↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落内円は落ちている  作者: 七風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
125/481

ヒロバト開発会議

### ヒロバト製作会議


「さて、と」


 ゲンナイが机の上に並べられたヒロバトの試作品を見る。


「こっからは遊びの時間だな」


「遊び?」


 セリナが首を傾げる。


「いや、さっきまで十分遊んでた気もするけど」


「そういう意味じゃねぇよ」


 ゲンナイが笑う。


「今まで使った感想を出して、どこが面白くて、どこがつまらねぇのか考えるんだよ。まだアップデートできんだろ?」


「できるよ~」


 ニコラが即答した。


「というか、今のはまだ試作品だからね~。実際に遊んでもらって分かったことも結構あるし」


「じゃあ、まずは悪かったところから言っていこうぜ」


 マドカが言う。


「遠慮なしで」


「いいね~」


 ニコラが紙を用意する。


「じゃあ、思ったことをどんどん言ってみて」


「それなら――」


 ガレスが腕を組んだ。


「俺から一ついいか?」


「どうぞ」


「人間データの再現は面白い。実際に戦ってみても、動きは本人を知っている俺から見てもかなり近かった」


「へぇ」


 マドカが興味深そうにする。


「でも、戦ってる間はずっと無言なんだよな」


「そうなんだよね~」


 ニコラが頷く。


「そこは私も気になってた」


「モンスターなら別にいいんだけどよ」


 ガレスは自分のカードを見る。


「人間が相手だと、なんつーか……人形と戦ってる感じがする」


「分かる」


 マドカも頷いた。


「人間データなのに、ずっと無言ってつまんなくない?」


「確かに」


 セリナがカードを手に取る。


「私としては、戦う前に何か言ってくれた方が嬉しいですね」


「ほう」


 ゲンナイが興味を示す。


「何を言わせる?」


「例えば――」


 マドカが少し考える。


「『あら、私に勝てると思ってるの?』とか」


「煽ってるじゃねぇか」


 クライブが即座に突っ込んだ。


「いいじゃん。私のデータなんだし」


「お前なら言いそうだけどな」


「でしょう?」


 マドカが笑う。


「そういうのだよ」


 ガブリエルがぱっと顔を上げた。


「それ、面白いですわ!」


「やっぱり食いついた」


「だって、同じデータでも本人が何を言うのか分からないんですもの!」


 ガブリエルは自分のカードを眺める。


「戦闘開始前に本人が一言。さらに勝ったときと負けたときにも専用のセリフがあったら、もっと楽しくなりません?」


「勝敗のセリフ?」


 エレノアが考える。


「確かに、最後に何も言わず終わるより、その方が締まりは良さそうですね」


「例えばクライブなら――」


 マドカがまたクライブを見る。


「『やれやれ、お前が相手か』」


「だから勝手に決めるなって」


「じゃあ自分で考えてよ」


「……考えておく」


「ほら」


「何が『ほら』だよ」


 クライブが苦笑する。


 セリナが楽しそうに笑った。


「じゃあ私なら、負けたときに『悔しいです!』って言わせたいです」


「セリナらしいな」


 ガレスが笑う。


「じゃあ俺は勝ったときに『次も来い』だな」


「渋いね~」


 ニコラが笑う。


「でも、そういうのを本人が決められるなら面白いかも」


「本人に決めてもらうんですの?」


 ガブリエルが身を乗り出す。


「うん」


 ニコラが頷く。


「データを登録するときに、戦闘開始、勝利、敗北の三つを設定する」


「声も本人が?」


「そう。本人に喋ってもらって登録する」


「なるほど」


 エレノアが頷く。


「それなら、本人の許可なく勝手な言葉を喋らせることにもなりませんね」


「そこは大事だな」


 クライブも頷く。


「戦闘データそのものと、本人が登録した音声は別物として扱うわけか」


「そうそう~」


 ニコラが嬉しそうに説明する。


「戦闘中に本人の意識が入ってるわけじゃないからね。あくまでデータが戦って、決めておいた音声が流れるだけ」


「なら、無駄に喋らせなくてもいいな」


 ガレスが言う。


「ずっと喋ってたら逆にうるせぇだろ」


