エキドナからの告知
完成したばかりの巨大な塔。
その中央には、巨大なクリスタル製の画面が設置されている。
今日は、その試運転の日だった。
「じゃあ、まずはPV作ろうか」
ニコラが言った。
「PV?」
「せっかく大きな画面なんだから、最初はエキドナの宣伝映像でいいでしょ~」
「宣伝……」
マドカは少し考える。
「まあ、試運転ならいいんじゃない?」
こうして、エキドナのPVが作られることになった。
まず画面が暗転する。
ドォン……!
魔力が爆発する。
リゼットが杖を振る。
巨大な魔法陣が展開され、無数の魔法が一斉に敵へ叩き込まれる。
画面いっぱいに光が広がる。
そして――。
**『大賢者 リゼット』**
バンッ!!
「うわ、派手!」
マドカが思わず声を上げる。
「いいね~」
ニコラも満足そうに頷く。
次はグレタ。
鍛え上げられた武器を構え、一撃。
ズガァン!!
巨大な魔物の攻撃を受け止め、そのまま吹き飛ばす。
**『ドワーフの鍛冶師 グレタ』**
バンッ!!
「……なんで戦闘より鍛冶師を強調するんだ」
グレタが呆れたように呟く。
「だってグレタは鍛冶師だし~」
「まあ、そうだが」
そしてエレノア。
敵が迫る。
エレノアが剣を抜く。
一閃。
二閃。
三閃。
敵が次々と倒れていく。
画面が一瞬止まる。
**『第一王女 エレノア』**
バンッ!!
「……少し大げさではありませんか?」
エレノアが苦笑する。
「めちゃくちゃ格好いい!」
マドカが目を輝かせる。
次はヒナタ。
敵が動く。
ヒナタが手を向ける。
ピタッ。
すべてが止まる。
**『時間の巫女 ヒナタ』**
バンッ!!
そしてアリシア。
まだ成長途中の彼女が、一生懸命に魔物と戦っている。
**『冒険者 アリシア』**
バンッ!!
アリシアが少し照れたように笑う。
そして――。
最後にクライブが映し出される。
剣を振るい、魔物を倒す。
画面が切り替わる。
**『エキドナの便利屋さん クライブ!』**
「……なんで俺だけ便利屋なんだ?」
クライブが困惑する。
「いいじゃん、クライブらしくて!」
マドカが笑う。
「まあ、間違ってはいないな」
グレタが頷く。
「お前は色々できるからな」
「褒めてるのか、それ?」
クライブが苦笑する。
そして――。
画面が暗転する。
静かに、白い文字が浮かび上がる。
**『そして――』**
次の瞬間。
マドカの笑顔が画面いっぱいに映し出された。
**『私達の可愛い妹、マドカ』**
その下に、大きく。
**『13歳 お誕生日おめでとう!』**
「…………」
マドカが固まる。
「え?」
画面の中では、エキドナの皆が笑っている。
「ちょ、ちょっと待って!?」
マドカが慌てて画面を見る。
「これPVじゃなかったの!?」
ニコラが満足そうに頷く。
「大成功だね~」
リゼットも微笑む。
「ええ。とても良い締めになったわ」
「いやいやいや!」
マドカが顔を真っ赤にする。
「なんで最後だけ私の誕生日なの!?」
「最初からそのためのPVだったでしょう?」
「そうだけど!」
巨大なクリスタル画面には、まだ大きく文字が残っている。
**『マドカ、13歳おめでとう!』**
町のあちこちから、歓声が上がった。
「……さて」
そこで画面が切り替わる。
今度に映し出されたのは、町長だった。
「私達エキドナが、この辺り一帯の土地を所有していることは……まあ、そこまで知っている人も多くないでしょう」
町長が思わず頷く。
「ですが、この町の開発を、今ここにいる皆さんと始めてから一年になります」
画面に、町の風景が映し出される。
最初はまだ何も整っていなかった町。
少しずつ増えていった店。
人の集まる場所。
新しく整備された施設。
「この一年、色々なことがありましたね」
リゼットが静かに続ける。
「私達も、皆さんから色々な相談を受けてきました」
少しだけ苦笑する。
「けれど……」
