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落内円は落ちている  作者: 七風


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モンバト部 説明映像でハシャぐ

 ヒーローバトラーの情報が解禁された、その日のこと。


 モンバト部の部室では、五人が一台の端末を囲んでいた。


「これが……」


 フローラが画面を覗き込む。


「ヒーローバトラー……」


「ついに公開されましたね」


 エミリアも興味深そうに画面を見る。


「今まで何も話せなかったんだよね?」


「そうですわ!」


 ガブリエルが胸を張る。


「情報漏洩防止のため、会議内容については一切話しておりませんでしたわ!」


「ガブリエル様、会議には出てましたよね?」


 エミリアが笑う。


「ええ!」


「そこが不思議なんだよな……」


 ケヴィンが呆れる。


「情報漏洩防止なのに、なんでガブリエル様だけ普通に参加してるんだ?」


「わたくしは信用されていますもの!」


「そういう問題なのか?」


「そういう問題ですわ!」


 フローラが苦笑する。


「まあまあ。今はそれより、これ見ようよ」


「そうですね」


 エミリアが再生ボタンを押した。


 画面が切り替わる。


 そこに映ったのは――。


「マドカさん!」


 フローラが声を上げた。


「本物ですわ!」


 ガブリエルが身を乗り出す。


「当然ですわ!」


「なんでガブリエル様が一番嬉しそうなんだ……」


 ケヴィンが呟く。


 映像の中では、マドカがヒーローバトラーの前に立っていた。


『今日はヒーローバトラーの説明をするよー』


 いつものマドカの声。


 それだけで、フローラたちの目が輝く。


「本人が出てる……」


 シェリーが小さく呟いた。


「かわいいですね」


「そこ?」


 ケヴィンが笑う。


 映像の中で、ニコラが説明を続けている。


『ヒロバトでは、本人の許可をもらって、人間の戦闘データを登録できます~』


「本人の許可が必要なんだ」


 エミリアが頷く。


「ちゃんと契約するんですね」


 画面の中で、マドカが説明を受けながら契約を進めていく。


『じゃあ、ここを確認して~』


『はいはい』


『登録する内容と、使える期間、それから使っていい範囲を確認してね~』


『分かった』


「普通に契約してる……」


 フローラが感心する。


「ゲームのカードを作るだけじゃないんですね」


「人間のデータだからな」


 ケヴィンも画面を見ながら言う。


「そこはちゃんとしてるんだろ」


 シェリーも真剣に映像を見る。


「本人が決めてから、データになるんですね」


「そういうことですわ」


 ガブリエルが嬉しそうに答える。


「そして、ここからですわ!」


「ガブリエル様、もう知ってるんでしょう?」


「知っていますわ!」


「じゃあ黙って見ててください」


「はい……」


 珍しく素直に座るガブリエル。


 映像の中では、契約を終えたマドカがヒーローバトラーの前に立っていた。


『それじゃあ、マドカのデータを作ります』


『よろしく~』


 装置が動く。


 光が走る。


 そして――。


 一枚のカードが出てきた。


「カードになった!」


 フローラが驚く。


「人間もカードになるんだ……」


「カードそのものにデータが入ってるわけじゃないんですよね?」


 エミリアが確認する。


「本体に保存されたデータをカードから呼び出すんですわ」


 ガブリエルが説明する。


「カードはデータを参照するためのものですの!」


「詳しいな……」


 ケヴィンが呆れる。


「会議出てたからな!」


「そこは堂々と言うんだな」


 映像が進む。


 今度はリゼットが映っていた。


『じゃあ、次は私ね』


「リゼットさん!」


 フローラがまた声を上げる。


「二人とも出るんだ!」


「これは贅沢ですね……」


 エミリアも楽しそうに笑う。


 リゼットも同じように契約を行い、自分の戦闘データを登録していく。


 そして――。


 もう一枚のカードが完成した。


『これで二人分のデータができました~』


 ニコラの声。


 マドカとリゼットがカードを持って並ぶ。


『じゃあ、実際に呼び出してみよう』


 マドカがカードをセットする。


 光が広がる。


 そこに現れたのは――。


 マドカ。