「そうですね」


 セリナも頷く。


「開始と勝敗だけなら、特別な感じも出ますし」


「いいんじゃない?」


 マドカが頷く。


「それなら私も欲しい」


「お前、自分のデータなのにか?」


「だって、自分で変なセリフ入れられるんでしょ?」


「目的がそれかよ」


 クライブが呆れる。


「あはは~」


 ニコラが笑いながら紙に書き込んでいく。


「じゃあ、これはアップデート候補ね」


「他には?」


 ゲンナイが促す。


「俺からもいいか?」


 ヴァルトが口を開いた。


「どうぞ」


「実戦形式の訓練に使うなら、ただ相手を倒すだけでは足りない場合がある」


「というと?」


「例えば護衛だ。一定時間、対象を守る。あるいは特定の場所を守りながら戦う」


「それ面白い」


 マドカがすぐに反応する。


「ダンジョンの試練みたいにできるじゃん」


「時間制限も欲しいな」


 クロードが続ける。


「何分以内に倒せ、とか。逆に、何分生き残れ、とか」


「それなら冒険者の訓練にも使えるね~」


 ニコラが書き足していく。


「学校でも使えそうです」


 エレノアが言った。


「剣術の授業などで、実際の相手を用意しなくても模擬戦ができますから」


「ただの対戦ゲームじゃなくなるな」


 ゲンナイが笑う。


「ゲームにも訓練にも使える。悪くねぇ」


「でも、あんまり難しくしすぎるのはどうかな~」


 カトリーヌが口を挟む。


「遊ぶ側が最初から細かい条件を全部覚えないといけないと、気軽に遊べなくなるよ」


「じゃあ、普通の対戦は今まで通り」


 マドカが言う。


「やりたい人だけ特殊ルールを選ぶとか?」


「それならいいね~」


「その程度なら、今の仕組みでも対応できそうです」


 ニコラが頷く。


「じゃあ、候補に入れよう」


「あと、戦う前に相手がどういうタイプなのか分かると助かる」


 ガレスがカードを見ながら言った。


「近距離なのか、遠距離なのか。それくらいは分かった方がいい」


「プロフィールみたいなもの?」


 マドカが尋ねる。


「そうだな」


「それなら、簡単な分類だけでいいんじゃない?」


 ニコラが考える。


「近距離型、遠距離型、魔法型、速度型……みたいな」


「それ、コレクションするときにも便利ですわね」


 ガブリエルが食いつく。


「この人はどんな戦い方をするのか、カードを見るだけで分かりますもの」


「お前は本当にカード集める気満々だな」


 グレタが呆れる。


「当然ですわ!」


 ガブリエルは胸を張る。


「せっかくの人間データですもの!」


「ただな」


 クライブが口を挟む。


「分類しすぎるのも問題じゃないか?」


「どういうこと?」


「例えば、俺なら剣が得意だが、罠も使えるし魔法も使える。単純に一つに分類すると、それだけで戦い方を決めつけることになる」


「それは確かに」


 カトリーヌが頷く。


「じゃあ、あくまで目安として表示するくらいかな」


「それならいいと思う」


 クライブが答える。


「戦う前に少し参考になる程度で十分だ」


「なるほど~」


 ニコラがまた紙に書き込む。


「戦闘スタイルは簡易表示、と」


「そういやよ」


 ゲンナイがカードを指で弾いた。


「データの強さはどうすんだ?」


「強さ?」


「本人が強くなったら、そのデータも強くなるんだろ?」


「更新するんだよね~」


 ニコラが答える。


「本人がまたデータを提供してくれれば、その時点のデータを作れる」


「じゃあ、昔のデータは?」


 セリナが尋ねる。


「消さない方がいいと思う」


 ガブリエルが即答した。


「え?」


「初期のデータと、何年も修行した後のデータ。両方あったら面白いではありませんか」


「ああ」


 マドカも頷く。


「それいいね」


「本人の成長も分かるしな」


 ガレスが腕を組む。


「昔の自分と今の自分を戦わせることもできるわけか」


「それ、かなり面白そう」


 マドカが目を輝かせる。


「私もやりたい」


「また自分で遊ぼうとしてる」


 リゼットが笑う。


「だって気になるじゃん」


「まぁ、それはそうね」


 リゼットも少し楽しそうだった。


「じゃあ、データは更新しても前のものを消さない」


 ニコラがまとめる。