「エキドナも、随分と忙しくなってしまいました」
マドカたちの姿が一瞬映る。
「そのせいで、皆さんの要望に応える機会も、以前より少なくなってしまったわね」
そこでリゼットは画面越しに町の人々を見る。
「そこで」
「スロリア・ゴール一周年記念として、何か思い出に残ることをしようと思いました」
画面に「一周年記念」の文字が大きく映し出される。
「まずは――」
町の各所が映る。
「町のいたるところに、目安箱を設置します」
画面に、実際の目安箱が映る。
「『こうしてほしい』」
「『あれがあったら便利なんだけれど』」
「そんな要望があれば、好きに書いて入れてちょうだい」
リゼットが微笑む。
「エキドナでできることなら、これからの活動として検討します」
そして、巨大なクリスタル画面を指す。
「採用したものや、皆さんにお知らせしたいことは、この画面を使って定期的に告知していきます」
画面が切り替わる。
「もちろん、それだけではありません」
「町の運営予定」
「お知らせ」
「ニュース」
「新商品の宣伝」
次々と表示される。
「たとえば、エキドナといえば――」
一瞬、間を置いて。
「モンバト」
「そして、ヒロバト」
マドカが横から口を挟む。
「そこ推すんだ」
「当然でしょう?」
リゼットは気にせず続ける。
「最新情報や、これから追加される機能についての案内なども、ここで発表していくことになるでしょう」
画面には、モンバトやヒロバトに関する映像が流れる。
「ファンの皆さんには、たまらない情報になるかもしれませんね」
どこか遠くで、
「おおおおお!」
という歓声が上がった。
リゼットは少し笑う。
「それから――」
「町の食堂やお店で、商品や催しを宣伝してほしい、という使い方をしても構いません」
「その場合は、町役場に相談してください」
「この町で暮らす皆さんにとって、この画面が便利なものになるように」
最後にリゼットが微笑む。
「これから一緒に使い方を考えていきましょう」
そこで――。
「それとね~」
画面の中のニコラが手を上げた。
「実はもう一つあるんだよ~」
「まだあるの!?」
マドカが驚く。
「うん~」
ニコラは楽しそうに笑う。
「これ、映像が映っている出演者と、リアルタイムでお話しできるようにも考えてるの~」
「お話?」
「そうそう~」
画面の中でニコラが説明を続ける。
「たとえば、今こうして私が出てるでしょう?」
「うん」
「町のみんなには、専用の魔道具を配布するの」
画面に小さな魔道具が映し出される。
「これに文字を書いて送信する」
すると――。
「ほら~」
ニコラが手に何かを持った。
「画面の中の私たちに、お手紙が届く」
「えっ、もう!?」
マドカが目を丸くする。
「そして、その場で読んで質問に答える」
「そんなことまでできるの?」
「できるよ~」
ニコラは得意そうに笑った。
「もちろん、何でもできるわけじゃないけどね~」
「簡単に答えられることなら、その場ですぐに返事するよ~」
ニコラが手元の紙を見る。
「じゃあ、実際にやってみようか~」
そして――。
「スロリア・ゴール在住、○○さんからのお手紙です~」
画面の中で、ニコラが読み上げる。
「『リゼット様のお好きなものは?』」
マドカがリゼットを見る。
「リゼット、好きなものだって」
「そうね……」
リゼットが少し考える。
「マドカの作った料理全般かしら」
「私!?」
マドカが振り返る。
「そうよ?」
「いや、もっとこう……魔法とか本とかじゃないの?」
「それも好きだけれど」
リゼットが微笑む。
「あなたの料理は別枠ね」
「…………」
マドカが少し照れる。
画面の中では、ニコラが楽しそうに笑っていた。
「とまあ、こんな感じ~」
「…………」
マドカが巨大な画面を見上げる。
「これ、本当に会話できるんだ……」
「そうだよ~」
ニコラが頷く。
「私達って、外から見ると何をしてるのかよく分からないでしょう?」
