~!」


 会場に歓声が響く。


 先に姿を現したのは、ガブリエル。


 いつもの姿とは少し違う。


 赤を基調としたドレス。


 きっちりと整えられた縦ロール。


 まるで今から舞踏会にでも向かうような格好だ。


 ただ、その表情は完全に戦闘モードだった。


「皆様、お待たせしましたわ!」


 大きく手を広げる。


「この決勝戦――本気でいきますわよ!」


 歓声がさらに大きくなる。


 そして反対側から、マドカが歩いてくる。


 服装はいつも通り。


 七分丈のナイロンパンツ。


 そしてTシャツ。


 胸元に、大きく文字が書かれている。


 ――『大丈夫 僕 最強だから』


「…………」


 リゼットが沈黙した。


「……マドカ」


「なに?」


「そのTシャツは、今日のために?」


「ううん。普通に着てきた」


「そう……攻めてるわね」


 ニコラがTシャツを見ながら、のんびりと言う。


「マドカ、今日は随分と強気だねぇ~」


「そう?」


「それ、ガブちゃんに見せるためじゃないのぉ~?」


「違うよ」


 マドカは首を傾げる。


「大丈夫。僕、最強だから」


「それを言うのね……」


 リゼットが小さくため息をついた。


 向かいでは、ガブリエルが拳を握っている。


「……マドカ」


「ん?」


「まずは一勝ですわね!」


「うん。勝てたらね?」


 マドカも笑う。


「じゃあ、やろっか」


 審判が両者を確認する。


「決勝戦――開始!」


 最初のモンスターが、それぞれのフィールドへ飛び出した。


「おお~っと! マドカ選手、最初はカーバンクルだよぉ~!」


 小さな身体。


 愛らしい姿。


 対するガブリエルのモンスターは――


「そしてガブリエル選手は……これは大きいねぇ~!」


 巨大な狼。


 フェンリルを思わせる、巨大な獣だった。


 観客席からどよめきが起こる。


「これは……」


 リゼットが静かに口を開く。


「正面からでは、カーバンクルに勝ち目はほとんどありませんね」


「だよねぇ~」


「ええ。ですが――」


 リゼットがカーバンクルを見る。


「マドカが、正面から戦わせるとは限りません」


 開始直後。


 巨大な獣が一気に距離を詰める。


「速い!」


 ニコラが叫ぶ。


 カーバンクルが跳ぶ。


 爪が空を切った。


 その瞬間――


「ん?」


 フェンリルの動きが、一瞬だけ止まった。


「おっとぉ?」


 フェンリルが右へ向く。


 何もない。


 今度は左。


 そこにも何もいない。


「どうしたんだろうねぇ~?」


「幻覚です」


 リゼットが即答する。


「カーバンクルのスキルでしょう」


 フェンリルが唸りながら周囲を見回す。


 見えているものが、現実とは違う。


 わずかな隙。


 カーバンクルがそこへ飛び込む。


「今だよぉ~!」


 攻撃。


 だが――


 フェンリルの身体が弾かれるように動いた。


「うわっ!」


 カーバンクルが吹き飛ぶ。


「まだまだ!」


 ガブリエルの指示に、フェンリルが追撃する。


 幻覚によって動きを乱されても、圧倒的な身体能力そのものは変わらない。


「カーバンクル、逃げる!」


 マドカが叫ぶ。


 だが、間に合わない。


 フェンリルが大きく吠えた。


 次の瞬間――


 衝撃波。


 カーバンクルの小さな身体が、まっすぐ後方へ吹き飛ばされた。


「あっ!」


 観客席から声が上がる。


 そして――


 場外。


「勝者、ガブリエル選手!」


「やりましたわ!」


 ガブリエルが拳を握る。


「まずは一勝ですわね!」


 マドカは場外に落ちたカーバンクルを見て、少しだけ笑った。


「うん。強いね」


 そして次のモンスターを取り出す。


「じゃあ――」


 フィールドに現れた姿を見た瞬間。


 会場の空気が変わった。


「……ドラゴン?」


 誰かが呟いた。


 次の瞬間。


「ドラゴンだーっ!」


 観客席が一気に沸いた。


 巨大な翼。


 鋭い爪。


 大きな牙。


 そして――


 向かい側にも、同じように巨大な影が現れる。


「えっ……!」


 ニコラが声を上げる。


「ガブちゃんもドラゴンだよぉ~!」


「これは予想してなかったわ。」


 リゼットも思わず身を乗り出す。


「両者とも切り札を残していたようよ」


 マドカとガブリエルが互いを見る。


 そして――


「行きますわよ!」


「うん!」


 二頭のドラゴンが同時に飛び出した。


 炎と炎。


 爪と爪。


 牙と牙。


 空中で何度もぶつかり合う。


「すごい!」


「真正面からやり合ってるよぉ~!」


 ブレスが交差する。


 片方が避ける。


 もう片方が追う。


 体当たり。


 爪。


 魔法。


 どちらも一歩も引かない。


「これは……」


 リゼットが呟く。


「互角ね」


 長い戦いになった。


 そして最後。


 二頭が同時に空中へ舞い上がる。


「決めますわ!」


「こっちも!」


 二頭が真正面から激突した。


 巨大な衝撃音。


 砂煙が舞う。


 観客が息を呑む。


 そして――