「ただ、これは容量とか管理の問題があるから、詳しいところは後で考えるね~」


「技術的には?」


 ゲンナイが聞く。


「今すぐなら、そこまで難しくないよ」


「なら決まりだな」


「でも、データが増えすぎたら整理は必要です」


 カトリーヌが付け加える。


「そこは後で考えればいいでしょう」


「そうだな」


 ゲンナイが頷く。


「今から未来の心配ばっかしてもしょうがねぇ」


「他にはないか?」


 グレタが腕を組む。


「俺は、データの扱いについては少し考えた方がいいと思うぞ」


 その言葉に、少し空気が変わった。


「扱い?」


「人間のデータなんだろ?」


 グレタが言う。


「だったら、誰でも勝手に使えるようにするのはまずいんじゃねぇか」


「それは……」


 クライブが考える。


「確かに、戦闘以外の使い方を考える奴は出てくるだろうな」


「戦闘以外?」


 セリナが首を傾げる。


「いや、変な意味じゃなくてな」


 クライブが苦笑する。


「例えば、女性のデータを使って妙なことを考える奴とか」


「…………」


 ガブリエルが真顔になった。


「それは許せませんわね」


「お前が言うと妙に怖いな」


 マドカが呟く。


「でも、そういう問題は最初に考えておいた方がいいと思います」


 エレノアも真面目に頷く。


「本人が許可した範囲で使う。そこは明確にした方がいいでしょう」


「うん」


 ニコラも頷いた。


「そこは大事だね~」


「ただ、細かい規則を今ここで全部決める必要はないだろ」


 リゼットが言う。


「まだ商品としてどういう形になるのかも固まっていないもの」


「そうですね」


 エレノアが頷く。


「基本的な考え方だけ決めて、細部は後にしましょう」


「それでいい」


 ゲンナイも頷いた。


「許可なく人間データを作らない。本人が何に使うかを決める。それくらいは必要だろ」


「うんうん」


 ニコラが紙に書き込む。


「じゃあ、そこも忘れないようにしよう」


「……なんか」


 マドカが机の上を見る。


「最初は『どこが悪いかな?』って話だったのに、どんどん増えてない?」


「増えてるね~」


 ニコラが笑う。


「でも、面白くなってるよ」


「そうだな」


 ゲンナイも笑った。


「それでいいんだよ」


 ガブリエルがカードを手に取る。


「私としては、まだ欲しいものがありますわ」


「まだあるの?」


「ありますわ!」


「何?」


「データを集めたときに、本人のプロフィールも少し見たいですわ」


「プロフィール?」


「ええ。名前、ランク、得意な武器、戦闘スタイル。それから――」


 ガブリエルが少し考える。


「好きなものとか」


「……ゲームのキャラ紹介みたいになってきたな」


 クライブが呟く。


「でも、それは面白いかも~」


 ニコラが乗る。


「戦闘に関係する情報だけじゃなくて、簡単なプロフィールを見られるようにする」


「いや」


 グレタが止める。


「それ、本人が嫌がる情報まで載せるなよ?」


「あ」


 ニコラが止まる。


「確かに」


「だから、本人が公開していいって言ったものだけだな」


 クライブが言う。


「人間データなんだから、そこは慎重にした方がいい」


「そうしよう」


 ニコラが頷く。


「名前だけ表示して、あとは本人が選ぶとか」


「それならいいですね」


 エレノアが微笑む。


「自分で紹介文を決められるようにしても面白そうです」


「紹介文?」


「例えば『剣術なら任せろ』など、自分で一言書けるようにするとか」


「それいい!」


 マドカが食いつく。


「じゃあ私、『世界最強の美少女』って書く!」


「却下」


 リゼットが即答した。


「なんで!?」


「自称じゃない」


「いいじゃん!」


「駄目よ」


 ガブリエルが笑い出す。


「お姉様らしいですわ!」


「ほら、ガブちゃんも賛成してる!」


「私は面白いので賛成ですわ!」


「ほら!」


「そこは賛成するのね……」


 リゼットが苦笑する。


 ニコラも笑いながら紙に書き込んだ。


「自己紹介欄……これも候補ね~」


「おいおい」


 カトリーヌが少し困ったように言う。


「ニコラ、追加しすぎると本当に作業量が大変になりますよ?」


「大丈夫だよ~」


「その顔は大丈夫じゃない顔ですね」