「まあ……」
「怪しい集団だとか、何してるのか怖いとか、そう思ってる人も多いかもしれないね~」
少し間を置いて。
「まあ、実際そうかもしれないけど~」
「認めるんだ!?」
マドカが思わず突っ込む。
「でもね~」
ニコラは笑う。
「せっかくこういうものを作ったんだから、これからはこの情報映像塔を使って、町のみんなとも交流していこうかな~って話なんだよね」
リゼットが頷く。
「ええ。私達のことを知ってもらう機会にもなるでしょう」
「質問でも要望でも、気になることがあれば送ってみてね~」
「答えられるものなら、ちゃんと答えるわ」
巨大な画面の前で、町の人々がざわめいている。
そして――。
あちこちで、さっそく専用魔道具を手に取る姿が見え始めた。
「それでは、続きまして――」
再び画面に町長が映し出される。
「スロリア・ゴール一周年記念祭について、私からもご案内いたしましょう」
画面に町の地図が映る。
「町のいたるところで、今年の収穫物を使った限定料理や商品を販売する予定です」
「食堂や市場だけではありませんぞ」
町長が楽しそうに続ける。
「大食いコンテストも開催いたします!」
「おお~!」
画面の向こうから歓声が上がる。
「さらに、服や装備、武器などを作っている職人の皆様には――」
画面が切り替わる。
「ファッションショーも予定しております」
「服だけじゃなく、武器や防具も?」
マドカが画面の外から尋ねる。
「もちろんですとも。自慢の作品を披露していただく場ですからな」
「なるほど~」
ニコラが頷く。
「そして、コロシアムでは恒例のモンバト大会!」
今度はモンバトのロゴが大きく映し出される。
「果たして、チャンピオン・マドカ様に今回は勝てるのか!?」
「また私!?」
マドカが思わず声を上げる。
「恒例ですからな」
「私、いつの間にそんな立ち位置に……」
「さらに――」
町長が少し声を張る。
「今回は、もう一つ大きな催しがございます」
画面に「ヒロバト」の文字が映し出される。
「同時開催、ヒロバト発売前イベント!」
「そうそう~」
ニコラが画面に戻ってくる。
「発売までもう少しだけど、もう王様たちには商品発表もしてるし、説明映像もお店で販売してるからね~」
「ですが」
ニコラが少し首を傾げる。
「実際に見てみないと、よく分からないよ~って人もいると思うんだよね」
「そこで、私達エキドナでデモンストレーションをするよ~」
画面にヒロバトの模擬戦映像が映し出される。
「実際に幻影同士が戦うところを見てもらえば、どんなものなのか分かるでしょう?」
「なるほど」
町長が頷く。
「しかし、それだけではないのですな?」
「うん~」
ニコラが楽しそうに笑う。
「対戦相手に、自分の力を見せつけたいっていう挑戦者もいるかもしれないよね~」
「……嫌な予感がする」
マドカが呟く。
「そこで!」
ニコラが勢いよく言う。
「一回限りのデータ契約で、エキドナとバトル~」
「…………」
「自分の戦闘データを登録して、エキドナの誰かと模擬戦してみるの」
「つまり……」
マドカが振り返る。
「『俺のデータでマドカに挑戦させろ!』みたいな人が来るってこと?」
「そうそう~」
「絶対来るじゃん!」
ニコラは楽しそうに笑う。
「おもしろそうじゃない~?」
「面白そうですな」
町長まで乗ってくる。
「では、こちらの催しも――」
ニコラが手を振る。
「開催は町にまかせまーす」
「……丸投げですな」
「だって、私達はデモンストレーションするだけだもん~」
マドカがため息をつく。
「エキドナ、最近こういうの町に投げるようになったよね……」
「町が自分たちでできるようになるのも、大事なことよ」
リゼットが静かに笑った。
こうして。
スロリア・ゴール一周年記念祭の開催が、大々的に告知された。
そして――。
町では、さっそく祭りの準備が始まろうとしていた。




