王の視察6
総合エキドナ館の一角。
そこには、武器や防具が並べられていた。
「……これは」
トロイが足を止める。
剣。
槍。
盾。
鎧。
どれも王国で一般的に使われているものとは、どこか雰囲気が違う。
「グレタが作ったんだよ」
「ほう」
トロイは展示されている剣を手に取った。
「軽いな」
「そりゃそうだ」
すぐ隣からグレタの声が飛んでくる。
「重けりゃいい武器ってわけじゃねぇからな」
「だが、軽いだけでは耐久性が落ちるのでは?」
「普通ならな」
グレタは別の剣を手に取る。
「これは軽さを優先してる。こっちは耐久性。そっちは切れ味。使う奴によって変える」
「同じ剣でも?」
「ああ」
トロイは少し驚いた。
「武器というのは、そこまで使い手に合わせるものなのか?」
「私はそうしてぇ」
グレタは当然のように答えた。
「筋力も違えば、動きも違う。得意な距離も違う。振り方だって違うんだ。同じ武器を全員に渡せばいいってもんじゃねぇ」
「なるほど……」
トロイは展示品を見回した。
「王宮騎士にも作れるか?」
「作れるぞ」
「では――」
「ただし」
グレタが言葉を挟む。
「欲しい騎士がいるなら、ある程度の実力を見せてもらわねぇとな」
「実力を?」
「ああ」
グレタは剣を戻した。
「どんな戦い方をするのか分からねぇと、どういうコンセプトにすればいいのか決められねぇからな」
「コンセプト……」
「武器に何をさせたいのかって話だ」
グレタは指を折る。
「速さを生かすのか、力を生かすのか。防御を固めるのか。一撃を重くするのか。相手を崩すのか」
「なるほど」
「本人を見なきゃ分からねぇ」
トロイは感心したように頷いた。
「では、腕の立つ騎士を連れてくればいいのだな?」
「そういうことだ」
「弱い騎士では駄目なのか?」
「駄目だ」
即答だった。
「弱い奴に武器作りたくねぇ」
「……そこまで言うか」
「武器がもったいねぇだろ」
グレタは真顔だった。
「せっかく作るなら、ちゃんと使いこなせる奴に使ってほしい」
「……職人だな」
「当たり前だろ」
マドカが横から口を挟む。
「グレタは武器のことになると厳しいよ」
「武器だけじゃねぇぞ」
「そうだっけ?」
「強い奴は好きだ」
「そこは知ってる」
トロイが思わず笑った。
「なるほど。では、王宮騎士の中から何人か選んでおこう」
「連れてくるなら、その時はちゃんと戦ってもらうぞ」
「分かった」
「王様でも特別扱いはしねぇからな」
「私が戦うわけではないだろう?」
「それもそうだな」
グレタは少し考えてから、展示品の鎧を指差した。
「あと、防具も同じだ。着る奴を見ねぇと調整できねぇ」
「防具もか」
「ああ。体格だけじゃねぇ。動き方が重要なんだ」
トロイは鎧を見る。
ただ頑丈に作られているだけではない。
関節の動きを邪魔しないように作られた構造。
重量を分散させる工夫。
そして、戦い方に合わせて形そのものを変えるという発想。
「……王宮騎士団の装備も、見直す余地がありそうだな」
「そりゃ本人次第だ」
グレタは肩をすくめた。
「強い奴なら面白ぇ武器が作れそうだ」
「面白い、か」
「武器作りってのは、そういうもんだろ」
トロイはもう一度、展示されている武器を眺めた。
王宮にも優れた職人はいる。
だが、ここにある武具は、単純に品質が高いというだけではない。
使い手そのものを見て、その人間のためだけに作る。
そういう考え方なのだろう。
「分かった。祭りが終わったら、何人か連れてこよう」
「おう」
「その時は頼む」
「実力次第だ」
「最後までそこは変わらないのだな」
「変える理由がねぇからな」
トロイは苦笑した。
王宮騎士団にとっては、少々厳しい面接になりそうだった。