 砂煙の中から立ち上がったのは、マドカのドラゴンだった。


「勝者、マドカ選手!」


 大歓声。


 ガブリエルは悔しそうに拳を握った。


 だが、すぐに顔を上げる。


「見事ですわ……!」


 マドカは頷いた。


「ガブちゃんも強かったよ」


 そして――


 最後の一体。


 ガブリエルがモンスターデバイスを掲げた。


「ふふっ」


 その表情には、まだ自信が残っている。


「最後は、これですわ!」


 フィールドに現れたのは、一羽の巨大な鳥だった。


 全身を炎が包んでいる。


「おお~!」


 会場から歓声。


「これは……?」


 ニコラが首を傾げる。


「最難関ダンジョンでゲットしましたの!」


 ガブリエルが胸を張る。


「マドカも知らないモンスターのはずですわ!」


 マドカは炎の鳥を見る。


 少し考える。


「そうかー」


 そしてガブリエルを見る。


「ガブちゃん、本気なんだね?」


「もちろんですわ!」


「そっか」


 マドカがモンスターデバイスを操作する。


「じゃあ――これだ」


 フィールドが揺れた。


 炎の鳥とは比べものにならないほど巨大な影が現れる。


 観客席が静まり返る。


 炎の向こうから現れたのは――


 巨大な精霊獣。


「……なに、あれ」


 ニコラが呟く。


 リゼットも目を見開いた。


「まさか……」


 マドカが呼び出したのは、最難関ダンジョン第三十層。


 その最奥に存在するラスボス。


 巨大な精霊獣――イフリート。


「イフリート……!」


 リゼットの声に、会場がざわめいた。


「さ、三十層……?」


「そんなの、いたのか!?」


 ガブリエルも目を見開く。


「……なるほど」


 そして――笑った。


「そこまでですのね!」


「うん」


 マドカも笑う。


「勝負しよう」


 開始の合図。


 炎の鳥が飛び上がる。


 翼から炎が噴き出す。


 無数の火球がイフリートへ飛んでいく。


「火には火ですわ!」


 ガブリエルが叫ぶ。


 爆発。


 爆発。


 爆発。


 フィールドが炎に包まれる。


「どうだぁ~!?」


 ニコラが実況する。


 しかし――


 炎の中から、巨大な腕が伸びた。


「え?」


 イフリートの拳が、炎の鳥を捉える。


「ぐえっ!」


 そのまま地面へ叩きつけた。


「肉弾戦だよぉ~!」


「同じ火属性でも、戦い方がまるで違いますね」


 リゼットが解説する。


「フェニックス型のあのモンスターは、火を主体とした飛行型。一方、イフリートは――」


 イフリートが拳を振り抜く。


「――あの巨体そのものが武器です」


 炎の鳥が飛び上がる。


 上空から炎を落とす。


 イフリートも炎をまとった。


 そして――


「来ます!」


 イフリートの周囲に巨大な魔法陣が浮かぶ。


「上級魔法だよぉ~!」


 炎が一気に膨れ上がる。


 逃げる炎の鳥。


 しかし、その先にも炎。


 左右から挟み込まれる。


 そして――


 巨大な炎の塊が炸裂した。


「きゃあっ!」


 ガブリエルが思わず声を上げる。


 煙の向こう。


 炎の鳥が、まだ飛んでいる。


「まだですわ!」


 ガブリエルが叫ぶ。


「最後まで――!」


 炎の鳥が一直線に突っ込む。


 イフリートも迎え撃つ。


 巨大な拳。


 炎をまとった鳥。


 二つの炎が真正面からぶつかった。


 轟音。


 フィールドが揺れる。


 観客席からは、誰も声を出さない。


 そして――


 ゆっくりと、炎の鳥が落下した。


 地面に倒れる。


 動かない。


「……勝者」


 審判が確認する。


「マドカ選手!」


 一瞬の静寂。


 そして――


「うおおおおおおおおっ!」


 会場が爆発したような歓声に包まれた。


 マドカはイフリートを戻す。


 ガブリエルは、しばらく倒れたモンスターを見つめていた。


 やがて――


「……負けましたわ」


 悔しそうに呟く。


 だが、次の瞬間には顔を上げた。


「マドカ!」


「ん?」


「もう一回やりたいですわ!」


 マドカは少し驚いてから、笑った。


「いいよ」


「本当ですの!?」


「うん。今度はもっと強いの連れてきてね」


「望むところですわ!」


 実況席では、ニコラが笑っている。


「というわけでぇ~、優勝はマドカだよぉ~!」


 隣ではリゼットが静かに頷いた。


「……まあ、マドカだからね」


「リゼット、それで納得しちゃうんだぁ~」


「ええ」


 リゼットはフィールドにいるマドカを見る。


「ただ――」


「ただ?」


「ガブリエルも、かなり強くなったわ」


 その言葉に、ニコラが笑った。


「じゃあ次の大会は、もっと面白くなりそうだねぇ~」


 フィールドでは、すでにガブリエルがマドカへ駆け寄っていた。


「次は絶対に勝ちますわよ!」


「うん」


「その余裕そうな顔……!」


「え?」


「絶対に負けませんわ!」


「分かった分かった」


 決勝戦は終わった。


 しかし――


 二人の勝負は、どうやらこれで終わりではないらしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。