↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落内円は落ちている  作者: 七風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
129/550

ヒロバト説明会3

「では、他にご質問はありますか~?」


ニコラが会場を見回す。


すると、クリスティーナ夫人が手を上げた。


「よろしいかしら?」


「どうぞ~」


「先ほど、登録した本人の声を再現できるとおっしゃいましたわね?」


「うん。戦闘開始と終了の台詞は登録できるよ~」


「それを、もう少し広げることは?」


「もう少し?」


「例えば歌手の方なら、歌そのものを登録することはできますの?」


「本人が登録するときに実際に歌ってくれれば、録音できるよ~」


会場の一角から、何人かが顔を上げた。


「歌を?」


「うん。何曲か登録して、それぞれ番号をつけることもできるよ~。『三番を再生』みたいな感じで」


「まあ」


夫人が楽しそうに目を細める。


「では、楽器を演奏する方なら?」


「実際に演奏してもらえば、その演奏を録音できるよ~」


「後から幻影に楽器を持たせて演奏させることも?」


「それは無理~。登録するときに実際に演奏したものを、音として再生するだけだからね~」


「なるほど」


夫人は少し考えた。


「では、それを店で流したり、演奏会で使ったりする場合は?」


「契約次第だね~」


「契約?」


「自宅で聞くのはいいけど、お店で使うのはダメ、とか。演奏会で使っていい、とか。最初に決めてもらうの~」


「使用場所や期間まで?」


「そこまで決められるよ~」


「それなら、本人が許可した範囲がはっきりしますわね」


「そういうこと~」


ニコラはそこで、少しだけ説明を続けた。


「契約すると、本体から契約内容を書いたカードが三枚出るよ~」


「三枚?」


「提供した本人と、契約した人、それからエキドナ用。エキドナの分は本部の専用端末にも送られるよ~」


「まあ。それなら、後から確認もできますのね」


「うん。『そんな契約してない』って言われても、ちゃんと確認できるからね~」


夫人は納得したように頷いた。


「つまり、カードを持っているからといって、何をしてもよいわけではない」


「そうそう」


「自宅で個人使用のみ、という契約なら?」


「自宅で使うのはいいけど、お店で使ったら契約違反~」


「演奏会で使いたければ?」


「演奏会で使っていいって契約してもらってね~」


「なるほど。使用する場所や目的まで契約に含められるのですね」


「他の人に貸していいかとか、期間とかも決められるよ~」


会場の商人たちが、何やら考え始めている。


「では、『知らなかった』というのは?」


「契約内容をちゃんと提示してるから、それだけじゃ理由にならないよ~」


「ふふ。随分とはっきりしていますのね」


「揉めるの面倒だからね~」


ニコラはあっさりと言った。


「もちろん、苦情が来たからって、いきなり使えなくするわけじゃないよ。まず契約を確認するの」


「契約の範囲内なら?」


「そのまま使えるよ~。本人が後から『やっぱり嫌』って言っても、最初の契約で許可してたなら、それだけでは契約違反にはならないからね~」


「逆に、契約外で使っていた場合は?」


「止めてもらう。悪質だったり、何度言っても繰り返したり、明らかに契約違反なら、その人のデータを幻影として使えなくすることもあるよ~」


「カードそのものを消すのですか?」


「カードは残るよ~。ただ、もう幻影は出せなくなる」


「なるほど」


夫人は少し考えてから、微笑んだ。


「契約そのものを記録しておくからこそ、そこまで明確にできるのですね」


「そうそう~」


「面白い商品ですわね」


夫人はそう言って、今度は会場の別の場所へ目を向けた。


「それなら……」


クリスティーナ夫人が、ふと会場の騎士たちへ目を向けた。


「騎士の方にも、面白い使い道がありそうですわね」


「騎士?」


「ええ。有名な騎士がいらっしゃるでしょう?」


「いるね~」


「その方の戦い方を登録しておけば……」


夫人がそこで少し考える。


「本人にお願いして、稽古相手になっていただく必要がなくなりますわね」


「そうだね~」


「例えば、王都の騎士団に有名な剣士の幻影を置いておけば、その方と戦う訓練ができる」


「できるよ~」


騎士の一人が反応した。


「それはかなり使えるな」


「ただし、登録した時のデータだからね~」


「本人が後から強くなっても?」


「勝手には変わらないよ。新しいデータが欲しかったら、また本人にお願いして登録してもらって~」


「なるほど」


別の騎士が続ける。


「では、同じ人物でも昔のデータと現在のデータを両方残しておけば……」


「V1、V2って感じで分けられるよ~」


「それは面白い」


会場の騎士たちが、互いに顔を見合わせる。


「昔の剣聖と今の剣聖を戦わせることも?」


「契約で許可されてればできるね~」


「本人同士では絶対にできない組み合わせだな」


「そういうのもヒロバトならできるよ~」


夫人は楽しそうに頷いた。


「それなら、昔の英雄の戦い方を残しておくこともできますわね」


「本人が登録してくれて、契約が続いてればね~」


「なるほど。勝手に後世へ残るわけではない」


「うん」


ニコラはそこで、いつもの調子で付け加える。


「契約が終わったら使えなくなることもあるからね~」


「そこは大事ですわね」


夫人は頷いた。


「本人が残したいと思えば残る。残したくなければ残らない」


「そうそう」


「では逆に、本人が『自分の強さを多くの人に試してほしい』と思っている場合は?」


「好きに契約すればいいよ~」


「ふふ」


夫人は笑った。


「そういう方も、きっといらっしゃいますわね」


会場の冒険者たちからも声が上がる。


「有名な冒険者なら、挑戦者を集められそうだ」


「本人が毎回相手をする必要もない」


「強敵との訓練施設にもできるな」


「対戦料を取るなら契約次第だろうが……」


話は自然と広がっていく。


クリスティーナ夫人は、その様子を眺めながら満足そうに笑った。


「まあ。最初はただの対戦道具だと思っておりましたけれど」


「対戦道具だよ~?」


ニコラが首を傾げる。


「もちろん、それは分かっていますわ」


夫人は楽しそうに答えた。


「けれど、対戦する相手が有名な方なら、それだけで人を集められますもの」


「そういうこと~?」


「ええ」


夫人は会場を見回す。


「有名な騎士と戦える。昔の英雄と戦える。遠くにいる強者とも戦える」


「うん」


「それを見たい人もいるでしょうし、自分で戦いたい人もいる」


「いるね~」


「ならば、そこにも商売が生まれますわ」


今度はニコラではなく、会場の商人が先に反応した。


「対戦会……」


「入場料を取って、観客にも見せられる」


「騎士同士の模擬戦なら興行としても……」


「冒険者向けなら参加費を取っても……」


また、会場がざわつき始める。


ニコラはそんな周囲を見て、少しだけ困ったように笑った。


「なんか、ヒロバトよりみんなのほうが楽しそうだね~」


「新しいものを見れば、使い道を考えたくなるものですわ」


「そうなの~?」


「ええ」


クリスティーナ夫人は頷いた。


「エキドナの皆様は、作ることがお好きなのでしょう?」


「うん」


「ならば、使う側がどう使うかまで全部考える必要はありませんわ」


「……まあ、それもそうだね~」


「商品を見た人間が、自分で新しい使い道を見つける。それもまた、商品の面白さではありませんこと?」


「なるほど~」


今度はニコラの方が、少しだけ感心したような声を出した。


「じゃあ、いっぱい考えてもらお~」


「ええ。ぜひそうなさいませ」


クリスティーナ夫人は、楽しそうに微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。