↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落内円は落ちている  作者: 七風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
132/532

ヒロバト説明会6

「では、最後にいくつか確認させていただきたい」


会場から声が上がった。


「騎士団などの場合、自分たちの団員をデータ化して、訓練に利用することも可能なのですな?」


「もちろん~」


ニコラはあっさり答える。


「自分たちのデータなら、わざわざ他人のデータを買わなくても使えるよ~。剣士とか槍兵とか盾兵とか、いろんな人を登録しておけば、それだけでも訓練相手になるし~」


「なるほど……」


騎士団関係者たちが互いに顔を見合わせる。


「では、他人のデータを購入するのは、自分たちにない技術を持つ者が必要な場合などですな」


「そうそう~。○○流の達人と戦ってみたいとか、自分たちの団にはいないタイプの魔法使いが欲しいとか。そういう時に契約すればいいんじゃない?」


「ふむ……」


今度は教育関係者から声が上がった。


「学校などで利用する場合も、教師や卒業生など、本人の許可を得て登録すれば教材として使えるということですか?」


「契約で許可されてればね~」


ニコラは眼鏡を押し上げる。


「人間データだから、そこはちゃんと決めておいてね~」


「分かりました」


そこで、一人の魔法研究者が手を挙げた。


「では、魔法について確認したい」


会場の視線が集まる。


「幻影が魔法を使えるとのことだが、例えば治癒魔法を使わせれば、実際の負傷者を治療できるのか?」


「できないよ~」


即答だった。


「幻影の魔法で現実の人を治したり、実際の物を作ったりすることはできないよ~。あくまで戦闘で使っている魔法を再現するだけだから」


「……そうか」


魔法研究者の表情が少し曇る。


別の者が続けた。


「では、建築用の魔法を使わせて、実際の工事に利用するということも?」


「無理~」


また即答。


「そういうのは本物の魔法使いに頼んでね~」


「……なるほど」


さらに別の魔法使いが、おそるおそる尋ねる。


「では、その魔法の理論についてはどうだ? 幻影の使っている魔法を観察すれば、術式や構築理論まで理解できるのか?」


「そこまでは分からないよ~」


「……」


魔法使いたちの間に、微妙な空気が流れた。


「本人が実際に使っている魔法を再現することはできるけど、その人がどういう理論で魔法を組み立てているのかまで、こっちが理解できるわけじゃないから~」


「それは……少し残念ですな」


「まあ、戦闘の教材としてなら使えると思うよ~」


ニコラは特に気にした様子もない。


そんなやり取りを聞いていた一人が、ふと別の疑問を口にした。


「しかし、これほど複雑なものなら、購入した者が規則を理解できずに問題を起こすこともあるのでは?」


「別に買ってもらわなくても困りませんし」


ニコラの返答は早かった。


「面白そうだからつくっただけ~」


「…………」


「BANされる使い方する方が悪いんじゃない~?」


会場が静まり返る。


「……う、うむ」


王が頷いた。


「ニコラの言う通りだな」


何人かが気まずそうに視線を逸らした。


ニコラはそんな空気も気にせず続ける。


「そもそも今回のは、モンスターバトラーみたいに簡単じゃないから~」


「ほう」


「だから、ここに集めてもらったんだよ~。権力者とか教育者とか、お金を持ってる人とか。実際に買って使う可能性がある人向けの説明会~」


そして、壇上に置かれた記録媒体を指差す。


「説明映像も最初から用意してるし~」


「説明映像?」


「うん。人間データの扱いとか、契約とか、禁止されてることとか。全部説明してるよ~」


「本体を購入しなければ見られないのですか?」


「いや。説明映像だけでも売ってるよ~。タダみたいな値段で」


会場がざわつく。


「本体買わなくても、それ見てから考えればいいじゃん~」


ニコラは本当に何でもないことのように言った。


「見て、面白そうとか便利そうって思ったら買えばいいし。理解できないなら買わないで~。面倒だし~」


「……煽っているなぁ」


誰かが小さく呟いた。


「煽ってないよ~。本当にそう思ってるだけ~」


「…………」


「だから、説明した内容について後から『知らなかった』って言われても困るんだよね~」


王が苦笑する。


「そこまで準備しているなら、確かに言い分はないな」


会場にも、今度は反論ではなく頷く者が増えていった。


その様子を見ながら、王が口を開く。


「だが――」


会場が静かになる。


「私は、この製品について別のことを考えている」


王の視線がヒロバトへ向いた。


「これは、世界の教育を著しく向上させることになるのではないか」


先ほどまでとは違う空気が流れた。


「例えば、○○流剣術などがあるだろう?」


数人の剣士が顔を上げる。


「このデータは、最初に決まった技を使い、その次には必ず別の技を使う――というものではないのだな?」


「うん~」


ニコラが答える。


「○○流剣術の技術を全部組み合わせて、相手の動きを見ながら選ぶよ~」


王は頷いた。


「つまり、相手の行動を読み、その場に適した技を繰り出す」


「そういうこと~」


「ならば、同じ相手であっても?」


「一度たりとも同じ行動にはならないと思うよ~」


「毎回、違う結果になるわけか」


「うん」


王は会場を見渡した。


「これは単なる記録映像ではない」


誰も口を挟まない。


「一流の剣士の技を見るだけではない。その者を相手にして、何度でも戦い、考え、試すことができる」


王の言葉に、教育者たちが顔を見合わせる。


「自分たちの団員を登録すれば、自分たちだけの訓練環境も作れる。必要なら他者と契約して、さらに技術の幅を広げることもできる」


そして、ゆっくりと言った。


「これまで、一流の技術を学ぶには、その人物のもとへ直接赴く必要があった」


「だが、ヒロバトならば違う」


王はヒロバトを見つめる。


「何度でも学べる。何度でも挑戦できる。相手の反応も毎回変わる」


「……」


「私は、この製品が世界の教育を大きく変えることになると思っている」


その言葉に、会場がざわめいた。


そして、その中から明るい声が響く。


「おもしろい……おもしろいわね!」


クリスティーナ夫人だった。


「あなた! ニコラ博士! これはやばいわよ!」


「便利だよ~」


「ええ、本当に!」


ニコラは相変わらず淡々としている。


「まあ、便利だなーって思う組織は多いだろうねー」


そして最後に、


「でも、ただの金持ちの自慢で買ったら後悔するよ~?」


王が思わず苦笑した。


「最後までそれを言うのか」


会場から笑いが起こる。


こうして、ヒロバト説明会は幕を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。