「えへへ~」


「笑って誤魔化さないでください」


 そのやり取りを見て、セリナが笑う。


「なんだか楽しそうですね」


「だろ?」


 ゲンナイが嬉しそうに言う。


「これが会議ってもんだ」


「会議って、こんな感じなんですか?」


 ガレスが首を傾げる。


「俺はもっと偉い奴が一方的に決めるもんだと思ってた」


「エキドナは違うよ」


 マドカが笑う。


「嫌なら嫌って言えばいいし、面倒なら誰かに押しつけてもいい」


「それ、会議として大丈夫なのか?」


「たぶん」


「たぶんかよ」


 クライブが笑った。


「でも、実際その方が話は早いんじゃない?」


 セリナが言う。


「全員が本当は嫌なのに、誰も言わないまま決まるよりずっといいと思う」


「そうだな」


 ガレスも頷いた。


「俺も嫌なもんは嫌って言うぞ」


「俺も」


 クロードが短く答える。


「俺は面倒なのは嫌だ」


 ヴァルトも続ける。


「俺は食事が良ければ大体いい」


「私は訓練になるなら協力します」


 ミレイユが穏やかに言った。


「銀翼、なんか分かりやすいな」


 マドカが笑う。


「でも、そういうのでいいんだよ」


「じゃあ、まだ言ってない人も何かある?」


 ゲンナイが全員を見る。


「せっかくだ。思いついたことは全部出しちまえ」


「では」


 エレノアが少し考えてから口を開く。


「私は、戦闘前に相手の情報を確認する時間が欲しいです」


「さっきのプロフィール?」


「それもですが、勝利条件なども含めてです」


「なるほど」


 カトリーヌが頷く。


「それなら実装は難しくありません」


「じゃあ、それも」


 ニコラが書き込む。


「戦闘開始前に、相手の基本情報と今回のルールを確認できるようにする」


「それなら初心者にも分かりやすいな」


 ガレスが言う。


「俺は逆に、全部見せすぎない方がいいと思う」


 クロードが口を挟んだ。


「相手の能力を全部見てから戦うと、探る楽しさがなくなる」


「あー、それは分かる」


 マドカが頷く。


「じゃあ、見せる情報と隠す情報を分ける?」


「そうだね~」


 ニコラが考える。


「基本プロフィールは見せる。でも細かい能力や戦い方までは見せない」


「それならいい」


 クロードが頷いた。


「なるほど」


 エレノアも納得する。


「事前情報はあるけれど、実際に戦わなければ分からない部分も残す、と」


「それが一番ゲームっぽいんじゃない?」


 マドカが笑う。


「最初から全部答えが分かってたらつまんないし」


「よし」


 ゲンナイが紙を覗き込む。


「だいぶ出たな」


「まだ全部決めたわけじゃないけどね~」


 ニコラが言う。


「うん」


 マドカも頷く。


「今日はこれでいいんじゃない?」


「え?」


 ガブリエルが驚く。


「まだ何か思いついていませんの?」


「思いついても、全部入れたらニコラが死ぬよ」


「それは困りますわね」


「おい」


 ニコラが苦笑する。


「私を勝手に殺さないでよ~」


「あはは~」


 マドカが笑う。


「じゃあ、今日は出た案を整理して、できるところからアップデートしよう」


「うん」


 ニコラが紙をまとめる。


「今の試作品より、ちゃんと遊びやすくできそう」


「技術的に無理なものは?」


 ゲンナイが尋ねる。


「それは私たちで調べるよ~」


 ニコラが答える。


「今すぐ無理でも、次のアップデートで入れられるかもしれないし」


「なら、それでいい」


 ゲンナイは満足そうに頷いた。


「別に今日全部完成させる必要はねぇんだからな」


「そうそう」


 マドカが立ち上がる。


「会議なんだから、次に面白くするための話ができればいいんだよ」


「じゃあ、改良版に期待ですね」


 セリナが笑う。


「うん!」


 マドカも笑った。


「次に遊ぶときには、ちゃんと前より面白くなってるよ!」


 こうして。


 ヒロバト製作会議は、ひとまず一区切りついた。


 まだ細かな仕様は決まっていない。


 けれど、最初の試作品から何を変えればいいのか。


 どこをもっと面白くできるのか。


 その方向だけは、少しずつ見えてきていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。