十三歳
「マドカ」
リゼットが突然、マドカを呼んだ。
「なに?」
「あなた、十三歳ね」
「…………」
マドカが目を瞬かせる。
「おめでとう」
「え?」
一瞬、意味が分からなかった。
「……私、十三歳?」
「ええ」
「え! マジだ!」
マドカが驚いた顔をする。
「いつの間に!?」
「誕生日が来たからよ」
「この世界、暦が面倒なんだよね……」
マドカは頭を抱えた。
地球にいた頃なら、自分の誕生日くらい覚えている。
けれど、この世界では暦の数え方も違い、地域によって多少の違いもある。普段から正確な日付を意識することも少なかった。
「じゃあ、鑑定で年齢知られた?」
「ふふ」
リゼットが笑う。
「当然よ。私は保護者なのだから」
「保護者権限って、そんなのまであるの?」
「ありません」
「じゃあ、なんで分かるの?」
「あなたが九歳の頃から、時々鑑定していたもの」
「ああ……」
マドカは納得した。
「そういえば、たまに鑑定してたね」
「ええ。成長しているか確認する必要もあったでしょう?」
「まあ、そうだけど」
リゼットはマドカの頭を軽く撫でる。
「だから、あなたの年齢くらい覚えているわ」
「……そっか」
マドカは少し照れくさそうに笑った。
「まあ、十三歳かぁ」
「そうね」
「なんか、実感ないなぁ」
「あなたは今まで、誕生日を祝う余裕もなかったでしょう?」
「……そうかも」
「だから今年は、ちゃんと祝いましょう」
「うん」
そこへニコラがやってくる。
「何の話~?」
「マドカの誕生日よ」
「おお~。十三歳?」
「そう」
「じゃあ、お祝いしようよ~」
「もちろん」
マドカが笑う。
「せっかくだし、みんなで何かしよう!」
その話を聞いていたエレノアが、ふと外を見る。
「そういえば……」
「どうしたの?」
「最近、町の方が少し騒がしいんです」
「町?」
「エキドナが有名になりすぎましたから」
エレノアが苦笑する。
「新しい魔道具について聞きたい、何か作ってほしい、こういう問題がある――と」
「ああ……」
マドカが納得する。
「町の人たちが?」
「ええ。かなり増えています」
リゼットもため息をつく。
「エキドナが何でもできると思われているのよ」
「まあ、実際いろいろできるけどね~」
ニコラが悪びれずに言う。
「それが原因なのよ」
リゼットが即座に返した。
「でも……」
マドカが少し考える。
「町には今までいろいろ助けてもらったし」
「ええ」
「ついでに、町の手助けくらいはしてもいいんじゃない?」
「あなたの誕生日を祝うついでに、ね」
「え?」
マドカが振り返る。
「町がついでなの?」
「当たり前でしょう」
リゼットは何でもない顔で答えた。
「今日はあなたの誕生日なのよ」
「…………」
「町のことまで、あなたの誕生日より優先する必要はないわ」
「いや、そこまで言ってないけど……」
マドカが苦笑する。
「ただ、せっかくなら一緒にやっちゃえばいいかなって」
「それならいいでしょう」
リゼットが頷く。
「それに、町の人たちがいちいちここまで来るのも大変でしょう?」
「それはそうだね~」
ニコラも頷く。
「じゃあ、映像で報告できるようにしようよ」
「映像で?」
「うん。新しい魔道具の説明とか、エキドナからのお知らせとか」
「なるほど」
エレノアも頷く。
「それなら、町の人たちもわざわざここまで来なくて済みますね」
「そういうこと」
リゼットが大型魔道具の方を見る。
「エキドナから伝えるべきことは、映像で伝えればいいのよ」
「じゃあ、住民からの要望は?」
マドカが尋ねる。
「目安箱に入れてもらえばいいんじゃない?」
ニコラが答える。
「できるものだけ、こっちで考えればいいし」
「うん。それならいいね」
マドカも頷いた。
「町の人たちが何を困ってるのか分かるし」
「ただし、何でも引き受けるわけではありませんよ」
リゼットが念を押す。
「分かってるって」
「エキドナは便利屋ではないのだから」
「でも、万事屋みたいなものじゃない?」
ニコラが笑う。
「……否定しにくいのが困るわね」
リゼットが小さくため息をついた。
「じゃあ、誕生日のお祝いと一緒に、町の人たちにも発表しよう!」
「ええ」
リゼットが微笑む。
「今年は少しだけ、町にも付き合ってあげましょう」
「少しだけ?」
「少しだけよ」
マドカは苦笑した。
「でも、十三歳の誕生日なのに町の方が大変そうじゃない?」
「だから言ったでしょう?」
リゼットが笑う。
「今日はあなたが主役よ」
「……そっか」
マドカも笑った。
「じゃあ、いっぱい祝ってもらおうかな」
「ええ。そうしましょう」
こうして。
マドカ十三歳の誕生日。
そして、スロリア・ゴールの住民感謝祭。
二つを兼ねた、少し賑やかな一日が始まることになった。