 本人と同じ姿をした、戦闘用の幻影。


「うわ……」


 フローラが息を呑む。


「本当にマドカさんが出てきた……」


「でも、本人じゃないんですよね」


 エミリアが確認する。


「幻影ですわ」


 ガブリエルが答える。


「戦闘データを再現した存在ですの」


 続いて、リゼットの幻影も現れる。


「二人いる……」


 シェリーが目を丸くした。


「本物と同じ姿なのに、別の存在なんですね」


「そういうことですわ!」


 ガブリエルの声が弾む。


 そして画面に表示が出る。


**『幻影マドカ VS 幻影リゼット』**


「来た!」


 フローラが身を乗り出す。


「本人同士じゃないんだ!」


「幻影同士だから安全に戦えるんですね」


 エミリアも興味深そうに見る。


「しかも、本人が戦う必要もない」


 ケヴィンが呟く。


「データ同士で勝手に戦うのか」


 開始の合図。


 幻影マドカが動いた。


 リゼットの幻影も動く。


「速っ!」


 フローラが驚く。


「マドカさん、こんな動きするんだ……」


「実際の戦い方を再現してるんでしょうね」


 エミリアが画面を追う。


 マドカの幻影が距離を詰める。


 リゼットの幻影が魔法を使う。


「魔法も使うんだ!」


 フローラが声を上げる。


「すごい……」


 シェリーも画面に釘付けになる。


 しかし、映像では魔法が飛び交っているにもかかわらず、現実の部屋には何も起こらない。


「……あれ?」


 フローラが首を傾げる。


「魔法、こっちには飛んでこないんだ」


「当然ですわ」


 ガブリエルが答える。


「幻影の戦闘ですもの!」


「ちゃんと安全なんですね」


 エミリアが安心したように頷く。


 戦いは続く。


 マドカの幻影が攻める。


 リゼットの幻影が迎え撃つ。


 同じ二人のデータでも、毎回同じ動きをするわけではない。


 相手の行動に応じて、幻影が戦い方を変えている。


「……これ、ただの録画じゃないんだ」


 ケヴィンが呟いた。


「相手に合わせて動いてる」


「本当に戦ってるみたいですわね!」


 ガブリエルが嬉しそうに笑う。


 やがて――。


 幻影マドカが最後の一撃を決めた。


 戦闘終了。


 画面に結果が表示される。


**『WIN』**


「勝った!」


 フローラが拳を握る。


「すごい!」


「……面白いですね」


 エミリアも笑った。


「これなら、何度でも戦わせられる」


「戦い方を見るだけでも勉強になりそうだな」


 ケヴィンも頷く。


 シェリーは、少しだけ困った顔をした。


「……でも」


「ん?」


「マドカさんとリゼットさんが戦ってるみたいで、ちょっとかわいそうです」


「本人じゃないから大丈夫だよ」


 フローラが笑う。


「そうなんですけど……」


 シェリーは画面を見つめる。


「やっぱり、ちょっと不思議です」


 ガブリエルは満足そうに腕を組んだ。


「これがヒーローバトラーですわ!」


「ガブリエル様、完全に宣伝係になってますよ」


 エミリアが笑う。


「当然ですわ!」


 ガブリエルは胸を張る。


「だって、こんなに面白いものが発売されるんですもの!」


「発売されたら遊んでみたいな」


 フローラが言う。


「私もです」


 エミリアも頷く。


「俺も一度くらいはやってみたい」


「私も……」


 シェリーも小さく手を挙げた。


「かわいいモンスターと一緒に遊べるなら」


「そこはやっぱりモンスターなんだな」


 ケヴィンが苦笑する。


 そしてガブリエルが、満面の笑みを浮かべた。


「ふふふ……」


「何?」


 フローラが尋ねる。


「これからが楽しみですわね」


 ガブリエルは画面に映るヒーローバトラーを見つめた。


「まだまだ、いろんな人のデータが増えていくでしょうから!」


「……ガブリエル様」


 ケヴィンが嫌な予感のする顔をする。


「何ですの?」


「その顔、何か企んでるだろ」


「企んでなどいませんわ!」


 ガブリエルは笑う。


「ただ――」


 目だけが、妙に輝いていた。


「楽しみなだけですわ!」


 こうして。


 モンバト部にも、ヒーローバトラーの情報が解禁された。


 そしてこの日から。


 五人の中で、ヒロバトに対する興味は少しずつ大きくなっていくことになるのだった。


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