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落内円は落ちている  作者: 七風


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祭りの準備

 情報塔から祭りの告知が始まった翌日。


「……で、私たちもなんかしてあげたいねー」


 マドカがテーブルに頬杖をついて言った。


「お祭りなんだから、エキドナも何か出した方がいいと思う」


「そうね」


 リゼットが頷く。


「いつも町の人たちにはお世話になっているもの」


「じゃあ、食べ物!」


「まずそれなのね」


「だって祭りだよ?」


 マドカが当然のように言う。


「ホットドッグとか、オムライスとか。あとパフェ!」


「パフェなら……」


 ヒナタが少し考える。


「私の果樹園の果物、使えませんか?」


「使おう!」


 マドカが即答した。


「アイスも乗せたい!」


「アイスですか?」


「うん。お姉ちゃん作れる?」


 リゼットが少し考える。


「牛乳と卵と……果物をすりつぶして凍らせるのだったかしら」


「そんな感じ!」


「なら、凍らせながら混ぜ続ければいいんじゃない?」


「ぐるぐる回す?」


「ええ」


「じゃあ作れるね!」


「……本当にそれでいいのかしら」


 ヒナタが笑う。


「美味しくなればいいんじゃないですか?」


「そうそう!」


 マドカが頷いた。


「じゃあヒナタ、果物お願い!」


「はい。どれがいいですか?」


「全部試してみよう!」


「ふふ、分かりました」


「……あ」


 アリシアが手元の紙を見る。


「果物以外にも、牛乳、卵、砂糖、小麦、肉……結構必要になりますね」


「お願いできる?」


「ええ。商業ギルドに聞いてみます」


「助かる!」


「ただし」


 アリシアがマドカを見る。


「これ以上、思いつきでメニューを増やさないでくださいね?」


「……はい」


「今の間は何ですか?」


「なんでもないよ!」


     ◇


「じゃあ俺は装備を作る」


 グレタが言った。


「新しいの?」


「新しいのだ。せっかくだから全員分、作り直す」


「祭りで使うの?」


「使うし、展示もする」


「展示室作る?」


「当然だ」


 グレタが即答する。


「ただ並べるだけじゃ駄目だからな。ちゃんと見せる場所がいる」


「ファッションショーとかもできそう」


「それもいいな」


 グレタの目が少し輝いた。


「だが売り物じゃねぇぞ」


「えー」


「非売品だ」


「グレタの装備、欲しい人いそうなのに」


「俺が作った専用装備だ。簡単に売れるか」


「そっかー」


「それより材料だ。ヒヒイロカネが欲しい」


「ゲンナイに聞いてみようか」


「ああ」


 マドカが映像装置を起動する。


『あ?』


「ゲンナイ、ヒヒイロカネくれ」


『おいおい、俺は素材屋じゃねぇぞ』


「グレタが刀作るんだって」


『刀でヒヒイロカネか? 玉鋼ならよく聞くが』


「試作だって」


『まあいい。持ってけ』


「ありがとー!」


『で、祭りはどうなってんだ?』


「まだ準備中」


『なら内装見せろ』


「内装?」


『ああ。どうせなら商品がよく見えるようにしろ。棚の位置も変えろ』


 クライブが横から顔を出す。


「それ、俺が運ぶのか?」


『お前以外に誰がいる?』


「……」


「クライブお願い!」


「はいはい」


     ◇


「私は化粧品を出そうかしら」


 カトリーヌが言った。


「化粧品?」


「洗髪剤とか、髪を綺麗にするもの。あとは髪色を変える薬も面白そうね」


「それいい!」


「需要はあると思うわ」


「じゃあお願い!」


「ええ」


 カトリーヌが頷く。


「でも、これだけ商品が増えるなら、店の中をちゃんと分けないと大変ね」


「この子たち、かわいい~。」


「……ニコラ」


「なに~?」


「なんでそんなに猫いるの?」


「作ったから~」


「作りすぎじゃない?」


「かわいかったから~」


 ニコラの足元には猫が何匹もいる。


「これ、配る~?」


「待って!」


 マドカが止める。


「それ、お祭りに使おう!」


「お祭り?」


「猫カフェ!」


「猫カフェか~」


 ニコラは猫を見る。


「じゃあ私たちでやる~?」


「うん!」


「制服でいいじゃん~?」


「メイド服!」


「なんでメイドになるの~?」


「……」


「……」


「制服でもいいか」


「でしょう~?」


 リゼットがため息をつく。


「猫カフェをするなら、建物はこちらで考えるわ」


「お姉ちゃんお願い!」


「しょうがないわね。猫が走り回れるようにしておくから安心なさい」


「やった!」


     ◇


「エキドナ館、結構大きくなりそうですね」


 アリシアが呟いた。


「そう?」


「猫カフェに装備展示、化粧品、食品……」


「ゲンナイのもあるよ」


 マドカが言う。


『俺のも置け』


「だって」


 アリシアは少し考える。


「……もう普通のお店じゃないですね」


「じゃあ大きいお店にしよう!」


「簡単に言いますね……」


 その横で、エレノアが笑った。


「それなら販売のお手伝いも必要ですね」


「エレノア、手伝ってくれる?」


「もちろんです。城のメイドたちにもお願いしてみますね」


「いいの?」


「ええ。私も当日は皆さんと一緒に働きますから」


「助かるー!」


「来客対応もありますし、貴族の方がいらしたら私が対応しますね」


「ありがとう!」


     ◇


「じゃあ、モンバト部も手伝ってね」


「ええ!?」


「大会までまだ時間あるでしょ?」


「ありますけど!」


「暇じゃん」


「私達、貴族なんですけど!」


「知らねぇ。王女も働いてるぞ」


「えっ」


 エレノアがにこりと笑った。


「はい。私も働きますよ」


「……」


「ほら」


 マドカが指差す。


「王女が働いてる」


「王女殿下を基準にしないでください!」


「ガブちゃんは?」


「もちろんですわ!」


 ガブリエルが元気よく手を挙げた。


「ほら、やりますわよ!」


「なんで第二王女まで乗り気なんですの!?」


「お祭りですもの!」


 ガブリエルは楽しそうにモンバト部を連れて行った。


「こちらを運びますわ!」


「ちょっと待ってください!」


「次はあちらですわ!」


「待ってー!」


 その様子を見て、クライブがぽつりと言った。


「……俺、まだ仕事増える?」


 マドカは少し考える。


「んー……」


 そして映像装置を見る。


『クライブ』


「はい」


『祭り、見てぇんだよ』


「……」


『外に出られねぇからな』


 クライブはしばらく黙った。


「……分かったよ」


 映像装置を持ち上げる。


「俺が連れて歩けばいいんだろ?」


『そういうことだ』


「俺、祭り見に来たんだけどな」


「ゲンナイも見たいんだよ」


「……まあ、いいか」


 こうして、エキドナの祭りの準備は始まった。


 まだ客は一人もいない。


 だからこそ、今のうちなら多少無茶をしても間に合う。


 ――そう、誰もが思っていた。


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